第9章 秀才、でもバカ
譲葉第2の弱点です
しかし今回の話、95%が会話で構成されています。まぁこれはこれでありですよね?^^;
「わっ、これおいしい!何使ったの?」
「鹿の肉を塩で焼いただけだよ。猪の血も混ぜてみたけど」
「ちょ、翔輝さん!」
「何だよ、大したことじゃないだろ?」
「大したことです!それって言わばB型の人にA型の血を輸血するようなものですよ!?」
「・・・いや、輸血するにしても手遅れだろ、って言うか絶対違うし」
調理開始から15分後、三人は小屋の中の小さなテーブルを囲んで食事をしていた。
献立は鹿の肉のソテー猪の血添え|(?)、猪の肉と鹿の肉のサラダ、そして譲葉のみスペシャルドリンクとして謎の赤い液体が出された。何かを聞く前に外にぶちまけられたが。
この光景を見たら夜のレイはおそらく『あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!』と悲痛な声を上げることだろう。
「とにかく、調味料に血液を使うなんて非常識です!」
「お前が言うな」
「何でですか!?」
「自分の心に聞いてみろ」
「まぁまぁ、とにかく食べようよ。ね?」
「嫌です、猪の血なんて食べたくありません」
「何言ってんだ、血は食べるんじゃなくて飲むもんだろ?」
「とにかく私は食べません!これを食べるくらいなら自分で調理させてもらいます!」
「な、バカやめろ!死ぬぞ!」
「どういう意味ですか!?」
「お前の料理の腕は壊滅的だろうが!アレ食ったら絶対死ぬって!」
「失敬な!私の料理のどこが壊滅的だって言うんですか!?」
「砂糖と片栗粉を間違えて入れるのは壊滅的じゃないのか?」
「う゛っ・・・」
「譲葉、それは酷いんじゃない?僕もさすがにそんなことしないよ?」
「う、うるさいです!最終的に食べれればいいんです!」
「食べれないからこういう会話を繰り広げているんだが・・・」
「つべこべ言わないでください!大体翔輝さんは何ですか!?私が作ったもの一度も『おいしい』って言ってくれたことないじゃないですか!」
「だったら頼むからお世辞でも『おいしい』って言える物を作ってくれ」
「じゃあ教えてください」
「え、あ、習う気あるのか?お前のことだからてっきりやる気すらないのかと」
「翔輝さんと一緒にしないでください。翔輝さんに何か一つのことでも負けているのは私にとっては東京のど真ん中で全裸になることよりも屈辱なんです」
「じゃあ脱げばいいんじゃないか?」
「理屈が分かりません。それと死んでください」
「直球だな」
「こう言わなきゃ分からないでしょう?死んでください」
「二回言うな」
「第一、翔輝さんみたいな人に私の体は勿体無さ過ぎです。それこそ世界に1台しかないスポーツカーの中に3兆円を入れてツァーリ・ボンバで爆破して海に沈めるより勿体無いです」
「俺はお前の中でどこまでダメ人間だ?」
「作者の部屋に落ちている埃の2つ下くらいですかね」
「微妙に分かりやすいような分かりにくいような・・・」
「早い話最下位です」
「お前それは当然俺にもだが作者にも謝れ」
「必要ないです」
「それもそうか。じゃあせめて俺には謝れ」
「必要ないです」
「それもそうか。って待て待て待て」
「何ですか?三回言わなくても分かりますよ?」
「俺には謝れ」
「必要ないです」
「お前も三回言わなくても分かるぞ?」
「大丈夫です、最初の一回は翔輝さんにじゃありませんから」
「何がどう大丈夫なんだ?」
「・・・ねぇ、二人っていつもそんな感じなの?」
「まぁそうですね。こっちに来てからちょっと調子が落ちてますけど」
「それで落ちてるんだ・・・」
「おう、いつもはもっとすごいぞ?何度か本当に自殺してやろうか迷ったからな」
「それはそれは・・・。翔輝も大変だね~」
「もう慣れたよ。ほとんどは適当に流せるさ」
「え、そうなんですか?困りました、次の手を考えないと・・・」
「んなことせんでいいから」
「あはは、でも退屈はしないんじゃない?」
「しないな」
「だよね~。ご馳走様でした、おいしかったよ!ありがとう!」
「お粗末様。食器は後で洗っとくからいつも洗ってるところに置いといてくれ」
「え、そんなことまでお願いしちゃっていいの?」
「いいよ、どうせやることも無いし」
「ちょっと待ってください、私に料理を教えるんじゃなかったんですか?」
「あぁ、そういえばそうだったな。悪いレイ、やってくれるか?」
「もちろん。じゃあ二人とも食べ終わったらお皿外に持ってきて。僕は自分の先に洗ってるから」
「了解。ご馳走様」
「早っ!」
「持ってってくれるか?」
「いいよ」
「あ、じゃあ私のもお願いします」
「あれ、まだ終わってないよ?」
「だから食べないって言ったじゃないですか。自分で作ってそれを食べます」
