見た目ロリにナンパするな!!
水着を購入してからは結月の買い物に付き合った。
ショッピングモールに行ってもゲーセンと映画館と本屋くらいしか行かない僕にとっては、服や靴を見るのは新鮮さがあった。普段、店員に話し掛けられるのが苦手で、ネット通販ばかりで購入しているからというのもあるのだろうけれどね。
ともあれ、お買い物が終わってから、ゲーセンへと向かった。
僕の偏見として、女子が二人でゲーセンに行ったらプリクラぐらいしかイメージが無い。
しかし、相手は結月だ。
「久々のゲーセンだね。よし、メダルゲームで遊ぶよ!」
ゲーマーである結月だが、アーケードゲーム――格ゲー音ゲーはあまりたしなまない。
これは僕も同じで、格ゲーは入門難易度が高すぎで諦めたし、音ゲーは単に苦手だ。
これは遺伝したのかはわからないが、結月も同じ理由でメダルゲームをやっていると前に言っていた。
レシートで回せるメダルガチャをして、二百枚を元に楽しむことにする。
が、所詮は200枚。
直ぐに無くなった。
無くなってから気が付くのだが、なぜ沢山メダルがあると、最大ベットで遊んでしまうのか。
しかも、メダルの残り枚数が少なくなっても「まだイケる!」と言ってスリルを楽しんでしまう辺り、僕と結月はギャンブルをするべき人間では無いのだろう。
そのことをお互いに確認して、次はクレーンゲームをする。
フィギュアは取るより購入した方が安上がりな気がするので、やらないのが潮風家の暗黙の了解なので、ぬいぐるみの物をやることにする。
三百円でサメのぬいぐるみを取ってから、景品を入れる袋を探すことにする。
結月は結月で次に取るぬいぐるみの品定めを始めた。
「ちょっと良いですか?」
背後から声をかけられたので振り返ってみる。
すると、4人組の男子が居た。
え?
なんですか?
これがナンパですか?
僕、中身、男ですよ?
「連絡先、教えて欲しいんですけど良いですか?」
「え? いや……え?」
「あ、電話番号でも良いですよ?」
何でこの人達、僕に声かけてきたんだよ。
身長と胸が女子小学生だぞ?
しかも男4人で声かけてくるとか、事案じゃ無いか?
ワンチャン狙いだとしたら5人だぞ?
マワされる事確定じゃん!
「君、可愛いからさ。あ、名前教えてよ?」
そう言って声をかけてきた男はグイグイと来る。
頼む、結月。助けて。お兄ちゃん、ちょっと不本意ながらそっち面に押されて落ちちゃう。
「照れてる? そういう所もかわ――」
「ちょっとお兄さん方。アタシの彼女に手出さないでくれる?」
不機嫌な表情の結月が幾分か低い声のトーンで助けに来てくれた。
彼女という単語を聞いて、男の集団はゾワゾワとし出している。
そりゃ陽キャ集団なのだ。
歴戦のオタクでも無い限り、女子から彼女という単語を聞いた瞬間にキマシタワーを立てることは無いだろう。
「渚、行くよ」
前に僕を犯そうとしたときにしたイケボを発しながら、腕を組んでくる。
そのまま連れ去られる形でゲームセンターを後にした。
逃げるようにある程度歩いてから、男子だけでは入りにくい女性下着専門店に入る。
一息ついてから結月が口を開く。
「初めてナンパされた感想はどうだった?」
顔を合わせずらそうに、結月は視線を右往左往しながら聞いてくる。
「されるとは思ってなかったからちょっと怖かったかな」
そう、と素っ気ない返事を結月はする。
実際問題、多少は自分が性的な目で見られても、それは直接的に僕に関係してくるような事柄では無かっただけに、先ほどのナンパは恐怖を感じてしまったのだろう。
別に、これで男性恐怖症になることは無いだろうけれども、一部、過激な思想をする人が出てくる理由もわかった気がする。
ってか、これがわからせモノの一つなのだろうか?
「まぁその……ありがとう。助けてくれて」
色々な感情が渦巻いているが、結月に感謝の言葉を送っておく。
礼の言葉を聞いた結月は更に居心地が悪くなってしまったのか、そっぽを向いてしまった。
別に変なことは言っていないのだが……照れくさかったのかな?
「ありがとうは反則だから」
結月の表情を見て照れているわけでは無いことがわかった。
単に興奮を隠しているだけだった。
「百合の間に挟まる男は良くないからね。アタシとしても、ナンパなんかでお兄ちゃんの処女膜が破られるのは嫌だし」
興奮を静めるためなのかはわからないが、決してランジェリーショップで言っていいような台詞では無いことを結月は恥ずかしそうに言うのであった。
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