第2章 神様・・・ですよね?
実は3話目までは全部続けて書いたのですが、あまりにも長くなってしまったので3話に分けて投稿します。それでは、第2部どうぞ。
「・・・う、いっつつつ・・・。なんだったんだ、いったい?」
翔輝は目をゆっくりと開けたが、どこを見ているのか分からない。ただただ真っ白な空間が目の前には広がっている。
背中が何かに当たっている感覚はあるので、おそらく空を見上げたような状態なのだろう。
起き上がろうとするも、何かが乗っかっているようで動けない。
「ん?」
ゆっくりと頭を上げその何かを確認する。まあ言うまでも無く、翔輝の上には譲葉が寝転がっていた。
「譲葉、起きろ。重い」
その言葉にピクッと反応し、譲葉は起き上がると同時に翔輝の頭に手刀を喰らわせた。
「いって!何すんだ!?」
「女の子に向かって『重い』とは何ですか!?デリカシー無さ過ぎです!」
「この状況でそんなこと気にしてるお前にはデリカシーあるのか?」
「どんな状況でもそれは禁句なんです!」
「分かったよ、もう何でもいいからとりあえず別のことで騒いでくれ」
「他に何を騒げと?」
「今現在進行形で起こってる超常現象」
「へ?」
そう言って譲葉はようやく辺りを見回した。自分の周りをすべて見回したところで、また目に涙を浮かべた。
「何で!?」
「知るか!俺だって聞きたいわ!」
『お答えしましょうか?』
「きゃあああぁぁぁ!!!!」
「ぶっ!」
突如天から声が聞こえたかと思うと、翔輝は左頬に激痛を感じ吹っ飛んだ。
『うわっ、痛そ~・・・。大丈夫?その子』
「しょ、翔輝さん!寝てる場合じゃないです!天から!天から声がああぁぁ!」
「誰のせいだ!?何で俺を殴る!?」
「今はそんな細かいこと気にしてる場合ですか!?」
「理不尽だ!」
『え~っと・・・とりあえず話を聞いてくれない?』
「今それどころじゃないんです!黙っててください!」
『えええぇぇぇ・・・?あの、私一応神様なんだけど・・・』
「黙っててって・・・!ふぇ?」
『だから、私この世界の神様的な人なんだって』
「・・・ずいぶんと友好的な神様だな、おい」
『私には私のペースってもんがあるの。さて!改めて、ようこそ!私の世界へ!』
声の主は急にテンションを上げて二人に語りかけた。
「元の世界に返してくれ。第一ムーってなんだ」
『ちょっとぉ!今し方私「ようこそ」っていったのに!それも含めて自分達でやって!』
「いや、だって誰も好きできてないし。ってか何をやるんだよ?」
『でもここにいるって事は招待状開けたんでしょ?』
「・・・あ」
「翔輝さん!なんて事してくれるんですか!?」
「やかましい!」
『あ~はいはいストップ!キリが無いわ』
それにしても威厳のない神様である。
『え~、もうなんか長引くとまたケンカ始めちゃいそうだから手っ取り早く説明するけど、まず今すぐにあなた達が元の世界に戻る術はありません』
「ざけんなコノヤロー」
『いい加減私も怒るよ?しかし、戻れないことはありません。現に、つい最近あなた達の世界に戻った人がいるはずです』
「そういえばいたな、なんだっけ?」
「8年前に蒸発した男性がつい先日急に家に戻ってきたらしいです」
『そうそう、その人。つまり、戻る方法はあります。しかし、そのためには試練を乗り越えなければなりません』
「なんかどっかのRPG見たいな設定だな」
『しかしながら、あなた達は人間です。この世界にいるエルフ、獣人、さらには魔物のどれに比べても全てにおいて劣っています』
「なんか私たちバカにされてませんか?」
「されてる。でも、やっぱり俺の言ったとおり『神隠し』はあったろ?種族もおっさんが言ってたのと完全同じだし」
「・・・認めるしかなさそうですね」
『なので、私がお二人にふさわしい素晴らしい能力を授けましょう』
「自分で素晴らしいとか言うか?」
「第一そんなことが出来るなら私たちを帰してほしいですね」
『だぁからぁ!無理なものは無理なの!これは特別!君達名前は?』
「冬夜譲葉です」
「夢幻翔輝だ。ってか勝手にこの世界に引き込んだんだから名前くらい知っとけよ」
