第19章 二人の両親
ちょっと更新遅れちゃいました、すみません
何はともあれ、過去編の続きです。今回はサブタイトル通りの内容なのでそのつもりでどうぞ
前回の話から3年後。
【ピンポ~ン】
『は~い?』
『やほ、遊びに来たよ~!』
『いらっしゃい。今行くね』
場所は夢幻家、つまり翔輝の家。
今日は休日と言うことで冬夜家が遊びに来た。
『いらっしゃい』
『やほ、遊びに来たよ~!』
『それさっき聞いた』
『いいじゃないのよ~』
『近寄らないの、暑苦しい』
『相変わらず手厳しいね~』
『この程度で?』
『まさか、軽いコミュニケーションの形でしょ?』
『さすが、分かってるわね』
こんなおかしな会話をしているのは譲葉の母、譲と翔輝の母、紫である。
紫は黒い髪をポニーテールにしている上に目も若干釣りあがっているので、なんとなく気が強そうに見える。と言うか実際強い。
対して譲は茶色がかった短めの髪をヘアピンで留めている。活発そうに見えるその外見を裏切らないほどハイテンションかつマイペースな人物だ。
『よぉ、俺も来てやったぞ』
『あら、冬馬生きてたの?』
『どういう意味だ!?』
『そのまんまの意味だけど?』
『じゃあそのまんま答えよう。死んでたまるか!』
『やかましい。それ以上騒ぐと追い出すよ?』
『申し訳ありませんでした』
『分かればよろしい』
友達とはいえ、他人の夫にボロクソ言って満面の笑みを浮かべている紫。かなりの美人なのでその笑顔はかなりの男性を魅了しそうなほど美しいのだが、理由のせいかその笑顔は悪魔が微笑んでいるように見える。
ちなみに冬馬というのは譲葉の父の名前である。一言で言うと容姿はかなりかっこいい。オールバックにした白髪の見た目はハードボイルド小説に出てくるような渋い大人だ。
だが肝心の中身が↑あんな感じなので、やっぱりかっこいいのかかっこ悪いのかいまいち分からない人である。
『譲葉ちゃん、いらっしゃい』
『お、お邪魔します』
『どうぞ』
『あ、譲葉ちゃん』
『翔ちゃん、お邪魔します』
『うん、いらっしゃい』
翔輝も冬夜家の来訪を察知し、二階の部屋から素早く玄関まで降りてきた。
『おぉ冬馬、よく来たな』
『うぃっす、来たぞ翔平もとい女の奴隷』
『フェミニストと言え、フェミニストと』
自称フェミニストのこの男の名は夢幻翔平。彼が翔輝の父親である。第一印象は、冬馬と同じようにかっこいい大人だ。
普通に伸ばしている黒髪に細い眼鏡。なんとなくいかにもエリートって顔をしている。
ただし紫や譲、というか女性に頭が上がらないが、その代わり男性には容赦ない。
『あ、翔平さん。お邪魔します』
『いらっしゃい、今日もかわいいね』
『そ、そんなことないですよ!』
『そんなことあるって』
『・・・ロリコンかお前』
『そこ、フェミニストと呼べ』
『だからロリコンだろ?』
『黙れ』
『最終的にそんな強制終了?』
『は~い二人とも、そんなのどうでもいいからとっとと上がって』
『そんなのって・・・そんな言い方『やかましい』・・・はい』
『はっはっは、翔平もやはり紫には勝てんか!』
『あなたも少し黙っててくれるかしら?と言うか早く行きましょう、玄関で立ち話もアレだし』
『・・・はい』
女性陣最強。こんな環境で育ったから今の翔輝と譲葉の関係が成り立っているのかもしれない。というか絶対にそうだ。
その後、子供二人は二階の子供部屋で仲良く遊び、大人四人は下のダイニングで昼間から談笑しながら酒を飲んでいる。
ちなみに子供二人は延々ゲームをやっていて、大人たちは以下のような会話を繰り広げていた。
『ほ~ら翔ちゃん二世!あんたも飲みなさい!』
『いや、だから俺は飲めないんだって。っていうか二世は翔輝の方だろうが』
『何言ってるのよ、そんなの気合でいけるでしょ!ね、紫!』
『う~ん・・・ダメじゃない?翔平根性ないし』
『冬馬、酒!』
『およ、いいのか?』
『ドンと来い!』
『楽勝~♪』
『ん、紫何か言ったか?』
『んにゃ、何にも?』
『?そうか?』
『そうよ。さぁとりあえず気が変わらないうちに飲みなさい!』
『ガッテンでぃ!』
そんなことをやっているうちに時間はすっかり夜。
最初は勢いに身を任せて酒を飲みまくっていた翔平だったが、それなりの量を飲んだあとで自分の限界(身の危険)を感じて飲むのをやめた。さすがに今回は紫も譲も何も言わなかった。
夜と言ってもまだ外はまだそれなりに明るいのだが、時刻はもう既に6時過ぎと言うことと譲葉の両親がベロンベロンに酔っていてこれ以上は無理だと翔平が判断し、今日はこれでお開きとなった。
『ほんとょにごみぇんにぇ~』
『「とょ」ってどうやって発音するのかしら?』
