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第52話 拍子抜け

お待たせしました、約一週間ぶりの更新です;

こんなに間を空けたのに前回の続きみたいになってるんで、前回をザッと読み返したほうがいいかもしれません

それではどうぞ~

「げほっ、げほっ・・・!あ~もう最悪・・・」


初っ端から見苦しい姿・・・は晒してないし。じゃあ聞き苦しい声・・・は聞こえるワケ無いし。

ん~・・・あ、読み苦しい文章をお送りしてしまい申し訳ありません、エミーです。「読み苦しい」なんて言葉があるかどうかは知らないけど、意味は何となく察してね。「見苦しい」「聞き苦しい」と同じ様な意味だから。

さて、言うまでも無く現在あたしは風邪をひいています。原因は譲葉。あ、別に譲葉を悪く言ってるわけじゃなくて、単に伝染元は譲葉、って意味で・・・とにかく譲葉を悪く言ってるわけじゃないから。

まぁと言うわけで現在家で寝てるんですが、予想以上に暇で驚いた。あたしって基本的に風邪ひかないから、この「学校に行かなくていいんだ!ラッキー、とことん遊んでやるわ!」って言う気持ちと「だるくて何もする気にならない・・・」って言うのが入り混じった何とも言えないもどかしさ・・・。あ~イライラする!

な~んてことをベッドでゴロゴロしている間ずっと考えていたので正直言ってかなり機嫌が悪いです。皆さん、なるべく近づかないように気をつけてください、募ってるイライラ全部ぶつけますから。

と、まぁそんな感じにかなり八つ当たりモードに入っていると。


『ピンポ~ン』


「ん?お母さん帰ってきたのかな?」


言い忘れていましたが、私の両親は共働きなので基本的に家にはいません。いつも5時くらいまでには帰ってきてるけど、現在時刻は正午ちょっと過ぎ。あたしを心配して帰ってきてくれたのだろうか?


「は~い、今出ます~・・・。う゛、クラクラする・・・」


ん~、本格的にちょっとやばいかもね・・・。早いとこお母さん入れて看病してもらおっと・・・。

・・・あれ?でもお母さんなら普通に入ってくるんじゃ?

何てことも考えたけど、それ以上に辛かったからとりあえずドアを開ける。するとそこには、


「お、何だ動けるのか?てっきり死体みたいになってると思ったんだが」

「・・・あれ、翔輝?」


何とそこには何故か翔輝が立っているではありませんか。・・・ん、なんか喋り方もおかしいわねあたし・・・。

とまぁそれは置いといて・・・。


「何であんたがいるわけ?」

「いや、暇だったから様子見に」

「暇・・・って学校は?」

「それ聞く意味あるのか?」

「・・・」


こいつの事だからどうせサボりだろう。確かに聞く必要なかったわね。


「で、何しに来たの?」

「だから様子見に」

「それはもう聞いたわよ。様子見って何を?」

「ん~、まぁそれは何も考えてなかったんだけどな。って言うかぶっちゃけ時間潰せるとこ探しに来ただけだし」

「・・・はぁ、もう頭痛い・・・」

「当たり前だろ、病人なんだから」


病気のせいじゃないわよ、とでも言いたかったけどもうそれを言う気力も無かったのでとりあえず踵を返して自室に向かう。


「どこ行くんだ?」

「部屋・・・やっぱまだ寝てるわ。時間潰すならここ使ってていいから、ゆっくりしてって。ただしうるさくはしないでね・・・」


あたしはそれだけを簡潔に翔輝に告げ、玄関を去り自分の部屋のベッドにダイビング。ん~、いつもは爽快なのに今日ばっかりはやっぱりだるくてしょうがないわ・・・。

ベッドの上でゴロゴロしてる事約3分。部屋のドアがノックされた。


「ぅん~・・・?」

「ん、起きてるのか?」


あたしが普段なら絶対に出さないような気の抜けた返事をすると、ドアの向こう側から翔輝の声が聞こえた。


「何よ、あたし寝るって言ったでしょ・・・?」

「いや、キッチン使っていいかなって思って」

「キッチン?・・・うん、好きにしていいわよ~」

「サンキュ。ゆっくり寝ろよ?」

「ぅん~・・・」


またもや気の抜けた返事を返すと翔輝が遠ざかる気配がした。あたしはその後ちゃんとベッドにも振り込んで、しばらくすると心地よい眠気が・・・。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「・・・ぅん・・・」


