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自己紹介で出鼻を挫くのは反則

 入学式は何事も無く終わり、教室にて担任とクラスメイトとの初顔合わせの時間となった。

 僕の座席は窓際の後ろの方でほぼ主人公席と言われる場所だった。


 これが学園ラブコメのドラマやライトノベルなら、ヘンテコな部活動に入部させられることだろう。

 これが異能バトル学園ラブコメならば、赤髪で火属性魔法を使うヒロインのラッキースケベを拝ましてもらってから、パートナーとして戦っていくことになることだろう。


 だけども、これは現実なのよね。悲しいことに。

 運動部がガハハガハハと品のない笑い方をしながら中学の友人と話をしているだけで、別段、ラブコメは始まりそうにない。


浮かれムードの教室に担任が入ってきた。人を見た目で判断するのは良くないのだが、めんどくさそうな性格だろうと感じてしまう。

 そのまま、ざっくりとした担任の自己紹介とテンプレート的な質疑応答も終わり、生徒の自己紹介と言う流れになった。


 最低限、名前と趣味は言い、プラスアルファで何か一つは言うようにとのこと。

 正直な話、自己紹介はあんまり好きでは無い。

 最低限、名前と趣味を言えばいいだけだのだが、あの独特の距離感と雰囲気と言うのだろうか、自分が晒し上げられているような気がして居心地が悪い。


 少しマシだと思えるとしたら、話すことのテンプレである前者を除いてプラスアルファで何かしらを言わなくてはならないのだが、今回はその指定がないことくらいだ。

 その指定が自分にとって疎いジャンルであればあまり話すことが出来ないので、変な空気が加速したような気がしてしまって本当に居心地が悪い。

 万人が好きな芸能人がいると思うんじゃないぞ、と言いたくなるのは僕だけではないはずだ。


 しかしながら自己紹介テンプレ三銃士の一つ趣味なのだが、これはこれで曲者だ。

 無難な趣味だと「どうするんだよ。空気」と言いたげな表情をされてしまうし……ゲームや読書と言ってしまった瞬間から、スクールカーストの上下関係が決まってしまうような気もするし……


「それでは、出席番号一番から前に出て自己紹介をお願いします」


 担任は作業的に淡々とした口調で導入を始めるのであった。

 出席番号順であるため、僕の番が回ってくるまでには少し時間があるので、この間に少しばかり話すことを考えることをする。

 出来れば参考になることは参考にしたいところ。だとは言っても、大体が無難な自己紹介ばかりで、イケメンや美女が自己紹介をしたとき以外は歓声すら出ないまま、僕の自己紹介一歩前になった。


 だがこの一歩前が僕としては良くなかった。

 なぜなら僕の前に自己紹介をしたのはクラスの中で1番と言ってもいいくらいにイケメンだったのだ。

 自己紹介でも触れていたけど身長は180センチ。サッカー部志望。後は好きなミュージシャンとか休日の過ごし方とかを話していた。


 うん。すこぶる女子受けがよさそう。

 まあ、この女子受けとかイケメンとかは完全に僕の基準で話をしているので違いはあるにせよだ。

 少なくとも僕と同じ感性をしている女子生徒が「めっちゃイケメンやん!」と声に出して言っていたので間違いはなさそうだ。


 イケメンの後に僕だぞ。どう転んだって、察せられる空気になってしまうじゃないか!

 何を話しても、映えないな、無難だなと思われて終わりになってしまう。更に言えば、ドンマイとしか言えない状況になるのだけは避けなくては。


 趣味をなんて言おうかな、と考えながら小さな歩幅で教卓前まで行く。

 まあ、どれだけ嘆いていたって、話は進まないのであきらめて自己紹介をすることにする。


「私の名前は潮風渚です。趣味は――」

「ちっちゃ!」


 その一言で僕は言葉が止まってしまった。

 今は身体が女子。でも中身は男子。

 別に身長にコンプレックスを持っているわけではないのだけれども、男子に対して小さいというのは御法度というモノだ。

 そのモノが指すのは何であれ、男子に対して小さいと速いというのは、年齢を重ねるにつれてあまり喜ばしいことではなくなってくる気がする。

 だからと言って女子に対して小さいというのもいささか失礼な気もする訳なのだけれども。


 ちなみにだが現在の僕の身長は150センチも無い。

 これは高学年の女子小学生と同じくらいで、何なら中学年にも抜かれることとなる背丈だそうだ。


 初っぱなに出鼻を挫じかれたせいで次に出てくる言葉がなかなか出てこなかった。

「やべぇ、何言おうとしたっけ?」と、頭の中が真っ白になっているのがわかるや否や変な汗をかいているのを感じる。

 だからと言って間を開けてしまうと、空気が悪くなるのでサッサと終わろう。


「……私の趣味はゲームで、大体どんなジャンルでもやってます。よろしくお願いします」


 そう言って僕は軽いお辞儀をし自己紹介を終えるのであった。

 結局、趣味ゲームって言っちゃったよ、と脳内反省会を繰り広げてしまう辺りに、自分が陰の者である事の事実を突きつけられているようだ。


 その後の自己紹介は突拍子も無い話題が出ることも無く、

 時折、容姿端麗なクラスメイトの時のみ歓声があがるだけで、ただただ作業的に過ぎていくだけだった。

エタらずに帰ってきました!!

次回更新は明日です!

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[一言] お久しぶりです! 更新ありがとうございます!
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