26 鍋と感情
「今日はすき焼きだ!」
だが、この男の子の父は浮かない顔をしていた。
「死にたい……」
ホラー番組を見たのか、
心霊写真を見たのか、
いや、それ以上にその男の顔は、
とんでもない罪を犯したような顔をする。
「食べようよ、お母さんも……」
だが、その子の周りの人達は、
みな、一様にどんよりとしていた。
「どうして、私は、生きてるの?」
「演じるということに疲れた」
「友達なんて塵のようなもの、何が、リア充よ」
色んな声が聞こえてくる、
男の子はその家を出た。
不気味だったからだ、
あの鍋にあった色は、
どんな色だったのだろう。
男の子は何年かして、
青年になった。
大学に通って、
調べてみる、
鬱病の兆候だった。
その言葉、
「死にたいと」
そう、分かるようになったのは、
健全な魂からというどこぞの
哲学的な命題からだというわけではなく、
現に、
今、そのような状況に、
陥ってるからだ。
両親は既に他界し、
家は燃え盛ったようだ、
自殺の集まりだと聞かされた、
あのとき、見た、光景を忘れることは、
少年には出来なかった、
心の中の少年はうぶで、
同時に愚かだった、
無知の理と呼ぶが、
それさえ、善いことなのだろうか?
むしろ、愚かなことさえも思えた。
自己嫌悪を催す青年、
筆者は、これを書くのに罪を覚えている、
これを呼んで、死なないでくれと、考えながら、
決して、勧めているわけではない、
だが、誰かを救うためにでもない、
自殺幇助させてるわけではない、
あくまで、闇を描きたいことに
苦心していた、
己の心の闇の香りを、
絵を描く芸術家のように、
我は文字にして表現する、
オーバードーズを起こすために、
鍋を青年は用意した、
水を入れ、
温度が沸々と熱くなっていく、
死ねば、地獄か天国、
悪は地獄、
善は天国、
普通は煉獄から魂の昇華を図る、
青年は自殺を試みようとする、
どうして、かというと、
自分という存在が、
塵のように感じられたからだ、
文壇にも上がれず、
視界に写るのは、
売れっ子と呼ばれし、
ものたちの戯れ言、
そんなものを言ったら、
終わりではないか、
自慢話、
誰かを殺すために言っているようにしか
思えなかった、
悲しいな、
青年、
青年の心は鍋のように、
言葉では形容し難いなにかをしょくす、
睡眠薬、風邪薬、その他、諸々の、
薬を入れる、
滑稽なものだな、
人の生活の助けとなるものが、
気づけば、
死に近づくための、
死神の錬金術へと変わろうとしている、
だけど、
自分という存在は、
もう、青年という存在はもう、
作品のなかでは消えていく存在、
同じく、私は生きている、
どこぞの心中をして、
生き残った文豪のように、
後悔しか残らない、
生き残ってくれと、
ハッピーエンドは
願うだろう。
だが、生憎、
私はそのような世界は、
消えてしまえば言いと思う、
楽しい世界があるのなら、
哀しきことなんて、
現実に起こっていないのに、
それを描ける創作者は、
皮肉を込めて、素晴らしい。




