第4章 魔物ってどんなの?
自分で予想したよりかなり早く投稿することができました。
多分これからも週一位に更新できると思うので、それくらいの感覚でよろしくお願いします。
「にしても、何でもうこんなに暗いんだ?」
「私達が来たのがもう夕方だったんじゃないんですか?」
「ま、何でもいいけどな。ところで譲葉、魔物ってどんな感じだと思う?」
「やっぱりこう、丸くて、水っぽくて、青っぽくて、ぷよぷよしてる生物じゃないですか?」
「ドラ○エじゃねーよ。魔物ってやっぱ昔の神話とかに出てくるミノタウロスとか日本とかの八岐大蛇とかじゃないか?」
「そんな人間が化けたような生物いるわけ無いじゃないですか」
「スラ○ムだっていねーよ」
「ついでに言っておくと吸血鬼とか狼人間なども存在しません」
「お前ついさっきテリア見たじゃねーか」
「あれは狼人間じゃなくて犬人間です」
「わかんねーぞ、案外狼人間だったりするかも知れないぜ?」
「ありえません」
「・・・いや、まぁどうでもいいけどさ」
そんなバカバカしい会話をしながら二人は道を進んでいる。
翔輝と譲葉はテリアに教えてもらったように正門から町の外に出たのだが、意外と町が広く迷ってしまい、結構時間をくってしまったのだ。
時間をくったと言ってもたった十数分のはずなのだが、そこから1キロほど歩いた時点でもう既に当たりは暗くなり始めていた。
少し整備はされているものの、ほとんど樹海のような道をさらに2キロほど進んだところに、二人はようやく小さな小屋を発見した。
「・・・ここ、か?魔物がいるって小屋は」
「ですね、絶対」
「何を根拠に?」
「本気で言ってるんですか?」
「まさか」
本気でそんなことを言ったらただのバカである。なぜなら、その小屋の表にある看板には「魔物注意」と書いてある。
「人間界で言う『猛犬注意』みたいな物ですかね?」
「さあ?でもま、ここにいるのは確かだろ。開けるぞ」
翔輝は扉に手をかけてゆっくりと開ける。
「お邪魔しま~す」
「翔輝さん、ノックくらいしないとだめですよ」
「そうよ、失礼でしょ?もし今ドア開いたら私が着替えの真っ最中、とかだったらどうする気?」
中から誰かの声が聞こえた。しかし、辺りはもうすっかり暗くなっているのであまりしっかりとは確認できない。
「誰かいるのか?」
「誰もいないのに返事が返ってくると思う?」
「思う」
「何で?」
「幽霊とか」
「何言ってるんですか翔輝さん!?いません!幽霊なんていませんから!」
「お前はどう思う?」
「あたし?あたしは普通にいると思うけど」
「いません!絶対に!」
「・・・って言うかあんた達、私に用があって来たんじゃないの?」
「と、そうだった。とりあえず明かりつけてくんねーか?何も見えねぇ」
「人間の視力ってのも大したことないのね。ま、知ってたけど」
そう言ってその声の主は暗闇の中で何かをゴソゴソ動かし、急にマッチを擦って火をつけた。
「うわっ、ビックリした!」
「そういうことをする時は先に言ってからろ!」
「注文多いわね~。ほら、これでいいでしょ?」
声の主はマッチの火をロウソクに移し、さらにそのロウソクの火を別のロウソクに移す。
そうするうちに、小屋の中にあったらしい約10本のロウソク全てに火がつき、小屋の中がかなり明るくなった。
そして確認できたのが、二人と同じくらいの少女だった。瞳は深紅、身長は比較的高く、赤い髪をポニーテールにしている。
「で、あたしに何のよう?って、人間がここに来る理由なんて一つしかないわね」
「そういえばお前なんで俺達が人間だって分かるんだ?」
「そりゃ分かるわよ。あんた達どう見ても獣人じゃないし、細かいところを見てもエルフでも魔物でもない。だったら残るは人間しかないじゃない」
「残念だったな、実は化けた狸人間だ」
「帰る?何なら村まで送ってってあげるわよ?」
「ちっ」
「何バカやってるんですか・・・。失礼しました、あなたの言うとおり私達は人間です。つい1時間半程前に人間界からこの世界に迷い込んできてしまって・・・。この近くの村の村長さんのテリアさんからあなたに会えと言われたので来たんです。申し送れました、私は人間の冬夜譲葉、彼は同じく人間の夢幻翔輝さんです。それで、失礼ですがあなたは?」
呆れるくらい礼儀正しく挨拶をした譲葉は、改めて彼女を観察する。
先ほど言ったとおり目と髪が赤く、身長は若干高めだ。なんとなくだが、イメージカラーは赤。
やや釣り目気味で、瞼は半開き。体には首から床スレスレまである長いローブのようなものを羽織っている。
「そっちの子はこいつと違って随分と礼儀正しいわね~。あたしは魔闇 レイ。種族は魔物よ」
「ま、魔物!?お前がか?」
「何よ、なんか悪い?」
