第27章 やり場の無いこの怒り
更新遅れてすみません、つい数時間前まで旅行に行ってまして・・・
その分今回は少し長めなのでご勘弁を・・・^^;
譲葉とウルの二人が悲鳴を上げた日の午後。
怒りで我を忘れそうになっていた二人をなだめつつ、蜘蛛の模型を粉々にして霊を全て森へ帰した。そういえばその時いたエルフの霊とは友達になったぞ。・・・あれ?やべ、名前忘れた。・・・まぁいっか。
で、上記をやってるうちに結構時間が経ってしまったので昼食にし、食器類を洗って俺が小屋の中に戻ったらもうそんな時間だった、という感じだ。
ちなみにこの間会話は一切無し。いや~、今までで一番気まずい午前中だった。ミラの奴、クレームつけてやる。まぁ結論を言うと・・・暇だ。
「・・・さて、それじゃあやる事も全て済んだことですし」
何時間も続いた沈黙を破り、譲葉が口を開き・・・。
「ウルさんを血祭りに上げてもよろしいでしょうか?」
「ちょっ・・・!」
ナイフを握りウルに笑顔を向けて物騒この上ない言葉を言い放った。
「ちょっと待ってよ!」
「なんでしょう?あまり待てませんよ、かなり我慢の限界に近いので」
「僕を殺そうとしないでよ!イタズラを仕掛けたのはミラであって僕じゃないよ!?」
「知りませんよそんなこと。結局は同じ体を使ってるので同一人物です。つまり、ウルさんを血祭りに上げるというのはミラさんを血祭りに上げるのと同意義です」
「いやいやいや、確かにそうかもしれないけど!せめて夜まで待ってくれない!?そしたらミラに変わって不死身になるから!」
「先ほど言いましたよ?『かなり我慢の限界に近い』って♪」
「と、とりあえずまずはその笑顔で話すのやめようよ!?怖すぎるんだけど!」
「何言ってるんですか、笑顔が怖いなんてあるわけないじゃないですか」
「怖いんだって!譲葉の今の笑顔は多分閻魔大王も震え上がるって!」
「詩人ですねぇ」
「そうか?普通の例えだと思うが」
って言うか閻魔大王って仏教じゃねぇの?この世界に仏教あるのか?いや、閻魔大王が仏教かどうかも知らねぇけど。
「と、とにかく待ってって!って言うか僕も被害者だし!」
「じゃあ私のこのやりようのない怒りはどうするんですか!?」
「僕だってどうしようもない怒りで一杯だよ!自分に復讐できるわけないでしょ!?」
「今はそれはどうでもいいんです!私はとりあえずこのイライラを何とかして発散したいんです!」
「それは僕だって同じだって!」
「だぁから今はそんなことどうでもいいんですってば!」
「それは酷くない!?」
「酷くありません!」
「酷いよ!」
「ひ・ど・く・な・い!」
「酷いって!」
「酷くないって言ってるでしょ!?」
「譲葉、敬語敬語」
「!し、失礼しました!取り乱しました・・・」
「な、何か譲葉が敬語使わないのって新鮮だね」
「こいつが敬語忘れるのは死ぬほど怖がった時と本気の口論の時だけな」
「こ、怖がったときは敬語忘れませんよ!」
「まぁその辺はハロウィンの時の譲葉の様子をミラに聞けば分かるだろ」
「ミラさんの名前を今は出さないでください!」「ミラの名前は今は出さないで!」
「・・・御意」
こいつら二人ともミラの名前に敏感になりすぎ。って言うかこんな時にハモらんでもよろしい。
「しかし、本格的にどうしましょうかこの怒り」
「我慢すれば?」
「出来ると思います?」
「ぜってー無理」
「分かってらっしゃいますね」
「僕は何とか抑えてるけどこのままじゃ譲葉が僕に八つ当たりするから何とかして欲しい」
「ちょ、失礼ですね!私がいつ八つ当たりなんてしましたか!?」
「この回が始まって約五行で」
「翔輝さん、そういう発言はNGです」
「じゃあそういう発言につながるような質問をするな。素直に八つ当たりを認めてりゃ良かったんだよ」
「・・・なんとなく理不尽じゃありません?」
「全然?超筋が通ってるだろ」
「何か釈然としないんですよね・・・」
「疑心暗鬼か?」
「いやぜんぜん違います」
「・・・二人ともさっきからどんな会話してるの?」
「こんな会話」
「うんそれは知ってる」
「じゃあ聞くな」
「だからそうじゃなくてぇ!」
・・・うん、やっぱ暇な時はこいつらで遊ぶに限るな。
「・・・今物凄い失礼なこと考えなかった?」
「精神科行くか?」
「それは酷くない?」
「そうだな」
「・・・そこは否定しようよ?」
「何だ、嘘ついてほしいのか?」
「いや、それは嫌だけど・・・」
「翔輝さん、私達で遊ばないでください」
「バレた?」
「バレバレです」
「え~!?翔輝遊んでたの!?」
「結構」
「酷いよ~!」
