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宇宙人、来たる

作者: 雉白書屋

 ある日、空に黒い点が現れた。

 そしてそれは人々の不安を煽るようにゆっくりと大きく……。

 あれはなんなんだ。いったいどうして。その答えは自然とわかる。地上に近づくにつれ、その姿が鮮明に。あれは……宇宙船だ。


 宇宙船だ……じゃねーよ。クソが。はぁ、もう何度目だよ。もーいーもーいー! 飽きた飽きた飽きた!


 ……と、いったように当の宇宙人はどこかやさぐれた様子。彼は


 大使だ大使。この星と交流しようってんでまず調査に来たんだ。ああ、でも実はその正体は島流しに遭った宇宙人かもな! それか詐欺師かセールスマン! なんにせよ、地上に降りてワラワラと集まってきた現地住民にこう言うんだ。『どうも、みなさんこんにちワ』はい、それで皆さん、ホッと一息。とりあえず良かった。翻訳装置でも使っているのだろう言葉が通じるぞ。当然だ。通じないなら何しに来た。帰れすぐ帰れ。

 それで話し合いを始め、最後に良い感じのオチ、と。はいはいはい、そういうお話あるよね。でもこれは小説とかじゃない。オチなんてない。普通にサヨナラ。で、連中の気質などを母星に報告し、本格的に交流するか否か向こうの議会で決まるわけ。

 で、オレはまた他の星へ行ってその星の現地住民に同じようなことをくっちゃべるんだ。ああ、もう何度、オレは繰り返したんだ。嫌になる。他の宇宙人と比べても、やたら長寿な種族なもんだから引退には程遠い。船には食料生成装置があるから補給に帰ることもない。そもそも、オレたちはそんなに食わないんだ。現地住民どもはそれを聞くと『それはまた大変素晴らしいですねぇ』と褒めてくるが冗談じゃない。これはもはや刑罰だよ。船も頑丈。自動修理機能まである。

 何か必要な物があれば船から指示が出る。そう、コンピューターの言いなりさ。母星の連中にもう星に帰りたい、休みが欲しいって言っても奴らの答えは決まっている『なんで? まだその職に就いたばかりだろう』

 そうさ、星から出ないあの連中とはまた時間の感覚が違うのだろう。おまけにオレたちは肉体的な疲れをほとんど感じないのだ。それを知るとまた現地住民は連中は『いやぁすごいですなぁ』と嫉妬心でも抱いてやがるのか顔をひくつかせてそう言うんだ。

 もう見飽きたよ。どれもこれもはーあ。やめてえなぁ……あーあ……あーあっと今のはあくびだ。あーあ…………。


 と、宇宙人は瞼を閉じた。一眠りしようと考えたのだ。地上の連中をちょっと焦らしてやれ、とほくそ笑みつつ、心地よさそうに寝息を立て、そして……。



 ……と、ちょいとのんびりしすぎちまったかな。『到着してます。船からお降りください』ね。コンピューターさん。はいはい、仕事しますよっと。まあ、なんやかんや言ってもチヤホヤされるのは悪い気がしないからな。お、出迎えだ。


「あ、どうもどうも、えっと、遠い所からはるばるよくお越しくださいました。あの、ええ、空から降りて来られる日を今か今かと待ち望んでいましたよ。さ、お車があります。どうぞ。歓迎の準備はできてますので、さささ」

 

 ん? なんかいつもと感じが違うな。人もそんなに集まってないし、それになんだこいつらのこの小慣れた感じは……。それに今、皮肉まで入れやがったか? この野郎が。クソ星のクソ住民とでも報告してやろうか。


「いやー、それにしても、いやはや、あなたがこの星、初の宇宙人その人となると思いきや、こんなことがあるとはねぇ。あ、しかし、あなたこそが始まりの人だという声もあるんですよ」


 ん? なると思いきや? おいおいそれって……。


「ああ、あなたの宇宙船が空に現れ、ゆーっくり地上に近づいている間に他の惑星の方が見えてね。ははは、我々も初の事ですから色々とほら、相手の機嫌を損ねないようにとか、ふっ掛けられないようにとか、そっちに気が行ってもう大変でしたよ。でも、やはりみんな、まあ一着と言うんですかね。歴史に残りますし、それを狙ってええ続々とお見えになられてね。先を越されたか、と悔しがっていましたよ。まあ、あなたほどではないかもしれませんがね、なんてはははははは!」


 ……なんてこった。ウダウダ考えてないで、さっさと降りて仕事を片付けときゃよかったんだ!


「ちぃーーーくぅーーーしょぉーーーおぉーーー」


「ああ、噂に聞いた通り、のんびり屋さんの宇宙人のようで……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後の一行のせいか奇妙に落語っぽい感じを受けました。
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