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起立したときには若干、腰を引く

 次の日の学校。

 制服姿の雪峰を見ると、スカートでは無くズボンであり、リボンで無くネクタイであることから男子生徒だとわかるのだが、それでもわからないと言うのが僕の思いだ。


「渚ちゃん?」

「ん、どした?」


 美愛が声をかけるや否や、耳を貸してとハンドサインで合図してくる。


「奈央のこと気になってるの?」


 一瞬フリーズ。

 え、なに? そんなに見てた?

 確かに性別は気になってるよ。


「性別が今だに信じられなくてね」

「確かに、幼馴染みである私も時々、女子だと思って話していることがあるし」


 目を伏せるように美愛は呟いた。

 こんな身近に認知的不調和が起きてるとは思わなかったよ。


「お困りのようだね」


 琴乃葉がキリッとした顔でアホの子が言いそうな台詞を言いながら近づいてきた。

 あと、なぜかはわからないがメガネをかけていた。最近流行の丸メガネでは無い辺りがファッションで着けているわけではなさそうだ。


「別に困っては無いけど。なんでメガネなの?」

「コンタクトを落としちゃってね……ってそんなことはいいのよ。どんな話ししてたのかしら?」

「コンタクト落とした方が問題なんじゃ……」

「家に帰れば在庫があるからいいのよ。んで、何話してたのかしら?」


 見た目に反してグイグイとくる。


「一つ聞いてみるけど、雪峰のことどう思う?」

「どうって聞かれても、可愛いなって思うわよ」


 男に可愛いと言っても実際反応に困るわけで、それは褒めているのか、異性としてみていないって事なのかは正直、元男として気になるところなのだが、やはり、認知としては僕と美愛と同じようである。


「ちなみに性別は?」

「男子……なんじゃない? スカートじゃないし」


 琴乃葉も目線を逸らし言葉を詰まらせながら答えた。顔ではわからないからと言う理由で、制服で判断しているので、体操服ならわからないタイプなのだろう。


「どしたのん? 三人とも目線合ってないよ? ってなんで芽依ちゃんメガネなの?」


 小悪魔、橘が登場した。

 コンタクトの事を話してから、琴乃葉はピコンッと思いついたようで話しを始める。


「瑞月からみて雪峰ってどっちだと思う?」

「えっ。いきなりだね。んー男子だってわかるけど」

「さすが瑞月さん! んで、どうやって判別してるの?」

「判別ってひよこ鑑定士じゃ無いんだから。って、なんで三人とも目を輝かせてるの!?」


 ツッコミながら、しばし考えて小声で言葉を繋げる。


「判別って言わなくても、普通にわかると思うよ。においとか、どことは言わないけどズボンの感じとか、目線とかでさ」


 においとズボンは変態過ぎないだろうか、と言うのは置いておいて、さすがは恋愛経験が豊富な橘だ。


「目線なら美愛ちゃんならわかりそうだけど」

「幼馴染みだからさ。あっちは見てないって感じだったけど。何なら渚ちゃんの方が見てるし」

「え? 僕そんなに見てる?」

「まぁ渚ちゃんはムッツリだから」

「ちょっと! さらっとアタシと渚のおっぱいをディスらないでよ!」

「僕を巻き込まないで!?」


 おっぱいに反応しすぎだろ、この残念美人。

 しかも、僕も貧乳だって事を暴露したし。元男だから、小さくても気にはならないけどさ。自分で触ってみる分には悲しいものがあるんだよ。


「まぁまぁ、落ちついて。自分で私は貧乳ですって公言してるようなもんだからさ。着痩せしてる可能性を増やすためにもね?」


 巨乳が貧乳を慰めるのは良くないと思うので、僕がなだめてみることにする。

 不服なり、とムッとした顔を依然として琴乃葉は浮かべている。

 話しを切り替えよう。

 そう思って、美愛にアイコンタクトで訴えかける。

 任せと、とウィンクをして美愛は話題を切り替える。


「でも、ズボンで判断するって所は一緒なんだな。そこは安心したよ」

「あ、ズボンって言っても、制服で判断してるわけじゃ無いからね。膨らみでだから」

「「「え?」」」


 三人同時に声が出た。

 え? 膨らみ?

 不意に臨戦状態になることはあるけれども、そんな状態は狙って見えるものではないはずだ。元男だからこれだけは言える。


「瑞月さん膨らみって言っても、普通、わからないような気がするのですけれども……」

「なんで、美也ちゃんもさん付け!? ま、まぁ……詳しいことは後で教えるね。今ここで言うのは……さ?」


 周りからの視線を感じてか、橘は僕らと目線を逸らしながら、廊下へと小走りで向かうのであった。


 しばらくして、スマホのバイブレーション。

 画面を見てみると、橘がSNSのトークグループへの招待があった。グループ名がデフォルトのままなので相当急ぎのように見える。

 とりあえず参加しておくと、直ぐに美愛と琴乃葉も参加して全員が揃った。

 招待メンバーが揃うなり、橘から長文のメッセージが送られてきた。

 内容を要約すると、授業中に眠そうにしていたり、寝起きの人の男子だと、臨戦状態になってることが多いから、その時にしてる行動でわかるとのこと。臭いに関しては言わずもがな。


 確かに、教室でこの話をするのは勇気がいる。

 ってか臭いでバレるのはわかるけれども、不意になる奴もバレてるのかよ。

 少なくとも男子学生のほぼ全員が、授業の始めと終わりの起立のいらん所まで起立してしまったって、もがいているあの時間は無用な時間だったのかよ。


 その理論で言うと、橘は男の娘の臨戦状態を確認したことがあるという物言いなのだけれども、その点に関しては誰も言及しなかった。

読んでくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読んだらなんか色々勉強になりました(?) [気になる点] この判別方法は作者さんの経験則でしょうか? もしかしてTS小説を書く人にはこういうことの洞察力も重要とか?
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