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男の娘で心の〇〇〇が元気なるのは事案では?

 その後、部活動見学は雪峰も合流して部活動見学をする流れとなった。

 吹奏楽部の部員達からは「私より可愛い」と言う驚きや「これははかどるわぁ」と限界を迎えていそうな言葉を発する者、率直に連絡先を交換しようとする者などが多発して、疲弊しているように見える。

 僕は連絡先を交換することはできなかったんだけどね。


「潮風さんは部活動に入るの?」

「僕は……あ、僕じゃない私は――」

「気にしなくて良いよ。僕も自分のこと僕って呼んでるし」


 この学校に僕以外に僕っ娘が居たのかよ。意外と世界は狭いと改めて感じさせる。


「あ、ありがとう。まぁその、入りたい部活はないし、色々としたいことがあってね」


 少し嘘をついた。

 部活をしたくないのは本当だけど、したいことと言うのが嘘で、実際は身体的に止めた方が良いらしい。

 女体化したときに色々とあるらしく、医者からは止めておいた方が身のためだと言われたからね。それに結月から念押しされてるし。


「え、じゃあ、どこ向かって歩いてるの?」

「美愛に続いてる」

「僕は潮風さんに続いてたよ」

「私は奈央に続いてた」


 ものの見事に目的地不明の状態で歩いていたわけなのだが、体育館に着いた。

 この学校はマンモス校なのかはわからないが、体育館が二つある。第一と第二で分けられていて、違いと言えば大きさくらいだ。ちなみに、到着したのは第一体育館。

 第一体育館では半面でバレーボール、もう半面でバスケ部、壇上ではその二つの部員だと思われる学生達が筋トレをしていた。部活動紹介中とあってか、男子と女子の両部員が合同で部活動をしている様子であった。


 体育館の入り口にて、しばし運動に勤しむ学生達を見ていると、バスケ部の部長と思われる男女と目が合った。目線を感じたのは僕だけでも無く、美愛も感じ取ったらしく小声で「あれはデキてる」と突拍子も無いことを呟いていた。


「バスケ部の見学?」


 足並み揃えた男女ペアのバスケ部が歩み寄ってきた。

 男子の方は色白高身長イケメンで漂ってくるオーラから部長で間違いない。

 女子の方は身長は雪峰程度と女子の中では平均的で、容姿面に関しても平均的だった。


「女子が三人ね。フリースローしてみる?」


 有無を言わさず、女子バスケ部員は話を進めてくる。

 この感じが運動部女子部と感じさせるのは僕だけでは無いはず――ってか、やっぱり雪峰は女の子カウントなのね。

「僕は男なん――」


 雪峰の話を聞くことなく、バスケのボールが渡されるのであった。




 雪峰奈央が男である事実に疑いの念は消えないまま家路へと着く。

 いつもならお出迎えをしてくれるはずの結月の姿が無く、どうやらまだ帰ってきていない――正確には、通学用のシューズはあることから一度は帰ってきたようなのだが、どこかに行ってしまったと言うとこか。


「あ」


 タイミングが悪かったと言わんばかりの声を出しながら結月が帰宅した。コンビニ受け取りにでもしていたのだろうか、手には宅配便の段ボールあった。


「コンビニ受け取りか?」

「ま、まぁそんなとこだね。ちょっとパソコン部品を……ね?」


 察しろオーラを出した結月はソソクサと自室へと行ってしまった。

 そのパソコン部品は本当にパソコン部品ですか、と聞きたくなるけれど、それはデリカシーが無いので止めておこう。


 晩ご飯を食べ終え食器を洗っているとき。


「なぁ結月」

「ど、どうしたのお兄ちゃん?」

「いや……滅茶苦茶、ソワソワしてるからさ」

「そ、ソンナコトナイヨー」


 口ではそう言いながら、結月は目線を逸らし棒読み。

 何かあることはわかるけれども、詮索するほどお兄ちゃんは野暮な人間じゃ無いから気にしないふりをして本題に入る。


「なら良いんだけどさ。この写真、見て欲しいんだけど」


 そう言って結月に、宿泊学習で撮ったクラスの集合写真を見せる。


「何々? 気になる子が居たの?」


 お節介なお母さんのような台詞回しで結月が写真を拡大しながら、嬉しそうに吟味している。


「可愛い女の子多いじゃん! やったね、お兄ちゃん! でも、お兄ちゃんをメス落ちさせてくれそうな男子はいなさそうだね」

「お兄ちゃんをメス落ちさせようとするな」

「まぁイケメンは二人いるけどさ。イケメンにお兄ちゃんが寝取られるのは、アタシとしては好ましくないし」

「その言い方だと、イケメンじゃ無い男子に寝取らせたいって聞こえるんだけど」


 あははっと満面の笑みを結月は浮かべる。

 仕切り直しと言わんばかりに、結月は水を一杯飲んでから本題に導入してくれる。


「んで、この写真がどうかしたの、お兄ちゃん?」

「この子を見てどう思う?」

「どの子どの子?」


 そう言って、僕が指さしたのは雪峰だ。

 パッと見女子。それも男子だと気づけないのは、僕以外にも居る。

 性別シュレティンガーのネコを見て、性欲に忠実な結月はどう答えるか。

 しばらくの長考の後、結月は口を開く。


「女子……ん……男子……男の娘?」

「え、なんでわかったの?」

「え、マジなの?」


 静寂。

 その刹那、結月が立ち上がる。


「マジで! 普通にイマジナリーちんちんが元気になっちゃった!」

「声がデカい!」


 お隣さんがクレームをいれてきそうなくらいにデカい声で下ネタ言ったぞ、この妹。

 ってか男子に対して心のちんちん元気にしちゃったらいけないだろ。


「それで、お兄ちゃん。この子がどうしたの?」

「いやぁ。その……初見で男の娘だって気づけるものなのかなって思っちゃってさ」

「ふーん」


 意味ありげな顔をして結月は良い笑顔を浮かべて話しを繋げる。


「お兄ちゃん。アタシと同じ状態になったんでしょ?」

「うぐぅ。それは……」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。兄妹だからね。顔を赤らめないでもわかる。うん」


 図星だからこそ、それ以上、何も言えなかった。

 しばし考えた様子の結月は話しを切り替えるが如く、会話をぶった切ってきた。


「閑話余談と行こうか、お兄ちゃん」


 存在しない四字熟語を結月は自信満々に言って僕を見下ろすのであった。

読んでくださり、ありがとうございます。

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