男子に胸が負けるだと!?
この学校では六月も後半戦に差し掛かると、気温とプールの水温にも寄るが、体育の授業がプールとなる。余談だが、プールの時間があるときの体育の時間は二コマあり、三限目と四限目にある。
プールの授業と言ってもそこまで本格的な物ではなく、基本的にはお遊び感覚が強い。
体育教師曰く「プールの授業後はただでさえ、眠くなるのに本格的にしてしまっては生徒が寝てしまう」とのことだ。
8レーンあるプールなのだが、1から4が男子、5から8が女子のレーンである。
そんな感じで二時間目の終わり、着替えと水着を持って更衣室へと向かう。
更衣室は男女ともに隣接している訳では無く、少し離れたところに位置している。なんでも、盗撮や覗き対策として、場所を遠ざけているらしい。
いくらJKが多いとは言っても、更衣室という狭い空間に、様々な制汗剤やカビの臭いのせいで何とも言えないニオイが更衣室を包み込んでいる。
女子達はみんな「ムダ毛が」や「見えてない?」や「太ったわ」などなど、元男子としての夢が儚くちりそうなことを大声で話し合っている。
スク水を着る方法は水泳用のバスタオルで前を隠して着替える人もいるのだが、中には堂々と自分のプロポーションを見せびらかすようにして着替えている者もいる。
美愛、橘の二人は「ドヤ!」と言わんばかりに脱いで着用していた。
クラスでの立ち位置的には目立つ方では無い美愛だが、グラビアアイドル顔負けのプロポーションなので、脱げばやはり視線を多少なり集めている。
身長の割に巨乳である橘も脱げば凄いと言わんばかりに、女子から賞賛の声をかけられている。
残る僕と琴乃葉。
琴乃葉は下に水着を着用してきており「下着は忘れていない」と高らかと自信満々にタオルの上に置いていた。どことは言わないが相変わらず、主張はしていない。
僕もサッサと着替える。
別に脱ぐのが恥ずかしいというわけでは無いのだが、女子達が言っていたムダ毛問題が尾を引いているのだ。
別段、ツルツルなのは問題ない――そう言い切れるのかは怪しいけれど、今の状態では完全に剃ってきたって思われそうで少し心配なのだ。
いくら剃り跡が無いとは言っても、パッと見ではわからないだろうし、だからと言って天然だって伝えるのは、恥ずかしいし。
「渚。おっぱいなら気にするな! 仲間だろ」
琴乃葉は悲しいことを自分に言い聞かせるように、僕に伝えた。
いや、胸は気にしてないですよ。
豆乳飲んでるけど。
「胸じゃ無くて。下の方ね」
「あぁね。渚、パイパ――」
「声がデカい!」
これ以上、琴乃葉を話していると、僕がツルツルであることが必要以上に露呈してしまうので、サッサと着替えることにする。
更衣室を出て、太陽光によって熱せられたプールサイドのアスファルトは頗る熱い。
そんな状態で「熱い」と言いながらはしゃいでいる男女をみて、興奮する教師がいるのでは無いのだろうかと考えてしまう。
「ね、渚! あっちを見て!」
琴乃葉が指さす方向を見る。
そこは男子が並んでいる所だった。
イケメンの半裸やマッチョを見ることができるのだ。普通の女子ならはしゃぐモノなのだろう。
だが、結果は予想よりも斜め上を行く。
「あの男子、アタシ達よりもおっぱいある!?」
「声がデカい! それに僕を巻き込まないで!?」
詳しい理由はわからないが、ぽっちゃりしている男子は胸がある。
それも、貧乳の女子以上だ。
それだけ胸があるのであれば、それ以下である僕と琴乃葉はトップレスでも問題が無いのでは無かろうか。
しばらく自分の敗北感に浸っていると、雪峰の姿も確認することができた。
当然と言えば当然だが、ニップレスだ。琴乃葉と同じくらいなので、隠したら隠したというサイズ感なので、見て良いものなのか、と罪悪感に駆られる。凝視しない程度に
下半身を見てみるが、膨らみは観測できなかった。
一人落胆していると、視線に気が付いた美愛が耳元で声をかけてくる。
「渚ちゃん。男子の裸が見れて興奮しているのはわかるんだけど、下半身をガン見するのはナンセンスじゃないかな」
「興味本位……そう、興味本位だから」
「興味本位でガン見するのはムッツリすぎない!?」
本当に興味本位で下半身を眺めてしまったけれども、その行為をしているのは確かに変態だ。
自覚すると恥ずかしくなってきた。
「よーし、全員揃ってるな。それじゃ、準備運動してからプールに入るように!」
体育教師が決まり文句を言ってからプールの授業がスタートした。
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