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ユニーククラス戦乙女を獲得したのはいいのだが、その影響で美少女になったようだ  作者: 三毛猫みゃー


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第112話 普通のバレンタイン

「流石に今年はやらないんだな」

「うっ思い出させないでほしいな」


 本日は二月十四日、言わずと知れたバレンタインデーである。というわけで、リンネが何をやらないのかとレイネに訪ねたのかはお察し頂けただろう。


「あれはひどい事件だったね」

「本当にですわね」


 アカリとミレイは他人事のように言っているが、この二人も共犯とも言えるだろう。主犯の一人であるアカリは言うまでもないが、止めなかった上に梱包をそのままにしていたミレイも共犯と言えるだろう。そんな二人をジトーっとした目で見つめるレイネだが、アカリとミレイは視線を反らして目を合わせようとはしていない。


「まあ良いけどね、ということでこれね」


 レイネがリンネたちの前に市販のチョコレートを置いていく。いわゆる板チョコというものだ。


「レイネありがとう、それじゃあ俺からはこれな」


 リンネもそれぞれに包装紙に綺麗に包まれた箱を渡していく。こちらは市販ではなく全てリンネが自分で包装したものになる。どうしてこうなっているかは察してあげてほしい所である。


「ボクはこれね」


 アカリもそう言って皆に配っていくが、こちらは専門店の物となっていてそこそこのお値段のするもののようだ。


「わたくしからはこちらになりますわ」


 ミレイが取り出したのはチョコレートではなく箱に入った色違いのハンカチだった。


「みなさんがチョコレートを用意すると思いましたので、わたくしからはこちらにしましたわ」

「おぉー同じ柄の色違いだね、ミレイありがとう」


  お互いにお礼を言いながらプレゼントを交換する。


「それにしても……」

「私だって頑張ったんだよ」

「まあキッチンの惨状を見ればだいたい想像はつくけどさ」


 リンネの視線の先からは未だに何かが焦げた臭いが漂ってきている。


「うっ、片付けはちゃんとやるから」

「まあ気にするな、俺がちゃんと見ていれば良かったんだけどな。とりあえず片付けをしながら飲み物を用意してチョコレートを食べようか」

「そうだね、ボクも手伝いよ」

「それでは飲み物はわたくしが用意いたしますわ」



 片付けと掃除を済ませミレイの用意した紅茶と一緒にチョコレートを食べ始める。


「まずはアカリのを食べてみようか」


 アカリが用意したものは旧時代から続いている今では珍しいチョコレート専門店の物になっている。ダンジョン都市が作られた時にカカオ生産工場を作り今の時代まで生き残っている稀有な企業だ。


 毎年この時期には人気のためにめったに購入できないのだが、アカリは早朝から並ぶことで手に入れたようだ。三年生の最終学期ということで進路が決まっていて出席日数をクリアできていれば出席しなくても問題ないということで、平日なことも相まってバレンタインデー当日に手に入れることができたわけだ。アカリはちゃっかり自分の分も確保しており自分の分を食べている。


「流石においしいね。甘すぎずそれでいて濃厚な上に後味がスッキリしている」

「その感想を聞きますとチョコレートっぽく聞こえませんわね。ですが確かにそんな感じですわね」


 レイネの正直な感想にミレイも頷きながら応える。パッケージの中身は一口サイズの丸いチョコレートが六個入っているタイプのものだ。


「おいしいんだけど、美味しんだけどこれ一粒が約千円って考えると」

「えっそんなお値段だったの? 私のなんて一枚百円ちょっとだよ」


 どうやらレイネの用意した板チョコは一枚で百円だったようだ。今食べている専門店の物に比べると安いと言っていいだろう。ただここにいる四人は根っからの貧乏性といえば良いのか高い嗜好品を普段から食べるかと言うとそうではないので、板チョコの値段を聞いてもそれが普通だよねという感想しか浮かばなかった。


 いくら高くて美味しいものでも食べてしまえば一緒といったところだろう。それぞれが六つ入りの物を二つ食べたところで紅茶で口の中をスッキリさせる。


「残りはまた明日にしようかな。一気に食べるのはもったいないし値段を聞いたらなんかね」

「ボクもそうしようかな。美味しいけど何ていうか」

「なんとなくわかりますわ」


 同じパッケージのためにどれが誰のかわからなくならないようにペンで箱に名前を書いて冷蔵庫で冷やすことにしたようだ。


「まあお高いチョコは良いとして、リンの手作りはちゃんと食べておきたいね」

「いつもお思うけどリンの作るものってどれも美味しいよね」

「そうか? アカリやミレイの作ったものも美味しいと思うけど」

「わたくしはまだまだですわ」


 そっとレイネは何も気がついていないというふうに視線をそらしている。キッチンの惨状でわかるようにこの中で唯一料理ができない子だったりする。幼少期から食事はリンネが担当していたためとも言える。ただし包丁使いはなぜかうまいので、だいたいは野菜などを刻む係になることが多い。問題は味音痴でもないはずなのに味付け作業が絶望的に出来ないことだろう。


「わーハート型なんだね」


 さっさと包装を解き箱を開けたレイネの棒読みなセリフで皆の視線がレイネの手元のチョコに向けられる。そこにはハート型に作られたチョコレートが入っていた。


「流石に市販のチョコを使っただけだから味はアカリが買ってきた物とは違うけどな」

「ん、おいしいよ、私はこっちのほうが好きかな」

「ほんとだ、ボクもリンのチョコのほうが好みかな」

「確かに専門店の物も美味しいですけど、こういったシンプルな者のほうが好みですわ」


 専門店のチョコよりも好きといわれて照れるリンネであった。

 なおレイネの板チョコを食べた面々の感想は「普通」というものだった。

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