第120話 ミノ太郎の実力
「みんな新しい武器を作ってもらえていいなー」
「羨ましい、です」
ダンジョンへ潜るために原初ダンジョンへ集まったリンネたちとライチとアズサだった。そこでライチとアズサが見たのは、新しい武器を携えたリンネたちの姿だった。
「私も作れたら作りたいのだけど、流石に木製の弓や札は無理かな」
サキナが済まなそうにそう言うと、ライチが慌てて冗談だと答える。
「うちの札は時前だし、アズサの弓も専属の職人が作ってくれているから。ただこうして新しい武器を見てしまうと、うちらも新調したいと思っただけだよ」
改めてサキナはライチとアズサの全身を眺める。眺めたうえでサキナには作れそうなものはないなと改めて思った。
「それはそうとして、それも一緒に行くの?」
「まあ、そうだね」
それとは言わずとしれたヤツのことだ。片腕にサイコガンは持ていないが紛れもなくやつだ。そう変態ミノタウロスのミノ太郎のことだ。
テイマーの職が開放されたために、今では魔物を引き連れた人がそこかしこで見受けられるようになった。そのテイムされた魔物なのだが、流石に街なかを闊歩する姿は見かけない。では移動がどうなっているのかと言うと、小型の魔物は車や小型ペット用のケージで運ばれている。
そして中型や、ミノ太郎のような大型は護送車のようなもので移動させられる事になる。そういった車両を用意するのは大変なために、大型の魔物は不人気だったりする。中には移動手段を確保出来ずに泣く泣くリリースされる事例もあるようだ。
一方のサキナはミノ太郎のために専用車両を用意している。運転免許に関しては既に所持していた。なぜ免許を持っているのかと言うと、完成した依頼品を運ぶのに使うためだ。
さてくだんのミノ太郎だが、その見た目は特に一新されたということはない。あえて言うなら武器が強化されたくらいだろうか? つまりは相変わらずのボンテージ姿ということだ。そんな姿のミノタウロスが立っているだけで注目の的である。
「とりあえずダンジョンに入ろうか」
「それが良さそうだね」
周りの目を気にしつつリンネたちはダンジョンへ入っていく。今回はタイムアタックではなく、普通に潜る予定である。目的としてはミノ太郎の性能チェックだ。
「サキナさん的にミノ太郎ってどれくらいの強さだと思います?」
「んー、普通のミノタウロスよりは強いと思う。それに武器を強化したから、五十階のボスまでなら単独で行けるんじゃないかな?」
「へー思ったより強いんだねミノ太郎って」
アカリが興味津々にミノ太郎を見ている。ミノ太郎はどうだと言うばかりに腕を組んで立っている。
「まあとりあえず行こうか」
「「「はーい」」」
相変わらずゆるい面々である。
◆
結局その日は五十階層のボス部屋まで行き帰ってきた。途中で適度にショートカットを利用しながら進んだ。途中でミノ太郎が元々いた四十階層のボスはどうなっているのか気になったリンネたちは途中からタイムアタックをして四十階層のボス部屋へと入った。
そこに待っていたのはミノタウロスではなく、馬頭と呼ばれる魔物だった。馬頭は頭が馬になった、ミノタウロスの馬バージョンと言える見た目をしている。ただしミノ太郎とは違い、普通の姿格好の馬頭だった。そもそも普通の姿の馬頭というものがどういったものかリンネ達には判断できなかった。
その馬頭はミノ太郎が自ら前に出て一人で倒してみせた。つまりは強さ的にはミノ太郎のほうが強かった事になるのだろう。
ただミノ太郎が無傷で倒すことができたかというとそうでもなかった。体のところどころが馬頭の武器である槍で穿たれ、穴が空いている。そのことから勝てたのは武器の違いだったのかもしれない。
「やっぱりミノ太郎にも防具が必要なのかな?」
「どうだろうね。体格的にはフルアーマーとかでも良さそうだけど嫌がりそうだよね」
ミレイに回復をしてもらっているミノ太郎を見て、やはり相応の防具が必要なのではないかと思い至った。どちらにしろ、ミノ太郎の防具を買うとしても特注になるだろうし、本人が嫌がるかもしれない。結局は防具に関してはサキナに一任するということになった。
後日、全身タイプのボンテージ姿をし、全頭マスクまで完備をした謎のミノタウロスのようなもが目撃された。一体どこのミノ太郎なのだろうか……。謎は深まるばかりである。





