D-1 はじめまして
3月9日。感謝の日! 応援、ありがとうございます。
小説なんて書いたコトないのに、長編って! 我ながらビックリです。続いているのは、応援してくださるファンのおかげ。
醍醐潔作品に登場する、愉快な仲間たちの日常をチラ見せ。新作です。これからもよろしくお願いします。
谷河の狩り人、シバ。出で湯に浸かりながら考えていた。
「どうも、なぁ。」
きな臭い話ばかりだ。三鶴、玉置、豊田。川北、武田、東山。北山、飯田。
「はぁ。」
山裾の地で穏やかなのは、川田と馬守だけ。
「フゥ。」
どちらも古い。そして強い。強いから残っている。
特に気になるのは、三鶴と玉置。早稲との繋がりが強い。あの村は、悪い話しか聞かない。行ったことはないが聞いた。腐りきっている、と。
霧雲山までは来ない、来られない。とはいえ、お伝えしよう。守なら、きっと。
「クゥ~ン?」 ドウシタノ?
釜戸山の村には、犬用の湯場がある。
「ヨシヨシ。」
シバに撫でられ、ウットリ。
「なぁ、チビ。」
なぁに?
「寄り道しようか。」
「ハッ、ハッ。」 ウン、イイネ。
「そうか、そうか。」
チビという名の、大きな犬。
守り長、狩り長に会い、釣り人の村へ。
「一休みしよう。」
「ワン。」 ハイ。
「ヨォシ、ヨシ。」
グァシ、グァシと撫でられ、尾を振る。
「クゥン。」 エヘヘ。
シバは犬より、鳥が好きだった。それも大きな鳥が。
『犬?いいんじゃないの』
ソレくらいにしか、思っていなかった。
「キャン、キャン。」 ワァイ、ワァイ。
「ワン。」 ボウヤ。
「キュ。」 エ。
「ワワン。」 ニゲテ。
ブルブル震えて、動けない。
「キャイン。」 アァァァ。
「キュ、キャン。」 カッ、カアサン。
犬の悲鳴が響いた。ザクザクと進む。熊だ。矢を番え、射る。
「グヲォ。」
ドサッと倒れた。腸を抜いて、鷲のエサにしよう。
「ん。」
仔犬。そうか、あれは親犬か。今は熊が子を育てる頃。仔犬が飛び出して、襲われたのか。
「さて。」
ヒョイと抓み、袋に入れた。
「これは。」
村に帰って直ぐ、犬飼いに見せた。
「育たないだろう。」
困った。困ったが、その前に肉だ。熊肉。
「さて。」
引取り手が無い。鳥のエサに・・・・・・。
「キュウ。」
出来なかった。
「飼うか。」
譲ろうと拾った。断られたからと、捨てられない。
「チビ。」
小さすぎる。だから、育たない?
「食え。」
熊の、柔らかい肉を出す。が。
「フンッ。」
再び抓んで、犬飼いの元へ。
シュパッツ。で、グヲォ。熊が倒れてきて、ベタァ。明るくなって、目を開いた。??? 助けてくれた!
一匹だけになったけど、生きている。
村で飼われている、他の仔犬より小さかった。だからチビ。育たないって言われたけど、大きくなった。
シバ、いつも優しくしてくれる。大好きだよ。