D-5 お嫁さん
「ポコ、嫁とは。」
何ですか? 問答ですか?
「良いか。」
「はい。」
「良いのか。」
岩にでも、化けようかな。
「ポコ。化けるなら、嫁に。」
「釜戸神、お好みは。」
「そ、そのよう、な。」
えぇっ、まさか?
「ポコ。」
「はい。」
「どうなった。」
「どう、とは。」
「使わしめだ、狐の。」
「どこの、お狐さまでしょうか。」
「ぽっ、ポコ。そんなに居るのか。」
「そりゃぁ、多いですよ。狐の使わしめ。」
「その、山守の。」
「九尾の。」
「ツネコ。」
いや、どこの狐ですか。
「シズエさまです。」
「狐と狸、仲が良いのか。」
「それはもう、化かし合いです。」
「楽しそうだな。」
「ええ、負けられません。」
「ポコよ。嫁に行っても、良いぞ。」
「いいえ、行くなら婿です。」
「狸の婿入りより、釜戸社の嫁とりです。」
「エイは娘、とるなら婿だ。」
「いえ、祝ではなく。」
「誰の。」
「神の、です。」
・・・・・・。
「お、お鎮まり下さい。」
ドカァァンと、出ちゃうからぁぁ。
「山神の使わしめには、鳥が多い。」
「そうですね。」
「ポコ、鳥になれるか。」
「飛べませんが、化けられます。狸なので。」
葉っぱを頭に乗せてって、え?
「翼があれば、飛べるのか。」
「鳥ならば。しかし、飛べない鳥もいるそうです。」
「そうか、飛べるか。」
はい、聞いてません!
「良いなぁ、鳥。」
釜戸山、愛鳥週間ですか?
「美しい。」
社、野鳥の会。なんちゃって。フフッ。
「鳥といえば、日吉社のクロさま。」
「ポコ、鳥が好きなのか。」
入会しませんよ。
「日吉社にて、鳥の音楽会が開催されるそうです。」
「音楽会か。」
あれ? 鳥ですよ、鳥。
「ポコよ。」
「はい。」
「酒は、出るのか。」
気になるのは主演ではなく、酒宴ですか?
「望月か。」
輝いて見えます。
「愛でよう。」
はい、お持ちします。
「良い酒だ。」
それは、なにより。
「ススキはよい。団子を。」
食いしん坊、万歳!
「ポコ。ツネコは、まだか。」
狸と狐、夢の競演! なんてネ。
「山守社の、シズエさまですか。」
「いや、ツネコだ。」
こちら、狸検索。ポンポコ、ポンッ。該当狐、零件です。ポンッ!
「どこのお狐さまで。」