「お前今日酷いしか言ってないな」
「だって皆酷いんだもん!」
「あ~暇だな~」
「スルー!?」
「じゃあトランプでもして遊びます?」
「え、あるの?」
「翔輝さんならポケットの中に入ってるんじゃないですか?」
「よく分かったな」
「伊達に今まで幼馴染やってきたわけじゃないですからね」
「その割にはいつまでたっても敬語は抜けないのな」
「これが私なりの礼儀なんです」
「あっそ、どうでもいいけど」
「なら聞かないでくださいよ・・・」
そんな呟きを華麗に聞き流し制服のポケットからトランプを取り出す。
ちなみに俺達はこっちに着てからずっと制服姿ですごしている。もちろん洗濯はしているが、基本的にはずっと制服だ。
俺達の高校の制服はかなりオーソドックス。男子は白いシャツに紺の長ズボン、そして赤いネクタイ。シャツの胸ポケットには高校のシンボルの刺繍(?)が施されている。
女子は水色が基準のセーラー服。特に特徴もない退屈な制服だ。強いて言うなれば左の裾に男子用の制服の胸ポケットにあるものと同じ刺繍があると言うことか。
それから皆さんお察しの通りこれらは夏服で、冬服は男子も女子も紺色のブレザーに決まっている。ちなみに女子は基本的には首はリボン、下はスカートと決められているが、俺達の高校はそれらをズボンとネクタイに変えるのを許可している。まぁ譲葉は規定通りスカートにリボンをしているのでどうでもいいのだが。
「僕はやるよ!」
「私も参加させてもらいます」
「そんなら当然俺も」
「何やりますか?」
「テキサスホールデム」
「って何でしたっけ?」
「ポーカーだよ。アメリカのカジノではこっちの方が主流だな」
「・・・なんで翔輝がそんなこと知ってるの?」
「従兄がラスベガスのカジノのディーラーだから」
「え、そうなんですか!?」
「らすべがす?」
「えぇ。別名遊びの街と呼ばれ、ポーカー、スロット、ルーレットなど様々なゲームを楽しめるカジノが多数存在し、おそらく世界一ギャンブルが盛んな町です。そこのディーラーと言う事はかなりの実力者ですね」
「ディーラーに実力も何もあるの?」
「ありますよ。カジノだって最終的には勝たなきゃ運営側に儲けがないんですから、それなりにお客さんの手札を操作できないといけませんからね。でもイカサマがばれたら訴えられる可能性もあるので絶対にばれないようにイカサマしないといけないのでかなりのプレッシャーがかかります。しかもラスベガスなんてギャンブルの聖地でディーラーをやってるんですから、かなりすごいことです」
「・・・とにかく翔輝の従兄がすごいトランプ上手だって事は分かった」
「要約するとそうなりますね」
「説明終わったか?それじゃ始めるぞ」
相変わらず譲葉の説明は長いな、途中一瞬眠くなっちまった・・・。
「それでテキサスホールデムのルール説明してもらえませんか?」
「めんどくさい」
「じゃあ遊べないんですけど・・・」
「・・・しゃあねぇな~、テキサスホールデムってのは、
各プレイヤーに2枚のカードが裏向きで配られて、ゲーム開始となる。この2枚のカードを「ホールカード」あるいは「ポケットカード」と呼ぶ。ゲームにおいてこの2枚だけが、プレイヤーが個別に渡されるカードであり、これはショーダウンまで見せる必要のないカードである。
各プレイヤーにカードを配り終えたら、ベットラウンドが開始する。このラウンドは「プリフロップ(フロップが開く前)」と呼ばれる。賭けはビッグブラインドの左隣から、時計回りに行う。ただし、ブラインドがない場合は、ディーラーボタンの左隣から行う。
プリフロップでの賭けが終わった段階で、2名以上プレイヤーが残っている場合はディーラーは3枚のカードを開く。フロップは、表向きに3枚のカードをテーブルに出す。これは全てのプレイヤーに共通のカードである。この先の賭けは、全てカードが配られた時点で、ディーラー・ボタンの左隣のプレイヤーから時計回りに行われる。
フロップのベットラウンドが終わると、ディーラーは更に1枚の共通カードを開く。このカードをターン(またはフォース・ストリート)と呼ぶ。
同様に、ターンにおけるベットラウンドが終了すると、ディーラーは最後の1枚となる共通カードを開く。このカードをリバー(またはフィフス・ストリート)と呼ぶ。
リバーにおける賭けが終了した時点で、残っているプレイヤーが2名以上いる場合、勝者を決めるためにショーダウンを行う。
各カードが出される際に、カードに印が付けられている可能性などを考慮して、見えている一番上のカードは配る前に伏せたまま場に放棄して利用しない。これをバーン・カードと呼ぶ。