『分かった、冬夜譲葉ちゃんと夢幻翔輝君だね。覚えておくよ。さて、それじゃ後はスタート地点だね』
「スタート地点?もはや完全にゲームじゃん」
「って言うか素晴らしい力とやらはどこにいったんでしょう?」
『それはあとでのお楽しみ。じゃあ私はこれで。あとは自分達で決めてね』
「なっ!そんな勝手な!」
『じゃあね~♪』
「あっ、おい!・・・行っちまったか?」
『うんにゃ、まだいるよ』
「紛らわしいわ!消えるなら早く消えろ!」
『分かった分かった、じゃあ私は行くからあとは自分の好きなところから冒険を始めてね。じゃ』
「・・・今度こそ行ったか。しかし冒険って、やっぱどっかのRPGのパクリじゃねーか?」
「とにかくさっきの自称神様が行っていた入り口とやらを探しましょう」
譲葉がそう提案した直後、目の前にメッセージと共に3つのボタンが現れた。
「これが入り口か?え~、何々?」
『翔輝君、譲葉ちゃん、とりあえず説明するね。この3つのボタンは冒険を始める場所を選択するためのものだよ。左から順に最初の試練、最後の試練、ランダムだよ。一気に最後の試練に行くこともできるけど、覚悟したほうがいいよ?この世界で死んじゃったらやり直しは出来ないから。私のオススメとしてはやっぱり最初の試練から順にやってくのがいいと思うよ。なんか質問あったら呼んでね。』
「・・・神~」
『何?・・・はぁ、本当は名前あるのにな~。今教えちゃダメみたいだし・・・』
「ふざけてんのか?」
『失礼なこと言うね~。私は真剣だよ?』
「なんだよ、『この世界で死んじゃったらやり直しは出来ない』って。そんなの当たり前だろ」
『だって翔輝君も譲葉ちゃんもこれなんかのゲームと勘違いしてるじゃん』
「してません。誰だってこんな超常現象が身の回りに起こったら夢だと思います。私達はこの段階で現実だと認めてる点他の方々よりマシだと思いますけど」
『確かにここで冷静な人はいないからね~。で、どうする?最初からやれば多分死ぬことは無いだろうけど、長い時間掛かる。最後に行けばほぼ間違いなく死んじゃう。ランダムなんて問題外ね。』
「そりゃもちろん最初からだろ。死ぬのはイヤだ」
「私も同感です」
『オッケー、じゃあ一番左のボタン押してね』
「最後に一ついいか?」
『どぞ』
「最後の試練とやらにたどり着くまでにどれくらいかかるんだ?」
『人によるよ。前の人は8年だし、その前の人は2ヶ月。最速は10日だったかな?でも、もちろん一生たどり着けなかった人もいる。』
「・・・それが亡くなってしまった人たちですか?」
『そうだよ。・・・ゴメンね、私だってあなた達にこんな危険なことさせたくない。でも、仕方が無いの。分かってくれとは言わないけど、今は言うとおりにしてくれる?』
「・・・分かったよ、やりゃいいんだろ、やりゃ。その代わり、絶対に帰ってやる。試練とやらをクリアしたら帰してもらうからな」
『大丈夫、それは約束するから。じゃ、幸運を祈ります。行ってらっしゃい』
声はそれを境に聞こえなくなった。妙な沈黙が空間を支配する。
「・・・どうします?」
「どうするもこうするも無いさ。こうなっちまった以上、生きて帰る。それだけだ」
「・・・でも、もし何かあったら・・・」
「大丈夫だ、その時は俺が守ってやるって」
さっき元の世界でも言ったセリフ。しかし、今回は重みが全く違う。
今度のは本当に心の底からそう思って言っている。
だから、恥ずかしがる必要も無い。むしろ、誇ってもいいような事である。
ただ、今の翔輝は自分がその時思ったことをそのまま口にしただけで、そんなややこしいことまでは考えていなかった。
「・・・押すぞ」
「・・・はい」
二人はゆっくりボタンに近付き、ボタンを押す。
刹那、二人が立っていた場所にすっぽり穴が開いた。
「・・・ふぇ?きゃあああぁぁぁ!」
「もうちょっとマシな誘い方くらいあるだろおおぉぉ!」
断末魔(?)の叫びを上げ、二人は穴の中へと落ちていった―――。
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