第122話 卒業式
この日、国立第一ダンジョン都市大学付属白桜女子学園の卒業証書授与式が行われた。
白いセーラーワンピースの制服、普段は無い白桜の生花が飾られている。およそ六十名の卒業生たち。その人数は入学時よりも減っている。ある者は退学をし、ある者はダンジョンから帰還出来ずに帰らぬ人となった。
来ている保護者の数も少ない、理由は様々だが両親ともに亡くなっている場合が大半となる。そのような中、卒業式は粛々と進めあられる。
開式の辞から始まり、続いて卒業証書授与が行われる。普通ならその前に国歌斉唱や校歌合唱があるのだが、この時代ではそれらは無くなっている。
一人ひとり卒業所々を受け取り、それが終わると校長式辞が話される。お決まりの卒業おめでとうから始まり、今後の活躍に期待をといった感じになる。在校生送辞、卒業生答辞とつつがなく進み卒業式は終わりを告げた。
こうして卒業式は終わったが、卒業生たちのお祝いはこれからになる。
「卒業おめでとうございます」
「「「おめでとうございます」」」
卒業式を終えて、そのまま帰るものがいる中、リンネたちはクラン室に来ていた。
「あーあ、みなさんが卒業しちゃうと一気に人数が減ってしまうね」
今このクランハウスにはナルミ、ヒビキ、キラリの三人しか残らないことになる。結局リンネたちはこれ以上人数を増やさなかった。
リンネたちはナルミ達に新しいクランメンバーを入れてもいいと言っていたのだが、ナルミたちのお眼鏡に叶う者がいなかったようだ。普通なら人数の少ない状態で今後の試験を受けることになるのだが、クランとして卒業したリンネたちの手を借りることが出来る。そのため、追加メンバーは必要ないと言う事になったようだ。
「ナルミたちが卒業してクランに来るのを待っているよ」
アカリの言葉に、リンネたちも頷く。
「さてと、俺たちはこれから帰って、学園主催の卒業パーティにでないといけない。その前にサキナさんから預かっている物を渡す」
「えっ、それって」
「あの普通は在校生の僕たちが何か渡したほうがいい気がするんだけど」
「もう花束を貰っているから十分だよ」
レイネがそばに置いてる花束を指し示す。
「どう考えてもそちらのほうが高価ですよね」
「わたくしたちは、サキナさんから渡すようにとお預かりしただけですわ。ですので、これに関してはお気になさる必要はありませんわ」
「まずはナルミには、このグローブだね」
リンネが収納から取り出したグローブを渡す。それはまるで竜のようなフォルムをした物々しいグローブだった。
「なんだかそれにはギミックがたくさんついているようでね。サキナさんのおすすめはパイルバンカーらしい。どうやって出すのかは聞いていないけど、ナルミにならわかるとは言っていたかな」
「パイルバンカーですか。あー今すぐダンジョンに行って使いたい」
残念ながら卒業式の今日はダンジョンが開放されていない。
「次はヒビキのハルバートだね。これになる」
「素晴らしい! このなんとも言えないフォルム。芸術的な装飾。このようなものを頂いても良いのだろうか?」
「まあ、気にいたのならそれでいいけど。ちなみにギミックは何があるのか聞いていないから、直接サキナさんに聞いたほうが良いかもね」
実のところ何やら物騒な機能が付いているという話だったが、そんなもの聞きたくないという全員一致の意見で聞いていないのだった。
「そしてキラリには、と言いたいところだけど木製の武器はサキナさんは作れないってことでね」
ガクリと肩を落とすキラリ。
「でも近い内に、それもどうにかしてみせるとは言っていたね。どうするかはわからないけど」
キラリの肩にポンと手を置き、新武装を貰えなかった者同士慰め合う、アズサとライチとキラリの姿がそこにはあった。
「まあそういうことだから、ナルミ、ヒビキ、キラリ頑張ってね」
別れを済ませリンネたちは家に帰宅する。それぞれがドレスに着替えて迎えに来る予定のリオンを待つ。
リンネのドレスは純白のまるでウェディングドレスのような装いになっている。ただ実際のウェディングドレスのようなスカートではなく、それ相応の長さとボリュームに抑え込まれている。
これはリンネが選んだものではなく「俺にはドレスのことはわからないから任せる:といった結果、リオンたちが悪乗りした結果だったりする。
「なあ、本当にこれで行くのか? 流石に場違いな気がするんだが」
「大丈夫似合ってるよ、本当に」
「うんうん、本当に似合っていて可愛いよ」
「似合いすぎて、逆に怖いですわね」
若干一名は引いているが、似合っているのは共通認識なようだ。
「ふむ、リンネ君。君は今日三人のうち誰と結婚式をあげるつもりだい?」
やって来たリオンにそう言われて、何も答えられないリンネだった。