兄に対してメス落ち言うな
食事が終わり、一服をするためにコーヒーを飲みながら僕と結月はリビングでグデッとだらけながら、テレビを眺めていた。
これは単に僕の住んでいる地域のテレビ局が少ないだけなのかもしれないけれど、ほとんどがニュース番組――と言うにはいささか疑問が残るが、ゴシップに芸能事務所に所属しているコメンテーターが話をする番組ばかりで、結果的に見る番組が一つしか入っていないバライティー番組に絞られる。
今年の春に行きたいおすすめデートスポットというコーナーをしているけれど、関東圏ばかりで外様だと感じてしまう。
どれだけデートスポットを紹介したところで、ディナーの後に寄るところは皆同じなのだろうけれども。
「そういえばだけどさ、お兄ちゃん。来週、宿泊学習って書いてあるけど大丈夫?」
「え? 来週? 早くない?」
「いや、あたしに言われても」
宿泊学習がこんなに早くにあるとは学校で聞いていない――ってまぁそんな話があがったことも無かったので聞いていないのは当たり前なのだけれども。
「ってか大丈夫って聞かれても、心配事と言えば、風呂どうしようって事くらいだけど。さすがに身体が女の子とは言っても、中身が男だから一緒に風呂に入るのは良くないよなってさ」
「お、考えてることは一緒だね。さすが兄妹。でも若干、ずれてる」
お互いにテレビを長めながら、積もるに積もらない会話をしながらだらだらと話を繰り広げていく。
「まぁ確かに、妹のあたしとしてはお兄ちゃんが女湯で、同級生の裸を見るって事には嫉妬心――いや、現実を見せられるからそれもありか」
「現実って……」
「それはお楽しみって事だけど、あたしが心配しているって事は、お兄ちゃん未処理で生えてないでしょ?」
想像すらしてなかったことを言われて変な声が出た。
いや、うん、まぁ、気にはしていたよ。
女体化前には無駄毛が生えていたけど、それが無くなった訳だし。
結月の裸を見てるから、変にこじらせて現実を見ていないわけでもないし。
「べ、別にそんなこと気にする事でも無いと思うんだけど……」
「確かに、最近はツルツルにしてる人もいるけどさ。そう言うのしてる子って大体は、スクールカーストが上位な訳よ」
「あーうん。そんな気がするね」
「つまり、養殖の子がいたとしてもお兄ちゃんとは立場としては対になってるって考えられない?」
「確かに」
話しの本腰を入れるためにか、結月はおもむろに立ち上がって僕の目の前に来る。ニヤケ顔で、スケベ心が溢れ出ている。
視線も僕の目を見るのでは無く、股の方を見ていることがわかり、これが視線を感じるって事なんだと感じる。
「間違いなく、お兄ちゃんが天然のツルツルなのか養殖のツルツルなのか聞かれると思うんだよね。そこで天然って言うでしょ? そしたら絶対、色々言われるって思うから気にしないようにね」
結構、良いアドバイスを結月はしてくれていると思うのだけれども、どうしてもニヤケ顔で素直になれない自分がいる。
「ねぇ結月。なんでさっきからニヤケてるの?」
「ん? いや、童貞のお兄ちゃんが宿泊学習で同級生の女の子達と一夜を共にするから、貞操概念が持つかなーって考えるとね」
「それくらい持つわ! 僕はそこまで猿じゃない!」
「そこまでなんだ。まぁお兄ちゃん可愛いから、ネコもタチも両方できそうだし、なんならメス落ちしてもらっても――って考えるとね。お互いにオカズには困らないね」
相変わらず思春期真っ只中の男子中学生レベルの思考回路を結月は露呈させる。
確かに、同級生の裸なんて同性でも無い限り、そう言った関係にならないと見る機会なんて無いからな。男子の上半身くらいなら海に行けば見られるけれど、僕としては得しないわけだし。
ってか実の兄に対して「メス落ち」と対面で言えるメンタルは素直に脱帽させられる。
いくら女体化しているから、文字通りメス落ちできるけどさ……
今はまだ複雑な気持ちだ。
「お兄ちゃんがメス落ちしたからって結月に何の得があるんだよ」
言葉にしないと伝わらないと言うからな。
いつもなら引くだけで終わるところを、声に出していって見る。
「脳が破壊される感じがして、あたしが興奮する」
「寝取られじゃねぇか!」
「兄妹って言っても、お兄ちゃんは今女の子な訳じゃん? しかも可愛いし、あたしのドストライクな訳じゃん? そんな娘がさ。彼女にじゃじゃ漏れ状態にさせられてもグッとくるし、彼氏だったらズボズボっとされてるのも良い」
昼間から酷すぎる下ネタを結月は目を輝かせながら力説してくる。
言葉を多少マイルドにしているとは言っても中々な破壊力がある。
「あ、でもお兄ちゃんの処女はあたしがもらうから、ユニコーンは寄ってこなくなるね!」
「僕の初めてがいつでも破られそうで、お兄ちゃん身の危険を感じるよ」
健気な笑顔で結月は告白してくるのであった。
次回更新は明日!
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