パンチラを拝むと罪悪感に蝕まれる
「結月、さっきの写真は何だ?」
「コラージュだよ」
「そう言う意味じゃなくて、なんでコラ画像を作ったかを訊いてるんだ」
「強いて言えば趣味だね。そんなことより、お兄ちゃん。パンツだよパンツ!」
パンツで盛り上がる男子小学生のようなテンションの高さで結月は話を断ち切ってくる。
盛り上がっている所、悪いのだが僕はあまりパンツには興奮しない。
なので軽く流して自分でパンツを見ることにする。
「あぁパンツね。パンツ」
「ブラと比べて、お兄ちゃん反応が薄いね」
「そりゃあ……まぁね」
我ながら思うが歯切れが悪い。
僕がパンツに興味を持たない理由を結月に言って良いものなのかが悩みようだ。
結月は自分の癖に関して勝手に暴露してきているので、ここは暴露してみることにする。
「パンチラは見慣れてるんだよね」
「……え?」
僕のパンチラ発言に結月の動きが止まった。表情も「マジで?」と顔に出てしまっている。
「パンチラってさ。私のパンチラって事だよね?」
不安げに結月が訊いてくる。
必要以上にソワソワとしている感じが女の子らしさを感じさせる。
「家でスカート履かないじゃん。それに、パンツ見えてる時の結月は基本モロパンじゃん」
「うぐぅ。反論できない」
目線を逸らしながら結月はそう呟いた。
いつもの結月ならこれ以上、見えてる地雷を踏みに行かないのだが、今日は珍しくツッコんできた。
「じゃ、じゃあさ。パンチラっていつ見てるの?」
物凄く結月は下手に出ていた。
いつ見たか、と言われても正確に思い出すことはできない。
正直、見たという事実に興奮しただけで、そのラッキースケベに興奮したわけではない。むしろ申し訳ない気持ちになった訳だし。
だが、パンチラを見て悲しくなったのは僕だけかもしれない。
それに結月の気持ちを考えると、負の感情を言うのは間違っている気がする。
結月の言ったことをもう一度考えてみれば、いつ見たかを訊いているわけだ。ならば、その事実だけ答えることにしよう。
「直ぐに思い出した時って言ったら、学校祭とか運動会の準備とかしてるときに見えてるよ」
僕はいつパンチラを見たか、例に出してみる。
結月の反応は、と言うと上の空のようだった。
どうやら、今までの自分の行動を思い返しているようである。
数秒間で結月が思い出したようで口を開く。
「言われてみたら、一回だけ私も学校祭の準備で見たことがあったよ。あんまり嬉しくなかったけどね」
そう言う結月の顔は苦笑いを浮かべていた。
僕たち兄妹はどうやらパンチラにありがたみを感じないらしい。
フォローするように結月が言葉を続けてきた。
「お兄ちゃんがパンチラにありがたみを感じてたら気にしちゃうかもしれないから言っておくけど、私は多分両刀だけど一応、女の子だからね。その子はタイプじゃなかっただけかもしれないからね」
フォローしようとして、衝撃のカミングアウトをされた気がする。
普通、両刀って野球やアニメの主人公くらいのイメージしかないのだが、この場合の両刀は別の意味が違ってくる。
多分と頭に付いているので、聞き逃したふりをして誤解――思い込みを解く。
「安心しろ結月。僕もパンチラはありがたみは感じないから」
「――ほんと?」
「ホントにホント。どっちかって言うと、申し訳ない気持ちになったから」
「何で申し訳ない気持ちになるの?」
そう言われても困る。
思わず口ごもってしまった。
僕が見たパンチラの中で鮮明に覚えているのは二つあえる。
一つはスクールカースト最上位の女子のパンチラ。色は薄いピンクだった気がする。
その子は普通にモテていたので、普通の趣味をしている男子にはありがたいネタとなるのだろう。
だけれども、その子の性格がよろしくなかったので、僕としてはガッカリした記憶があるのでよく覚えている。
もう一つは僕が初めて見たパンチラだ。その子はクラスではあんまり目立たないタイプで女子で、文化部だった記憶がある。文化部と言っても、文化部によってランクわけがされており、最上位が吹奏楽部であることは周知の事実だろう。
その子が文化部の何部だったか、と訊かれると思い出せない。あるときは写真を撮り、またあるときは学校新聞をつくり、またあるときは料理を作っていたりと何部なのかが見当も付かない。
その条件に当てはまるのは、既存の部活動ではボランティア部しか思い浮かばない。
つまりラノベでよく見る、活動内容不明の部活に属しているわけだ。
文化部だからと言う理由だけでその子はモテていなかったが、普通に可愛い。少なくとも、僕のストライクゾーンを攻めている。
肝心のパンチラを見たシチュエーションだが、学校祭の準備中、段ボールを取りに一緒に専用の小屋に行った時の事だ。
その子が高いところにある段ボールを取ろうとして、雑誌を踏み台にしていたのだが、バランスを崩して倒れ込んだ時に見えたのだ。
制服の着崩しをほとんどしていない、規則を守った比較的防御力の高いスカートの中から黒いパンツが見えたので、喜んだ記憶がある。
だがその感情は一瞬で、すぐに不慮の事故でパンツを見てしまったことによる罪悪感が押し寄せてきたのを強く覚えている。
パンチラした事実にその子が気付いていなかっただけに、その念が強くなったと思う。
まぁこれ以上、考えたところで結論は出ないだろう。
僕は物凄く長い間を開けてから一言だけ言った。
「罪悪感だね」
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