って感じのゲームだな。あ、ちなみに今の説明全部Wikipe○iaからコピペしただけだからな。作者が」
「・・・暇な方だけ読んでください。あ、あと翔輝さんそういう発言は控えてくださいって何度言えば分かるんですか?」
「ぼ、僕はこれ聞いても(読んでも?)全然わかんない・・・」
「大事なのは慣れだ、慣れ。さて、始めるぞ」
と言う前途多難な状況で始まったゲームであったが、何度かやるうちに譲葉もウルもルールや役を覚え、ちゃんとしたゲームが出来るようになってきた。
あ、一応言っとくけど俺達何にも賭けないでやってるからな、普通のチップも。そんなもんが都合よくあるわけ無いし、第一レイズとか何とかめんどくさくてやってられるか。
ついでに言っとくとチップとか無いならこのゲームやんねぇほうがいいぞ。バカみたいにつまらん。俺達がやってるのはほら、他にやること無いし。
と、二人ともそろそろ慣れたみたいだし、じゃあそろそろいいか。
「翔輝さん、どうします?」
「どうするもなにも無いだろ?」
そりゃ何もかけてないんだから当たり前だろ。
今テーブルの上に出てるカードは4枚。ハートの10、スペードの9、クラブ(クローバー)の10、そしてハートのJ。10のワンペアがあるだけだ。
俺は山札の一番上にあるカードをめくり、その4枚の横に置く。カードはジョーカーだった。・・・よし、予定通り。
「ジョーカーってなんだっけ?」
「何でも使えるんだよ」
「便利だね~。・・・あ、やた!」
反応からしてかなりいい役が揃ったみたいだが・・・無駄だな。
「よ~し、それじゃオープン」
俺の掛け声(?)で俺を含めた三人が2枚の手札を見せる。
譲葉:ハートの9とハートのA、つまりフラッシュだ。
ウル:スペードのQにクラブの2、なのでストレート。ちなみにこの時点で譲葉に負けているので、ウルは「そんにゃあああぁぁぁ!!!」とか言って悶えている。
翔輝(俺):スペードの10とダイヤの10。ジョーカーを入れて10のファイブ・オブ・ア・カインド(ファイブカードのアメリカでの呼び方)
「はい俺勝利~」
「ま、まさか最強の役が出るとは思いませんでした」
「うぅ、僕ビリだよ~・・・」
ん、まぁ俺がディーラーの時点で俺の勝ちは決定してんだけどな。
その後も引き続きゲームをを続けたが、結果は俺の全勝。譲葉とウルもそれなりにいい役が作れていたが、紙一重で俺が勝利し続けた。
「翔輝、ずるしてるでしょ?」
「ん?してるけど」
「あっさり肯定!?」
「だからお前は俺に嘘ついてほしいのか?」
「翔輝さん、ずるはダメですよ・・・。従兄の方に習ったんですか?」
「そ」
「ずるいですよ」
「従兄の口癖教えてやるよ。『ばれなきゃイカサマじゃないんだよ』」
「それは違うでしょう?」
「そうかもな。だけど俺の中では真実だからそれでよし」
「翔輝汚いよ~!正々堂々勝負しようよ~!」
「何で確実に勝てる方法があるのにわざわざ勝てないかもしれない方法取るんだよ?んなことするわけ無いだろ」
「む~!翔輝のバカ!」
「はいはい、そうですね」
「翔輝さん、何かを賭けてる訳じゃないんですからいいじゃないですか。このままだとせっかく遊んでるのにつまらなくなりますよ?」
「・・・まぁそれもそうか。悪かったな、遊びすぎた。これで終わりにするよ。ほら譲葉、お前ディーラー頼む」
「素直で大変よろしいです」
その後拗ねたウルを何とかもう一度ゲームをするように促し、数時間トランプを続けた結果、イカサマ無しでも俺がほとんど勝ってしまった。
事実を事実として受け止めることが出来る譲葉は良かった。ただ純粋(単純バカ?)なウルは半分発狂していたがイカサマしていないのだから文句も言えず、結局最初に抱えていたイライラを倍増させるだけに終わった。
いや~、めでたしめでたし(?)。
「譲葉、私が寝たらあとはよろしくね」
「はい、お任せください。ミラさんが起きたら血祭りに上げます♪」
「やるなら小屋の外でやれよ、汚れるから」
「・・・翔輝もう完全に主婦だね」
「『主婦』じゃない、『主夫』だ。・・・いや、違うけど」
「だって掃除洗濯料理、この三つが出来て主夫じゃないって・・・」
「じゃあ俺もうそれやめるわ」
「ちょ、それは困るよ!掃除洗濯はともかく、譲葉が料理できるわけ無いって!」
「しまった、そうだったな・・・」
「・・・お二人方から先に血祭りに上げましょうか♪」
「え゛っ・・・!?ちょ、お前、やめええぇぇぇ!!!」
「あ、や、譲葉、やめて、おねが、あ、いやあああぁぁぁ!!!!」
・・・どうなったかはご想像にお任せします。