「本気だったんだ・・・」
「当然です。私嘘は言ったことがないですから」
「今言ったぞ」
「黙りやがってください」
「命令?要求?」
「命令です。拒否権無しですから」
「言うと思った。さて、じゃあ特訓だ」
「翔輝さんにお願いするのは不本意ですが、仕方ありませんね。よろしくお願いします。魔闇さん、肉と血液のほかに何か材料無いんですか?」
「あるよ」
「あるのかよ!?先に言えよ!」
「ゴメンね、忘れてた。倉庫の奥にもう一個冷蔵庫があるから、その中に色々入ってるよ」
「分かりました、好きに使わせてもらいますね。さぁ翔輝さん」
「はいはい」
「一応言っておきますが翔輝さんは手を出さないでくださいね。あくまで私の特訓なので」
「俺に手伝えってつい何十行か前に言ってなかったか?」
「そういうネタは止めてください。刻みますよ?」
「そりゃ怖い。さ、とっととやって終わらせるぞ」
「本当に適当に流してるなぁ」と二人の様子に苦笑しながらレイは三人分の食器を持って食器洗い場へ移動する。
食器洗い場といっても木製のたらいに近くの井戸の水を入れただけの簡単なものである。ちょうど昔の洗濯と同じような感じだ。
レイがしばらく鼻歌交じりに食器を洗っていると、なにやら焦げ臭い匂いが漂ってきた。
小屋のほうに振り返ると、なにやらキッチンにつながっている煙突から黒煙が立ち上がっている。
「うわわわわっ!」
次の瞬間、翔輝が慌てて小屋から飛び出してきた。爆発の後のように若干煤まみれになっている。
「な、何!?どうしたの!?」
「譲葉の奴、『まずはゆで卵でも作りましょう』とか言って電子レンジに金属製のボウルに水入れて生卵放り込んで稼動しやがった」
「うわぁ、電子レンジ殺し三連コンボだね・・・」
「レンジに卵と金属がダメなのは常識だろ・・・」
「でもそんなので煙なんて出たっけ?」
「あいつ『へ~。電子レンジでゆで卵作るとポップコーンみたいになるんですね♪』とか言ってしばらく放置してやがった。したら卵とか全部焦げてあけたら煙がモクモクと・・・」
「譲葉って頭いいんじゃなかったっけ?」
「勉強はな。料理とか普通の常識はあんまりない」
「あぁ・・・。それで譲葉は?」
「・・・あ」
「え、何、まさかまだあの中にいるの!?」
「可能性は否定できない、って言うか十中八九そうだ」
「何でそんな冷静なの!?」
「いや、あいつなら大丈夫だろ、って思って。お、ホラ」
そう言って翔輝が指差す方向には制服を真っ黒にした譲葉が半泣きの状態で立っていた。ついさっきまでいなかったので、恐らく時間を止めて一気に脱出したのだろう。
「譲葉、どうしたの!?何ですぐ逃げないの!?」
「いえ、壮絶だと思って見ていたら翔輝さんもいなくて、『アレ?』って思ったら息苦しくなって危険を感じ時を止めて脱出しました」
「・・・バカなの?」
「し、失礼ですね!バカじゃありません、ちょっと料理に関して無知なだけです!」
「煙を危険じゃなくて壮絶なゆで卵だと思い込むのはバカなんじゃないか?」
「翔輝さんは黙っててください!」
「理不尽だ・・・。それよりレイ」
「ん、なに?」
「小屋、燃えてるぞ」
「・・・あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」
小屋のほうを振り返ると、煙は激しさを増してうっすらと赤い炎のようなものも見える。俗に言う火事だ。
「みみみ水!急いで鎮火して!」
「耳ミミズ?そんな気持ち悪いもので鎮火できるか」
「今はそんな冗談言ってる場合じゃないでしょ!早くしてよ~!」
「大丈夫だ。譲葉、行け」
「何で私が行かなきゃならないんですか?」
「お前のせいだろ、これ」
「・・・了解しました」
1秒後、譲葉の活躍により小火は無事鎮火された。
「・・・なんでそんなに落ち着いてられるのよ?」
「だって譲葉がいるし」
「・・・二人とも、夜罰ゲームね」
「それは私達のせいなので仕方ありませんが、何で夜なんですか?」
「それ以前にこれ俺のせいか?」
「昼の僕より夜の僕のほうがSだから」
「・・・期待しておきます」
この罰ゲームを受け入れたことを、夜に譲葉は後悔することになる・・・。
というわけで、結局特訓なんてしてませんね・・・
それはそうと、明日はハロウィンです。って言うか日本ではもう既にハロウィンでしたね。アメリカは明日なので、お菓子をもらってきます^^
実はハロウィン話を日本に合わせるかアメリカに合わせるか迷ったのですが、展開が急に飛ぶのもアレだし実際にやらないと実感ないんで勝手ながらアメリカ時間に合わさせていただきます
ハロウィンと言えば、ホラーにオカルト。オカルトといえば・・・もうお分かりですね?山田義武でした(古畑任○朗風)