第121話 夢
ここ最近、姫咲リンネは夢を見ることが増えてきた。見る夢は毎回似たような場所だが、微妙に違うという不思議なものだった。毎回登場する人物は、リンネ本人と祭音リオンの二人だけ。
リンネとリオン以外は、毎回出てくる人物が違う。レイネの時もあれば、アカリの時もあり、ミレイのときもある。それ以外にも、スズネであったり、カリンであったり、サラであったり、そして出会ったことのない女性であったりと、様々だ。
特にワルキューレの三人が出てきた時は、いつもの妖精サイズではなくい。着ていた服装も様々だが、体のサイズがリンネと変わらない姿で出てくる。
そしてリンネ自身の姿も、女性の姿であったり男性時代の姿を成長させた姿であったりと不思議な夢となっている。
夢の中のリンネは今の姿よりも五年ほど年を取っているように見える。会話の内容はわからない。ただ培養カプセルのようなものを見ながらリオンと会話をしているといったものだ。
その培養カプセルに中には膝を抱え丸まった姿勢の、リンネにそっくりな少女が浮かんでいる。そしてその少女が目を開き、そのガラス玉のような瞳とリンネの視線が合うと、いつもそこで目が覚めてしまう。
そしてリンネは目を覚ましたあとでも、その光景を覚えている。夢というものは大抵起きて暫くすると忘れるものだが、リンネは忘れることがなかった。そのために、上の空になることが増えレイネたちに心配される事となる。
「リン、何か悩み事?」
「あー、うん」
リンネの生返事を聞いて、レイネたちは心配そうにリンネを見ている。そんなリンネは機会的に手を動かし器用にご飯を食べている。
「ここ最近こんな感じですわね」
「そうだね。卒業式に備えてダンジョンに潜らなくなったから気が抜けたのかな?」
「そんな感じでも無いと思うけど」
リンネは上の空のまま、まっさきに食事を終える。
「よし、わからない事がわかった。こうなったらリオンさんに聞きにいくか」
食器を片付けたリンネは、すべての夢に出てきたリオンが鍵を握っている用に思えた。
「まって、私も行くよ」
「ボクも行くよ」
「わたくしも行きますわ」
レイネたちは急いで残っていたご飯を食べ、出かけようとしているリンネを追いかける。
「ん? レイネたちも来るのか?」
「行くよー。というか何を悩んでいるのか教えてほしいかな」
「そうですわ。一人で悩まないでほしいですわ」
「うんうん」
リンネは一瞬話すかどうか迷う。夢に出てくるレイネたちの事を言うのはいいが、それ以外にも出会ったことのない女性達が何者なのかわからないのもある。
「それじゃあ、向かいながら話す」
リンネは覚醒者協会へ向かって歩きながら、夢の内容を話し初めた。
◆
「ふむ、夢か。そこに毎回私がいるということだな」
「まあ、そうですね。俺もいるにいるけど、女のままだったり男になっていたり。後はカプセルの中にいる俺そっくりの女の子だな。そんな感じでよくわからない夢だよ」
「そして記憶にない人物も登場するというわけか」
「まあ、うん」
リンネはバツが悪そうな表情を浮かべる。レイネたちに夢の内容を話した時に、本当に知らない人物なのかと散々聞かれることになった。ちなみに今は三人とも別室で待機している。
「ふむ……、そろそろということか」
リオンのそのつぶやきはリンネの耳には届かなかった。
「何かいいました?」
「なんでもないよ。とりあえず調べておくからなにか別れば連絡させてもらうよ」
「そうですか。よろしくお願いします」
リンネは立ち上がり部屋から出ていこうとする。そのリンネにリオンは声をかける。
「もうすぐ卒業式だな」
「ですね。長いようで短い高校生活でした。それに卒業式は少し楽しみでもあります。俺って中学の卒業式に出ませんでしたからね」
「そう言うことなら楽しむといい」
「そうします」
リンネが部屋を出ていき遠ざかっていくのを確認してからリオンは目を閉じる。
「さて、準備を始めるとするか」
そう言って立ち上がったリオンのそばには、リンネに似た少女が浮いていた。





