第104話 特殊階層の条件
原初ダンジョン前にリンネたちは集まっている。いつもの装備に身を包み今からダンジョンへ潜ろうとしていた。五十階層以降にはまだ潜る許可が取れていないリンネたちは四十五階層から五十階層を何度も回っており最近はマンネリ化している。
「そこで私は考えたんだよ、一階層から回ってみないって」
「まあ言いたいことは分かるけど今更一階層からっていうのもな」
レイネが一階層から回ってはどうかという意見はわからなくはない。ただ一階層から回ることに意味はあるのかというところだろうか。
「ふっふっふ、そう思うでしょ? でもね少し聞いてよ」
「レイネには何か目的があるってこと?」
「まあねー」
アカリの疑問にそう答えるレイネは不敵な笑みを浮かべている。
「皆も特殊階層って知っているよね」
「あれだろ、ボス部屋の後に普段とは違う場所に出て、その通路を進むとボス部屋にたどり着き、特殊なボスがでてくるというものですわね」
「うん、そうれだよそれ。私ね色々と聞いて回ったんだよ、それに特殊ボスと戦って勝利したっていうルビィさんにも話を聞いたんだよね」
「それで何がわかったんだ?」
「その前に皆は特殊階層にたどり着く条件って知ってる? 憶測でも良いのだけど」
レイネにそう聞かれ改めて考える面々。
「その良いから方するとランダムってわけではないんだよな」
「そうだね」
「何某かの条件でたどり着けるってことだよな、それなら何かそこにたどり着くためのアイテムがあるとか?」
リンネのその答えに違うよと応えるレイネ。他にも色々と意見が出たがどれも違うとの反応をしている。
「それで結局何なんだ?」
「皆の考えももしかしたらそっちが正解かもしれないけどね、ただ私が聞いてたどり着いたのはタイムアタックって事になったんだよ」
「タイムアタック? つまりはボスを早く倒すってことか」
「うん、だから今日はそれの検証も兼ねて一階層から行ってみようと思ったんだよ」
「そういう事か、まあ五十階層の周回も最近は手応えがないから良いかもな。それに特殊なボスが出るならスズネたちの出番もあるかもしれない」
リンネの言葉に反応してスズネとカリンにリィンが任せてほしいと気合を入れている。ただリィンの特性は回復の方に適正があるので今のリンネたちにはなかなかお世話になることはないようだ。
「タイムアタックはいいけど、それはボス戦だけなのかな? それとも道中も大将なのかな?」
「それも検証しようと思っているよ。だから今回は道中はゆっくり目に進んでボスだけ全力で行けばいいと思ってる」
「それで特殊階層に行けなければ、今度は道中も全力でってわけだね」
「うん、そう考えているよ。それで皆どうかな?」
それぞれが視線を交わし頷く。
「まあそういうことなら検証も兼ねてやってみようか」
「そうだね」
「いいと思いますわ」
反対意見は無いようで今回の探索は検証も兼ねての一階層から向かうことになった。
「それじゃあ低階層とはいえ油断はしないように、五階層のボス部屋までは急がずに行ってボスは速攻と言うことで」
リンネがそうまとめるとそれぞれから返事を受ける。
「それじゃあ行こうか」
「「「おー」」」
相変わらずのゆるさである。そしてリンネを先頭にゲートを潜り原初ダンジョンの一階層へと入っていく。その後は順調に進んでいく、途中で何度か戦闘をするものの今更苦戦することはない。一階層のゴブリン二階層のコボルト三階層のウルフ四階層のオークなども難なく倒していく。急ぐわけでもなくのんびりと進み五階層のボス部屋へ続くゲート前にたどり着いた。
「さてここまで来たわけだけど、またあれがいると思う?」
「どうだろう、まあいたとしても今回は速攻で倒すのが目的だから手加減は無用だね」
「そもそも手加減した事ってないよな」
「だってキモいんだもん」
レイネの物言いに少し酷いと思わなくもないリンネだが、よくよく考えると確かにキモいとしか思えなかった。何がキモいのかというと前回ここ五階層のボスが変態ミノタウロスだった。普通は同一個体がボスとして出ることはない、そもそも別のダンジョンにいたはずのミノタウロスが現れること自体が不可解でもある。
ただそのミノタウロスの存在を考えるに原初ダンジョン以外のダンジョンは、やはり原初ダンジョンと何らかの繋がりがあるということだろうとリンネたちは考えている。そのため原初ダンジョンを進めば他のダンジョンで行方不明となったリンネたちの両親の手がかりなども手にはいるのでは無いかと思っている。
「まあ入って速攻で倒せばあのミノタウロスか気にする必要もないんじゃないかな?」
「そうですわね」
ミレイもトゲトゲメイスを手に持ちやる気は十分のようだ。ただ一名サキナだけはムチを手に持ちなんとも言えない表情を浮かべているが、皆あえて見ないふりをしている。
「まあ、タイムアタックと言うことで全力で、遠距離組も好きにしていいけど味方には注意するように」
「「「はーい」」」
皆のゆるい返事を聞きながらリンネを先頭にボス部屋へ続くゲートをくぐった。