第20章 帰る?
ついに20話到達です!これも読者の皆様のおかげです!ありがとうございます、これからもどうぞよろしくお願いします!
「いつまでここに居るの?」
翔輝と譲葉が小屋に来てから早1ヶ月。何の前振りもなくミラが聞いた。
「・・・は?」
「いやだから、いつまでここに居るのかって聞いてるの」
「何ですか急に」
そう聞くとミラは一度ため息をついて順を追って説明を始める。
「まずあんた達は何でここに来たの?」
「・・・なんでだっけ?」
「試練をクリアするための特訓です」
「そうでしょ?なのに何であんた達まだここにいるの?」
「いや、だって特訓中だろ?」
「二人とももうあたしと対等に戦えるじゃない。これ以上特訓はいらないでしょ?」
「・・・え、そうなの?」
「ミラさんそんなこと言いましたっけ?」
「・・・あれ、言わなかった?言ったでしょ?」
「言ってない」
「言ってません」
「そうだったかしら?」
「そうだった」
「そうでした」
「・・・ホントに「ホントにそうでした」あぁそう・・・。」
二人に言ってなかったことを指摘され、何度も確認するうちに自分でも自身がなくなり最終的に声はほぼ聞こえないほど小さくなっていた。
「それにしても、そういえばそうだったな・・・」
「何がですか?」
「いや、試練あったんだなって」
「それを忘れちゃダメでしょう・・・」
「って言うかさ---」
翔輝はそう言うと少し言葉を切った。譲葉とミラも翔輝が何を言うのか聞き逃さないように耳を傾ける。
ほんの5秒ほどの沈黙のあと、翔輝が言った。
「ぶっちゃけこのままこの世界にいればいいんじゃね?」
「・・・はい?」
「いやだから、別に元の世界に戻る必要ないんじゃねぇの?」
「何を言い出すんですか突然!?それはつまりこの世界で一生暮らしていようってことですか!?」
「まぁそうなるな」
「いやいやいや、帰りましょうよ!私は嫌ですよ、この世界で一生暮らすのは!と言うか何で急にそんなこと!?」
「いやだって特に帰る必要ないじゃん。この世界で一応1ヶ月暮らしてるけど特に何も不自由して無いし」
「心配する人がいるでしょう!親とかクラスメイトとか!」
「俺の親は放任主義だから多分大丈夫。クラスメイトなんぞ知ったことか」
「何ですかそれ!?大体澪ちゃんはどうするんですか!?」
「・・・しまった、そいつがいたか」
「そうですよ!どうするんですか、翔輝さんが帰らなかったらあの子何するか分かりませんよ!?」
二人が話している澪と言うのは譲葉の一つ下の従妹、冬夜澪のことだ。
容姿は譲葉と同じく黒い瞳に黒い髪。髪型は肩に触れるか触れないかくらいの長さのツインテール。
性格は譲葉とはほぼ正反対と言っても過言ではない。
人懐っこくて、いつでも明るい。別に譲葉が暗いと言うわけではないのだが、やはり譲葉と比べるとかなり明るい。
そして多少、と言うかかなり頭が悪い。気を使わずに言うとバカ。
そんな数々の特徴よりも目立つのが、翔輝に惚れていると言う事実。会えるのは年に数回、学校の長期休暇の時だけなのだが、その時にはここぞとばかりに翔輝に甘えまくる。
たまに澪の親が長期休暇を使って旅行に行こうと言い出すと、家出をしてまで翔輝に会いに来たと言う武勇伝(?)もある。
そんな彼女の前からいきなり翔輝が姿を消したら・・・。
「彼女荒れますよ?」
「・・・アイツが荒れたら世界も滅ぼせそうだな」
「それは大げさです」
「どれだけ強いのよ、その子」
「翔輝さんの表現がオーバーなだけです。本当はすごく可愛らしい女の子ですよ」
「アレが可愛らしい・・・?あだっ!?」
翔輝がそう呟いたのを聞いて、譲葉はミラに笑顔を向けたまま翔輝の顔を引っ叩いた。
「いでででで・・・」
「そういうわけなので帰らないと言う選択は無しです。翔輝さんは澪ちゃんを悲しませたいんですか?」
「そんなわけあるか」
「だったら帰ります。異存はないですね?」
「ほ~い・・・」
「シャキッとしてください」
「いいんだよ、これが俺のペースなんだから」
「・・・全く、相変わらずしょうがないですね。やるときはやってくださいよ?」
「わぁってるよ、死ぬのはゴメンだしな。じゃ、俺そろそろ寝るわ」
「早っ、もう寝るの?」
「やることなくて暇だし」
「特訓でもする?」
「嫌だ」
「めんどくさがらない。やりたくないならそれなりの理由を言いなさい」
「さっきお前自分で『もう修行はいらない』とか何とかいったから」
「うぐ・・・痛いところをついてきたわね・・・」
「どうだ、グゥの音も出ないだろう」
「グゥ・・・」
「出すなよ」
「じゃあミラさん、私と特訓してくれませんか?」
「え~、私譲葉相手じゃ勝てる気しないんだけど・・・」
「俺だと勝てる気がするってか?」
「うん。って言うか勝てる気しかしない。だからこそやる」
「ドS?」
「人聞きの悪い事言わないの」
「他に何を言えと?」
「うるさいわね、ごちゃごちゃ言わない。じゃあ譲葉、行きましょうか」
「お手柔らかにお願いしますね」
「こちらこそ」
二人は微笑みながら外に向かう。とても今から殺し合い同然の特訓をしにいく人間たちとは思えない。あ、一人人間じゃなかった。
「・・・あれ、まだ試練始まってないんだっけ?こんなんで帰れるのか、俺達・・・?」
今回ちょっと短めですかね?せっかくの20話記念なのに・・・(自業自得)
新キャラ登場、と言っても名前だけですが。今後出るかどうかは・・・未定です(ダメじゃん)
って言うか20話で4話に来た小屋から出ないって・・・展開遅すぎですね^^;
さすがにそろそろ冒険を始めようと思います。では次回をお楽しみに