Sechzehn
書籍が一枚あったとさ、
だが、その床に散らばった埃のせいで、
何も見えない。
だけど、彼は何も見ようともしなかった。
タイトルだけは見える。
「答えの見えない直通炉」
溶けるように、壊れていく、
あの列車の中で、
彼は鮮明に覚えていた。
記憶に傷が入る。
立ちくらみをする、コートを着た悪魔、
目の前には何も見えない。
しかし、記憶喪失の男には、
これがいったい何なのかが
分からなかった。
題名は分かるが、
読んでいたのに、読んでいないという錯覚に陥るほどのもの、進むべきものはそれだけではないということを記すコンパスとキャンバスがあれば描けるというのに、
男は鉛筆に手を取った、そして、
十字架を書くも、
敵の目は好奇の目に晒されていた。
男の口には血がベットリと着いていた。
腐った血から出てきた鉄の錆びた物が、
「悲しいかな、これが戦争か……」
そう、彼は片腕に巻き付いている腕章を見て、
無意識にその言葉を発した。
自分が何者かが分かったようであるが、
まだ、心というものを手に入れていない子供のように、
まだ、純粋無垢とは程遠い存在、
「となると、ここは地獄か?ならば、行きつくのは如月か?」
彼は戦地で沢山の人間を殺してきた傭兵だった。
国境なき医師団があれば、
金さえ積めれば何でもやる、天国なき傭兵団もいる。
行きつく先は闇、
されど、その他に道はない、
表舞台より、追いやられた人間たち、
正義のために、不正を正すために、上官を殺した奴が、
彼だったのだ。
そして、軍から綱紀として、軍法会議で、
死刑になるところを、
ある武器商人に拾われたということか……
「お前の命、役立てて見ないか?」
ニヤリと笑う、その笑みは
悪魔という形容詞とゾワッという感嘆符、
表現法方としてゴシック絨毯と芸術語法で、グロテスクさえも
彷彿とされる彼女に、私は心を奪われた。
思い出した、私は……
視界が広がる。
地獄への特急列車は壊れ、
第17番目の話が始まろうとしていた。
私の話は終わるとしよう。
医療班のマッドサイエンティストの実験にされちゃあ、
叶わないからな。
ある傭兵部隊の死からの復活、
〈終わり〉




