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ガールズトーク(夜)

 その後の宿泊学習の日程は何のイベントも発生すること無く過ぎていき、後は寝るだけとなった。消灯時間までタイムリミットは一時間。

 正直、目の保養が十二分にできているので、このまま嬉しい気持ちのまま眠りにつきたい。

 まぁ、布団と枕が畳かよってレベルで硬くて安眠はできそうに無いんだけどさ。


「学校行事の夜と言えば」

「夜と言えば?」

「ガールズトークでしょ」


 琴乃葉と橘の雑な前振り。

 パチパチとテンション高めに橘が拍手をしている。


「美愛、渚。寝るには少し早すぎるわよ。ガールズトークにお花でも咲かせましょ」


 琴乃葉が僕と美愛を起こすように話し掛けてきた。

 お誘いを受けたのなら逃げるに逃げれない場面なので、参加することにする。

 って、ガールズトークって何話すんだよ。他に部屋に居る人たちはどうするんだよ。


「ではお題目、一発目。気になる男子はいる?」


 意気揚々と、琴乃葉の司会進行と共にガールズトーク――恋バナの幕は切って落とされた。

 気になる男子って言われても、僕、中身男だし。


「居ない」

「僕も」

「私も」

「わお、即答だぁ」


 即答に琴乃葉は空回り気味のテンションで反応する。


「ま、アタシも居ないんだけどさ」


 居ないのかよ、と心の中でツッコんでおく。

 お題目一発目が空振りで終わってしまったぞ。

 しかしながら、ここは司会進行役の腕の見せ所。


「話しを二十度くらい傾けて次行くわよ。次のお題目は好きなタイプは?」


 本当に二十度くらいしか傾いてないような話しの切り替え方だった。

 好きなタイプねぇ。

 正直、あんまり考えたことが無いんだよね。


「ちなみに、アタシは男々してる感じがタイプです」

「「「意外」」」

「そんな三人、ハモることある?」

「いやさ。失礼承知で言うけど芽依は雰囲気、美容男子みたいな色白を好むモノだと思ってたよ」


 ダウナーな感じが常に漂っている美愛なのだが、ハキハキとした声で僕と橘も思っていることを代弁してくれた。

 今時JKは勝手に男感が強い人を好まないと思っていただけに、意外性が強い。

 ま、僕の中身は男感が出てないんだけどね。


「人を見た目で判断するのは良くないって事で。それじゃ次の人」


 話しは広げずに琴乃葉は話題を次の人へと振る。人差し指をくるっと回して、次というハンドサインをしているのだが、テンションの高まりの表れだろう。

 しかしながら。

 琴乃葉を除く、僕たち三人は目を見合わせていた。

 語りづらい、と言うのがひしひしと伝わってくる。


「別にそこまで深く考えたことが無いんだよな」

「僕もそうかな」

「二人とも確かに経験がなさそうだもんね。ちょっとの事で惚れちゃわないか、心配になるよ」

「ノータイムで事実を言われて悲しくなるんだけど」


 陰キャあるある。

 恋愛経験が少なすぎるから、ちょろい。


「美愛はしっかりとしてそうだから安心できる――しちゃイケないのかもだけど、渚は心配になるよ」

「へ? そんなに僕、チョロそう?」


 中身が男だし大丈夫だろ。

 イケメンであれ、男々してる感じであれ、僕がメス落ちする可能性はない……と信じたい。

 女の子の方が好きだし。


「出会ってまだ一週間しか経ってないけど、かなり危ういのよ。パンツが見えてることが多々あるし」

「下にスパッツ履いてるし、パンツじゃ無いから恥ずかしくは……」

「それは知ってるわよ。だからって言って、スカートの中身が見えるのは、健全な男子高校生ならそれだけで今晩のおかずが決まるってモノなのよ。あと、渚のお尻が強調されるからフェチにとってはおかわりまで付いてくる感じよ。あと、スパッツ上げすぎだから。たまに隠さなきゃって思うから」


 かなり熱弁に琴乃葉は僕の危うさを教えてくれた。

 別に恥ずかしくは無いけど、自分が性的な眼で見られている事実は嬉しくない。


「男子高校生ってそんなに盛んなモノなのかな?」


 これは僕の実体験。ムラッとしたときでも、朝昼夜と一回ずつの合計三回が限界だったから、そんなに盛んでは無いはず。


「私、中学生の弟が居るけど結構、盛んだったよ」

「何でお姉ちゃんが弟の事情知ってんの!?」


 橘に弟が居ることをカミングアウトされた後に、弟の性事情を暴露される弟ちゃんが可愛そうに思える。


「ゴミ箱のティッシュ率とか、シーツと壁の謎のシミとか、臭いとか、声とか部屋からの音とか……あと見ちゃったことも何回もあるし」


 不憫すぎない? 弟ちゃん。

 話を聞くだけで、僕も結月に本当は気付かれていたのでは無いかと不安になってくる。


「見ちゃったって……致してるところ?」

「致してる時と、フィニッシュもだし、あと寝てるときに出ちゃうやつ? も見た」


 僕と美愛はご愁傷様と言った顔をしているけど、琴乃葉は「あわわ」と言う声が聞こえてきそうなくらいに頬を赤らめていた。


「ちなみだけど弟の記録は私が気付いてる範囲では一日十回だったよ」

「元気だな」

「何で瑞月がそんなに気付いてるのよ!?」


 引き気味の美愛。

 ツッコミをいれる琴乃葉。

 元男の僕は絶句した。

 いや、十回って。絶対、途中で白濁液じゃなくて透明になってるぞ。


「部屋の掃除するためにノックして部屋に入った時ので一回。その時にあったティッシュの量的にで二回。身を清めるためにお風呂で一回。リビングで仮眠してるときに、誤射? ジャム? で一回。その処理をするためのお風呂でもう一回。夕方に宿題教えてって言われて近づいてこられたときに、風呂入った後なのに臭いがして一回。トイレに行ったときに鍵閉め忘れで見たのが一回。夜に声が聞こえてきて一回。夜食食べようとしたときに、パンツ洗ってたから一回」

「なんでお風呂で致したってわかるのよ!?」

「掃除したときに流しきれてないのがあったからだよ」


 ここまで来ると、話してる本人もそうだが、みんな絶句していた。

 琴乃葉が頬を赤らめがら、上づったこえでトークを勧めようと試みている。

 もう良いからやめておいた方が良いんじゃないかな。

 僕も中身が男だけど、生殖能力のことで敗北を知って悲しくなったし。


「興味本位で聞くんだけど見たって事は、その……弟の息子さんを見たって事だよね?」

「そうだけど、ちっちゃかったよ」

「ちっちゃい?」

「いままで見てきた中だと下から二番目くらい」

「え、瑞月さん瑞月さん。瑞月さんって結構、盛んな人?」

「なんでさん付け? 私じゃ無くて彼がだったの! 本番は……って言わないから!」


 童顔なのに盛んな様子だった。

 小悪魔的なところがあったし、そうだろう、といったらそうかもしれないけどさ。


「ちなみに一番おっきかった人はこのくらい」


 聞いてもないのに、殿方のサイズを教えてくれた。

 美愛と琴乃葉は「おおっ」と圧巻の声を漏らしていた。

 だけど、僕には別の感情の方が先に来た。

 勝った。

読んでくださいありがとうございます。

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