ホットパンツは至高
足の細さは女性受けをすることを知り喜んだが、早とちりだったようだった。
足が細いからと言って、女性の性的な対象にはならないらしい。
上げて落とす、と言う精神ダメージの大きい会話手法で悲しくなってしまった。
「大丈夫だから! お兄ちゃんは私にとっては十分にタイプだから!」
落胆した僕を見かねてか結月がフォローを入れる。
落としてから上げるのも、会話をするテクニックの一つだと聞くが、今はあんまり嬉しくなかった。
でも、結月の気遣いを無碍にするほど、僕のお兄ちゃん力は低くない。
「ありがと。僕には可愛い妹が居たことを忘れてたよ。それに、男に戻れたらなんとかなると思うし」
「その意気だよ、お兄ちゃん!」
意図せずだが、兄妹の仲が深まった気がする。
シスコンの兄とブラコンの妹で調和がとれてるのかもしれない。
「よし! それじゃ気を取り直して服探しだね」
そう言って結月は一足先に服売り場へと向かった。
僕も結月の後に続くことにした。
場所を移ること数秒後。目的地は服売り場に変わる。
下着売り場とは打って変わって、目のやり場に困ることがなくなり、精神衛生上は保たれている気がする。
売られている衣類は男女兼用のものが多く、元男の僕でも抵抗なく着ることができそうだ。
「さて、お兄ちゃん。服を選ぶわけですが」
「ですが?」
テンション高めに結月は会話に洒落込んでくる。
「私が選びます」
断言された。
それはもう、自信満々に。
第三者に服を選んで貰えるので、客観視してコーディネートしてくれるので、僕としては全然ありだ。
だが、それは、最初に服を買うと言っていた理由とは遠ざかるような気がする。
「結月も着れる服を買うんだよね?」
なので、素直に聞いてみることにした。
結月が着れる服=僕が着れる服なのだ。
僕しか着れない服を買ってしまっては元も子もない気がする。
「大丈夫だって。心配無用!」
詳しい理由は教えてくれなかった。
逃げるように結月は、一人で服を探しに行った。
後に続いていっても、続いていかないにしてもよい結果が見えなかったので、潔く、僕も服を見ることにした。
とは言ったものの、僕の見える範囲にはジャージとパーカーしか見えない。
両方、サイズは大きめになるが、家にあるのでこの二つを選ぶのは違う気がする。
そう思って場所をTシャツコーナーへ移る。
Tシャツの種類としてはスポーツメーカーが多い。
無難だが、僕も結月も何着か持っているのでTシャツを選ぶのは結月に任せたい。
少し歩くと、次はおもしろTシャツコーナーが目に留まる。
部屋着として着る分には良いかもしれないな。
「あ、お兄ちゃん居た居た。服持ってきたから着てみてー」
すこぶる楽しそうな顔をしながら、結月は話し掛けてきた。
おもしろTシャツを見ている事に関して追求してこない辺りに、結月の優しさを感じられる。
あまり他人には見られたくないところを見られてしまった、と言う気恥ずかしさから、僕は慌てるように声を出す。
「あ、ありがと。早速、試着してみるよ」
少し裏返った声で僕はそう言う。
結月から服を確認せずに受け取って、逃げ足で試着室へと向かった。
服を買いに行くのも久々なのだから、もちろん試着室に入るのも懐かしく思える。
試着室に入ってから結月が持ってきた服を確認する。
選ばれたのは無地のTシャツとホットパンツだった。
結月が女体化した僕のお尻がエロいと言っていたことを思い出したので、このチョイスにも納得がいく。
ここでスカートを持ってこない辺りに、結月の温情を僅かながらに感じる。
「お兄ちゃん、サイズ合ってるー?」
結月が催促をしてくる。
買うか買わないかは別問題として、折角結月が選んでくれたのだから、感謝の意味も込めて試着してみることにする。
「今から着るよ」
そう返事をして、生まれて初めてホットパンツを履いてみることにする。
着替えた自分を鏡で見て思った第一印象は想像通りで中学生だった。
童顔で低身長、更に貧乳なのでパッと見で小学生に見えるが、無地のシャツのおかげで子供らしさは少しだけ解消された気がする。
自分で一度、客観視した評価を出してから結月に確認をしてもらう。
一気に試着室のカーテンを開く。
目の前に結月が居ることを確認してから、テンプレ的なしゃべり出しをする。
「ど、どうかな?」
そう言うと、結月は僕を頭の先から足の先まで目に焼き付けるように凝視する。
最初は真面目な目付きだったが、段々とスケベな眼になっていく。
下半身――特にお尻と太もも付近を必要以上に見ているような気がする。
考えが纏まったようで結月はサムズアップをしながら口を開く。
「購入だね」
似合っているから購入しよう、と言う圧縮言語なのだろう。単純に言葉が思い浮かばなかったからと言われれば、それもあると思うけれども。
ともかく、結月からの評価は高いことがわかった。
それだけで十分なので、試着している服を脱ぐことにする。
「アレだね、お兄ちゃん」
僕が試着室のカーテンに手をかけるとおもむろにそう呟いた。
何を言うのか気になったので「どうした?」聞いてみる。
「可愛い系の娘もやっぱり良いよね」
恥ずかしそうに結月は頬を少し赤く染めてそう呟いた。
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