額に心地よい冷たい物が当たるのを感じて、あたしは心地よい眠りの世界から呼び戻されました。

うっすらと目を開けてみる。ぼんやりとしていた視界がゆっくりと晴れていき、次第に目に映る人影の顔が鮮明に見えてくる。そこには・・・


「・・・翔輝」

「あ、悪い、起こしたか?」


まぁわざわざ言う事もないと思うけど、そこには当然のように翔輝の姿が。


「・・・何してるの?」

「何してるように見える?」


そういわれたのであたしは目だけを動かして翔輝の周りに置いてあるものを見る。水の入った洗面器、耳に入れるタイプの体温計、風邪薬・・・。


「・・・看病しててくれたの?」

「・・・ん、そこまで分かるなら大丈夫だな。食欲は?」

「すこしなら・・・」

「卵粥食えるか?」

「・・・うん。・・・あのさ、」

「じゃあ持ってくるから」

「・・・ぁ」


あたしが理由を聞こうとしたその瞬間、翔輝は椅子から立ち上がって部屋を出て行ってしまった。

急に訪れた静寂に、あたしはさらに混乱する。何で翔輝があたしの看病してるの?このおでこにある冷たいのは・・・?あ、普通のタオルだ。

で、何で?何で翔輝があたしの看病してるの?あれ、これ二回目よね?・・・で、何で翔輝が以下略。

何て感じに自問自答を繰り返す事約1分。小さなお茶碗とスプーンを持った翔輝が再び部屋に入ってきた。


「ほい。ここに置いとくから自分のペースで食え」

「う、うん。あの・・・」

「ん?」

「何であんたがあたしの看病してるの?」

「や、普通に心配だったから」

「し、心配ぃ!?あんたが、あたしのを!?」

「何だよ、悪いか?」

「気持ち悪い。なんか食欲なくなってきた。って言うかよく考えたらあんたの作った物なんか食べる気しない」

「やかましい、じゃあ食うな。で、気分は?」

「さっきよりは大分楽」

「そうか。他に何かして欲しい事あるか?」

「ううん、特に」

「分かった。なんかあったら呼べよ、リビングにいるから」


翔輝はそれだけ言ってまた部屋を出て行ってしまった。

・・・どうしよう、あんな事言っちゃったけど正直かなりお腹空いてるし・・・。

それに心配されたのだって少し嬉しかったし・・・。

・・・いいや、食べちゃお。言い訳は後で考えるからいっか。


と言うわけでご馳走さま。うん、意外とおいしかったわ。

翔輝のことだから胡椒かなんか大量に入れてるのかなとか思ったけど、拍子抜けにも普通だった。

拍子抜けって言うと期待してたみたいに聞こえちゃうけど、そういうわけじゃないからね?

でもまぁと言う事は本気で心配してくれてるのかな?それは素直にありがたいかな?

それから数分してノックの音。音の主は言うまでも無く翔輝。


「何だ、結局食ったのか。俺の作ったものなんか食う気しないんじゃなかったのか?」


しまった、言い訳考えてない!えぇと、えぇと・・・!


「しょ、しょうがないでしょ!?お腹空いてたんだし・・・」

「食欲なくなったとか言ってなかったか?」

「き、気が変わったのよ!」

「気で腹って減るものか?」

「減るものなの!」

「ん、まぁ食欲ある事はいいことだしな。お代わりいるか?」


もっと色々言われるかと思ったけど拍子抜けにもすぐに話題を変えてしまった。

今度のはホントに拍子抜けした。期待してたとかじゃなくて、予想外で。


「・・・ねぇ、何で今日そんなに優しいわけ?」

「俺はいつだって優しいだろ?」

「本気で言ってる?」

「ご想像にお任せします」

「・・・で、何で?」

「いや、友達が大変な思いしてんなら助けるだろ、普通」

「・・・よくもまぁそんな恥ずかしい事を堂々と言えるわね・・・」

「恥ずかしいのは分かってるけどさ、他に言い方も無いだろ?まぁ天助なら絶対に看病なんかしなけどな」


・・・テンスケって誰よ?


