宿泊学習。陽キャと同じ部屋だった。
日時は飛んで宿泊学習当日。
宿泊先の青少年の家まではバスで移動し、揺られること一時間と少しで到着した。
知ってはいたが見える限りの自然。
まだ都心部の田舎から、さらなる田舎に移動しただけだから、別に空気が良くなったとは感じない。
本日の予定は校歌練習とカレー作り、お風呂、そして勉強会だ。
修学旅行や宿泊学習で何を学ぶのだ、とは良く言う台詞だけれども、実際に学習時間があると気持ちが萎えてしまうのは学生のエゴというモノなのだろう。
「渚ちゃん。感傷に浸ってないで、荷物置きに行くよー」
「あ、うん」
黄昏れていた僕を見てか、美愛が声をかけてくれた。気を抜いてボーッとしているところを見られるのは、少し恥ずかしいモノがある。
しかも返事も「あ、」から始まるコミュニケージョンが苦手な人の特徴を出してしまった。
「ちなみになんだけどさ」
「いつから見てたのかって聞かれたら、バスから降りてここはどこだ、みたいな感じできょろきょろしてるときからかな」
「初めから見られてた訳ね……恥ずかしいところを見られてしまったね」
恥ずかしさを笑顔でごまかしてみる。
まぁきっと、引きつった笑顔になってしまっているのだろうけれども。
そんな僕を気にするでも無く、美愛は僕に向けてにこやかにグッジョブとハンドサインを浮かべる。
「そんなことないよ。十分、画になってたからさ」
「画になってた……かなぁ」
「可愛かったから自信持ちなよ。ささ、移動移動!」
美愛はそう言って、僕の背中を押しながら一緒に部屋へと向かう。
可愛いと言われても素直に喜べない自分がいる。
それに女子の「可愛い」だ。言葉の意味のまま信じるのは危ういと言うのが定番というものだろう。
部屋に移動すること数分。
これぞ宿泊学習と言わんばかりのボロい和室に二段ベッドが四つ押し込まれた部屋だった。狭いけれど、ビジネスホテルの一人部屋よりは広い。
「お、相沢さんに潮風さんじゃん。よろよろー」
「お、ほんとだ。よろしくね」
部屋に入るなり、クラスでポジションに経っているお出迎えしてくれた。
前者がクラス内の女子グループの中でも上位に位置する琴乃葉芽依。
後者が橘瑞月で……正直、名前しか覚えていない。
二人とも女子の中では中心的な存在に属しているだけあって、容姿が良い方に属している。元男の僕が言うんだ。多少のストライクゾーンがあるとは言え、万人受けする容姿はしていると言って差し支えない。
「偶然にしてもルックス上位で固まったわね」
琴乃葉が日焼け止めを塗りながら何気なく呟いた。
ん? ルックス上位?
それって僕も入ってるの?
思わず二度見してしまったけれども……どうなんだ?
「渚ちゃん、日焼け止め塗るよーこっちおいでー」
「あ、う、うん」
荷物を下ろしてから、美愛に言われるがままそっちの方へ行く。
そのまま日焼け止めクリームを手に出してもらう。
そう言えば、日焼け止めを塗るのはいつぶりかな、思い出してみる。
「ね、言ったでしょ。自分に自信持ちなよ」
美愛は僕の耳元で囁いた。
耳にかかる息が変にくすぐったい。
ルックス……良かったんだな……僕って。
そんなこんなで女子三人、元男一人で日焼け止めを塗っていると「集合かかってるよ」と廊下で誰かが叫んでいる声が聞こえたので、集合場所である体育館へ向かう。
次回更新は近日!
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