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コラ職人の妹

「そう言えば何でキャミソールなの?」


 結月が思い出したかのように話し掛けてくる。

 僕としてはワンピース型の下着をキャミソールと呼ぶのを今知ったので、何と答えようか困る。


「何というかね。女児が着ているイメージがあるからかな?」

「それ理由になってなくない?」


 自分でもわかっていますとも。

 今更だが、スポブラと言っておいた方が良かったかもしれない事を思い出す。


「ってか女児って」


 後れて結月が笑い出す。

 確かに女児はないな。

 女児の下着事情を知っているなんて、まるで僕がロリコンみたいじゃないか。


「まま、キャミソールはファーストブラ的なところがあるからね」


 そう言って結月はキャミソールを物色し出す。

 数秒後。

 結月は選んだキャミソールをいくつか持ってくる。


「それじゃ第一陣!」


 結月は嬉しそうにキャミソールを二着、見せびらかしてくる。

 色は紫と赤色だった。

 ヤクザものやお色気ものの映画でよく見る、セクシー下着から色気を抜いたようなものだった。

 正直、僕の好みではない。

 僕の微妙そうな顔を見てかはわからないが、結月が先に口を開いた。


「これは私的にも、無し寄りの無しなんだよね」

「自分でも無しの服を人に着せようとしないでくれ」

「大人びた下着をきる童顔娘ってのもギャップがあっていいかなーって」

「僕は清楚系が好きです」

「さすがお兄ちゃん。童貞!」

「かけ声みたいに僕をけなさないでくれ」


 僕の反応を喜んでいるようで、結月は第二陣の下着を取り出す。

 第二陣の下着は先ほどと比べると、正統派の清楚系だった。

 白色と水色の二着を僕に見せてくる。

 全然ありだ。

 むしろ普通のブラジャーよりも良いかもしれない。

 勝負下着感がなく、生活感が溢れているからこそ良い。


「おっ! これは好感触だね。やっぱりお兄ちゃんはこういう色合いが好きだって思ってたよー」


 心底、結月は楽しそうだった。

 清楚系が好きという話で、さっき僕のことを童貞と低俗な大学生レベルのけなし方をしてきたため、遠回しで僕のことをディスっているのではないか、と感じる気もしてしまう。


「どっちが良い?」

「白で」

「即答だね」


 上機嫌な様子で、結月は白色のキャミソールを僕に持たせる。


「かご取ってくるの忘れたから取ってくるね」


 そう言って結月は入り口付近まで戻っていった。

 僕がこの下着を着けたらどうなるのか気になっていたので、鏡の前でキャミソールを合わせてみる。


 似合っているのかどうかは、結月に見てもらわないとわからないが、僕としてはありだ。

 目の前にいるのが女体化した僕ではなく、一人の女の子だと見ると、なぜだろう。物凄く嬉しくなってくる。

 元々、僕は美人系よりも可愛い系の女子が好みなのだ。

 今の僕はどちらかと言えば可愛い系なので、十分に僕の守備範囲内だ。


 そんな女の子が僕――精神面が男の前で下着を選んで「似合う?」とやっている訳なのだから、心の中にある男のメタファーが刺激されるのも無理はない。

 きっとこれが自分に見とれていると言う状態なのだろう。


 そう感じた瞬間に、背後から視線を感る。

 恐怖のあまり、全身の毛が逆立つ錯覚を覚える。

 恐る恐る振り返ると、そこには結月がスマホを構えて立っていた。

 滅多に見せないくらいの笑顔のまま「カシャ」と写真を撮り話し掛けてくる。


「ご馳走様です」


 殴りたいくらいに結月は満足げな様子だった。

 現状を把握した途端、物凄く恥ずかしくなってきた。


「今すぐ写真を消せ結月!」

「別にいいじゃん。お兄ちゃんが元に戻ったときに使うかも知れないよ?」

「そう言う話じゃないから! 僕が恥ずかしいから!」

「その顔も頂くよー」


 再び、結月はスマホで写真を撮った。

 絶対に僕の慌てようを楽しんでいる。


「恥ずかしくて顔が赤くなってるのもありだね。ささ、パンツ選ぶよー」


 怒れる僕を無視して結月はパンツ売り場まで、逃げるように足早く移動していった。

 恥ずかしすぎて泣きそうだ。


 肉体は女子でも、精神は男子だからある意味これも女装な訳なのだ。つまり、興味本位での女装を見られた訳なのだから、これは一生の不覚。

 もう、お嫁にいけ――お婿にいけないよ……


 一人で落胆している僕をよそに、スマホから通知音がなる。

 送り主はもちろん結月だった。

 もちろん、とわかってしまう辺りに我ながら友人関係の少なさがうかがえる。

 通知的に画像だったので、きっとさっき撮った僕の写真だろう。

 その程度の考えで僕は送られてきた画像を見た。


「……え?」


 送られてきた画像は先ほど撮られた僕で間違いは無いのだが、この短時間の間に加工されていた。

 加工アプリの効果で全体的に写真は白っぽくなっていた。いわゆる美白なのだろうが、その程度で僕は驚かない。


 いわゆる水玉コラ写真だったのだ。

 着ていることは自分でも十分にわかっている。

 わかってはいても、コラ写真を見た瞬間に僕の動きが一瞬、硬直してしまった。

 素直に結月の加工技術の高さに脱帽する。

 無言で僕は水玉コラ写真を保存して、結月の元へと向かった。

読んでくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] キャミソール女児って、なんか良いよね
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