『しゃぁ?』
『・・・譲葉ちゃんも大変ね、こんな両親で』
『そ、そんなことないですよ?』
『・・・笑顔が引きつってるわよ?』
『あたゃしのこどょもをいじみぇにゃいでぇ!』
『やかましい、酒臭いから顔近づけないで。あんた達、明日二日酔い覚悟しときなさいよ』
『ふぇええぇぇん・・・』
目に涙を浮かべ、懇願するような目で紫を見る。しかし、二日酔い対策なんて紫は知らないし、第一完全に自業自得なので無視することに決めた。
ちなみに冬馬は完全に酔いつぶれていて、紫に方を借りてかろうじて立っている様子だ。とても会話が出来る状態じゃない。
『とにかく今日は帰った帰った。明日朝ちょっとだけ様子見に行ってあげるから』
『やくしょくだゃよ?』
『はいはい、いいから早く帰ってとっとと寝なさい。何なら譲葉ちゃんも預かっといてあげるから』
『ほんとょ?にゃにかりゃにゃにまでぇごみぇんにぇ・・・』
『ホントよホント。後半何言ってるのか全然わかんなかったけど』
『じゃあ今日だゃけおにぇぎゃいねぇ』
『はいよ。お大事に~。あとご愁傷様~』
『ふぇええぇぇん・・・』
またさっきと同じような奇声を上げて家路につく。と言っても、家は隣なので何の心配も要らないが。
と言うわけでその日の夜、急遽家に止まることになった譲葉と一緒に作った糸電話が現在人間界で二人の家を繋いでいる。
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「と言う出来事があって私達の部屋には糸電話が通っているんです」
「そういやそんな感じだったな~」
「翔輝さん忘れてたんですか?記憶力無いですね」
「どの口が言ってんだ?」
「この口です」
「知ってる」
「ねぇ、『イトデンワ』って何?」
「あぁ、こっちの世界には無いんですね?」
「簡単な工作だから作ってやれば?」
「そうですね、久々にやってみましょうか。ところで翔輝さんはどうするんですか?」
「昔を思い出す」
「おじいさんみたいなこと言わないでください」
「何言おうが俺の勝手だ」
「分かりました翔輝おじさん。じゃあウルさん、行きましょうか」
「誰が翔輝おじさんだ、って聞いてねぇし」
「あ、待ってよ譲葉!」
翔輝がそれを言い切る前に譲葉は小屋に向かって歩き出していた。ウルもそれを慌てて後を追う。
それを見送ると、翔輝は木にもたれ掛かってため息をつく。
「・・・まさかあの時の話をされるとはな~」
翔輝は苦笑してそう呟き、あの日のことを思い出す。
それは譲葉の両親と紫が家の外で話をしていた時。翔平が少し酔ってリビングのソファーに寝転んで休んでいるときのことだった---。
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『・・・お父さん大丈夫?』
『ん、何とか・・・。それより翔輝』
『何?』
翔平はダルそうに起き上がり、少し真剣な目をして翔輝と向き合う。
『譲葉ちゃんとはどうだ?』
『?どうって・・・普通だけど』
『何か問題はないか?』
『ううん、楽しいよ』
『そうか。・・・譲葉ちゃんの事は好きか?』
『うん、好きだよ』
『・・・そうか。それなら一つだけ覚えておきなさい』
『え?』
『いいか、男に生まれたからには女は守らなきゃいけない』
『・・・うん』
『だから口で何を言っても構わない。でもな、絶対に手を上げるな。相手に何をされても、絶対にだ』
『え~、だってやられたらやり返さなきゃすっきりしないよ?』
『だから何もやられないような立派な人間になりなさい。そうすればお前の仲間は絶対にお前を傷つけるようなことはしない』
『う~ん、難しくてよく分からないよ』
『今は分からなくてもいい。だから言っただろ、今は覚えておくだけでいいって』
『・・・とにかく女の子は大切にしなさいってこと?』
『あぁ、そういう事だ』
『は~い。じゃあ僕譲葉ちゃんにさよなら言ってくるね!』
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「・・・ったく、あの変態ロリコンフェミニスト親父。余計なこと昔の俺に吹き込むやがって・・・」
ため息混じりに実の親に向かって暴言を吐く。いないのをいい事に・・・。
翔輝はそう呟いたあと、苦笑しながら呟いた。
「・・・おかげで譲葉に言われた事は結局やっちまうんだよな、いくら粘っても・・・」
遅れてしまった分若干長めだったと思います。
今回は自分の中、と言うかこの小説ではそれなりに重要なところのつもりで書きました。この翔平の信念(?)が翔輝をどう影響していくのか、それにも重点を置いて今後も読んでいただければ幸いです。