「めんどくさいけど俺だってそれくらいはするさ。『女は大切にしろ』って叩き込まれたしな」

「誰に?」

「アホ親父」

「・・・あんた、仮にも自分の親に『アホ』って・・・」

「そのせいで昔からいいことないんだよ。全部あいつのせいだ」


その言葉でふと思い出した。

『・・・翔輝さん、あっちの世界では学校の同級生とお付き合いしてましたから』

ちょっと気になるし、聞いてみようかな。


「ねぇ翔輝」

「ん?」

「あんた元の世界で誰かと付き合ってたんだって?」


そう聞いた瞬間、翔輝の雰囲気が変わった。なんていうか・・・さっきまで「ほわほわぁ」ってしてた空気が凍りついたみたいに・・・。


「・・・どこで聞いた?」


そういう翔輝の声は、今まで聞いた事がないくらいに冷たい響きがあった。

その段階で、あたしは聞いてはいけないことを聞いてしまったことに気付いたけど、もう後には引き返せない。


「ゆ、譲葉から」

「・・・あいつ、余計なこと言いやがって・・・」


翔輝はため息混じりにそう言うと、そのまま黙り込んでしまった。長い沈黙は破られる事なく、時間だけが過ぎていく。

どれだけ時間が経っただろう?10秒?30秒?1分?5分?時間の感覚が麻痺するほどに長い沈黙。それに耐え切れず、あたしは硬く閉ざされていた唇を開いた。


「あ、あのさ・・・。もし話したくなかったらいいから。へ、変な事聞いてゴメンね」

「・・・本当だよ」

「・・・え?」

「本当だよ、昔な」

「そ、そうなんだ・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・話して・・・くれないの?」

「・・・悪い、まだ、な」

「翔輝・・・?」

「俺の中でもまだ整理できてないからさ。いつか、ちゃんと話すから」

「・・・うん」


正直に言えば、すごく気になる。いつものしょうもないやり取りなら構わず問い詰めていたと思う。

だけど、このことだけは、絶対に問い詰めてはいけない気がした。

翔輝が自分の口で、自分の意思で聞かせてくれるまで、このことに関わってはいけない。絶対に・・・。


「で、お代わりいるか?」

「・・・は?」

「いやだから、お代わり」

「・・・」

「・・・どうした?」


なんか・・・本日三度目の拍子抜け。

あんだけ重たい雰囲気作っといて、その直後に出てきた言葉が「お代わりいるか?」って・・・。

雰囲気も何もあったもんじゃないわね、ホントにもう・・・。


「・・・ううん、もういいわ。ありがと」

「そうか?じゃあ残ったの俺もらうからな」

「うん。じゃああたしもう少し寝るから」

「そうか」


翔輝は部屋を出る前にもう一度タオルを冷たく濡らしてくれた。それをした後で食器を片付け、小声で「お大事に~」と囁いて部屋を出て行った。

あ、そういえばそろそろバレンタインよね。・・・バレンタインまでに良くなったらチョコでもあげようかな?・・・義理だけどね、義理。

~翌日~


「エミー!大丈夫?生きてた?」

「この通りすっかり元気よ」

「良くなってよかったですね」

「うん。あ、そうだ翔輝」

「ん?」

「そ、その・・・ありがとね」

「気にすんな、サボる理由も正当だったし」


・・・いや、正当ではないと思う。っていうかそんな不純な動機であたしの看病してたわけ?


「でもこのパターンで行くと、次に風邪をひくのは・・・」


譲葉のその言葉に、あたし、ウル、譲葉の三人は翔輝の方をじっと見る。数秒後―――


『ないない』

「おい」




最近若干シリアス気味な感じが続いてしまっているので、次回はとことんコメディーにする予定です。

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