「いや、悪くないけどさ・・・。魔物って言うくらいだから丸くて、水っぽくて、青っぽくて、ぷよぷよしてるやつみたいなのかと思ったから」
「それってまんまスラ○ムじゃないの」
「よく知ってんな」
「前ここに来た人間がポケットにDS、だっけ?入れてきたからね」
「『前に』って、前にも人間が来たのか!?」
「来たわよ。あんたらも含めてあたしんとこには10人くらい来たかな?」
「な、何でそんなに!?」
「あんた達もここに来るとき神にあったでしょ?」
「え、あれ本当に神様なんですか?」
「そうよ、あんなんでも一応ね。で、『力を授けよう!』みたいなこと言われなかった?」
「言われたような言われなかったような・・・」
「言われました。『こっちについてからのお楽しみ』とも言われましたね」
「でしょ?で、あたしがその力を授ける役を頼まれたの?」
「・・・え、すいません、どういうことですか?全然意味が・・・」
「つまり、神が時々あたしんとこに来て人間が来るから力あげてって言うわけ。で、あたしがその力を渡すことになってるの」
「は、はぁ・・・」
「まぁ口で言ってもいまいち分かんないわよね。とりあえず見せてあげるわ、これがあなた達の『力』よ」
そう言って魔闇は両腕を前に差し出し、掌を上に向けて拳を開く。
それぞれの手の上には、こぶし大の一つの淡く光る球体が浮かんでいた。よく見ると二つはそれぞれ若干違い、中では何かが動き回っている。
一つは水色で数個の時計が球体の中をグルグル回っており、もう一つは紫色で極小の刀のようなものが何本も何本も渦巻いている。
「あの・・・なんですか、これ?」
「これがあんた達の『力』。これをあんた達の胸に押し付ければ、あんた達は晴れて『英雄』に一歩近づくわけ」
「つまりこれを体に入れれば何かの特殊能力みたいのが使えるってわけか?」
「簡単に言えばそういうことね。能力の説明先にしようか?」
「そうですね、お願いします」
「じゃあまず、え~、冬夜譲葉。あんたの能力は『時の停止』、正確には『時の延長』かしら。まあ簡単に言えば時間を止める能力ね」
「そ、そんなにすごいこと私に出来るんですか!?」
「出来るようになるわよ。この能力を選んだ理由はね、あんたの名前。冬夜、つまり冬の夜。世界で一番永い『冬の夜』を支配するあんたにはピッタリの能力だって神が言ってたわ」
「そ、そんな立派な名前じゃないですよ・・・」
「で、次は夢幻翔輝」
「ん」
「あんたの能力は『刀剣の増殖』。つまり刀なんかを増やせるのよ」
「・・・ぜ~んぜん分からん」
「あたしも分かんなかったから神に聞いたわ。例えば刀に触るでしょ?そしたら同じ刀がそこかしこに何十本も地面に突き刺さった状態で出てくるんだって」
「分かったような分からないような・・・」
「使いながら理解しなさい。で、能力の理由ね」
「神何だって?」
「『何にも思いつかなかったからテキトー♪』だって」
「神コノヤロー」
「何てこと言ってるんですか!?」
「さて、じゃ説明すんだから『これ』入れて。」
「どうやってですか?」
「手で持ってゆっくり自分の胸に押し付ければいいの」
「ってかそれ持てるのか?」
「あたしは持ってるじゃない」
「だって俺達人間だぜ?」
「つべこべ言わずとっととやりなさい!」
魔闇は額に青筋を浮かべて譲葉に時計の球体を、翔輝に刀の球体を渡した。
二人は淡く光る球体を受け取り、覚悟を決めて自分達の胸に押し付ける。すると球体はゆっくりと、しかしするりと体の中に入った。
「・・・これでいいのか?」
「ええ、それでその力はあんた達のものよ」
「何だか実感がわかないんですが・・・」
「最初はね。だから慣らさなきゃいけないの」
「どうやって?」
「あたしと戦って」
「は?」
「つまり、あたしがあんた達の練習相手になってあげるの。とにかく来なさい」
魔闇はそう言って小屋を出て、小屋の横に設置してある倉庫のようなところに二人を連れて行き、扉を開ける。
「うわっ!」
「な、何ですかここ!?」
倉庫の中には、尋常ではない数の凶器があった。刀、ナイフ、鉄砲、鎖鎌、等等だ。
「好きなの使っていいからあたしを殺してみなさい」
「何言ってんだ!?ほんとに死ぬぞ、こんなので斬ったり撃ったりしたら!」
「大丈夫、あたしは死ねないから」
「何ですか、『死ねない』って、『死なない』って言いたいんじゃないですか?」
「違うわよ、死ねないの。言ったでしょ?あたしは魔物。魔物の中の―――」
魔闇はそう言って振り向き、笑って見せた。
「―――ヴァンパイアなんだから」
そう言ってニヤリと妖艶に笑う彼女の口には、鋭くとがった刃物のような歯が見えた。
次回は初の戦闘シーンです。
書いたことが無いのでうまく書けるかわかりませんが、頑張ります。