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見られると困るもの

 食事を食べ終わり、食器も片付けたので僕の部屋へと移動した。

 目線が変わるだけで自分の部屋が違って見える。

 結月はトイレに行っているので、見られて困るモノは今のうちに片付けておこう。

 とは思ったものの、隠さなければならないモノは最初から隠してある。

 強いて上げるとしたら隠れているかどうかの確認くらいだ。


「お兄ちゃん掃除機忘れてるよー」


 そう言ってドアをノックすること無く、結月は僕の部屋に入ってきた。


「だからノックを――」

「私のオモチャ袋は見せたんだし、お兄ちゃんのも見せてよ」


 そう来たか。

 僕自身も好奇心で結月のオモチャ袋を見ようとしていた訳だし、僕が見せないのはフェアでは無いだろう。

 それに、事故とは言え結月のオモチャの一つを見てしまったし。

 だが、僕のオモチャ袋には今は何も入っていない。

 この事実を正直に伝えたところで、結月は信じてくれないだろう。


「この部屋にあるから自分で探したらどうだい?」


 この言い回しが今は一番合っているように感じる。

 結月も納得したようで、僕に掃除機を手渡しながら反応した。


「それもそだね。お宝な訳だし。欲しければくれてやるって感じで」

「探したところで、この世の全てはそんなところに無いぞ結月」


 珍しく、僕が乗ったからか結月は気分良さそうに話を続けてくる。


「お兄ちゃんのエッチなお汁は未来に繋がる元だからね。繋がった――一瞬の快楽の果てにできるのは宝って言われるから宝なんだよ」


「下ネタが過ぎるけど一理ある気がする」


 苦笑いで僕はそう言った。

 むしろこの下ネタを真顔で言い切る結月には才能があると思う。

 なんだよ、エッチなお汁って。

 隠語が過ぎるだろ。

 僕の反応が思いの外、薄かったからか結月が更に言葉をつなげてくる。


「お兄ちゃん、一つ質問なんだけどさ。エッチなお汁って通じてる?」

「心当たる単語はあるけど……それがどうかしたか?」

「どんなときに使う隠語かわかる?」

「官能小説じゃないのか?」


 僕がそう答えると結月の動きが止まった。

 変な間を開けてから結月は口を開く。


「うん、ごめん。私の方が変態だった」


 なぜだか知らないが謝られた。

 真顔なので謝られてと言うよりは引かれていると感じてしまう。

 落胆した様子の結月は特に言葉を発すること無く、本棚の近くまで移動した。


「いきなりどうした?」

「いやー別に」


 結月の反応が薄い。

 僕のオモチャ袋の隠し場所が本棚であることを知っての行動なのか、それとも単純に拗ねているだけなのかがわからない。

 わかることが一つあるとするならば、それは結月が露骨に会話を仕切り直そうとしていることくらいだった。


「お兄ちゃんのオモチャ袋はここにあったよね」


 僕の考えは的中していた。

 そしてどうやら僕のオモチャ袋の在処はバレているらしい。

 結月は一瞬の迷いも無く、僕のオモチャ袋を見つけ出した。


「みぃつけた! 中身見ても良いよね?」

「いいよ」


 僕は二つ返事をする。

 本当に宝を見つけたかのように喜んでいる結月を見ていると、中に何も入っていないとは言いづらい。

 そんな僕の思いはいざ知らず、結月は袋のチャックを開けた。


「……」


 袋の中身を見た結月は無言だった。

 僕は気付いていないふりをして掃除機のコンセントを刺す。


「お兄ちゃん」


 結月は僕の名前を呼びながら詰め寄ってくる。

 今ここで振り返っては結月のペースに持ち込まれそうなのであえて、背を向けながら応える。


「どうした結月?」

「中身がないけどどこに隠したの?」


 結月は回り込んできて僕の前で袋を広げてくる。袋の中にはポケットティッシュしか入っていない。

 結月は僕の目を見て動揺しているかどうかジャッジしてしているようだった。

 僕が口を開くよりも先に結月は言葉を繋げてくる。


「どこに隠したの?」


 そう言いながら結月は僕の顔を見ながら詰め寄ってくる。

 今、目線をずらしてしまうと嘘では無くとも嘘をついていると思われてしまう。だが、顔を合わせられると背けたくなってしまうのが僕のような人間だ。

 できるだけの努力はして事実を告げる。


「アレは使い捨てだから今は無いよ」

「コスパが良くないってのは聞いたことがあるけど、使い回す人もいるらしいんだよ。私が前に見たときも、一回開けたような跡があったから、お兄ちゃんのことだしどこかに隠していると思うんだけど」


 目線をずらしてしまったせいでか結月に信用されていない。

 確かに、使い回していたのは事実だし結月が信用してくれないのも理解できる。

 言葉に困りチラッと結月の反応を見てみると、何かをひらめいたような顔をしていた。口元はにやけているので、良からぬことを考えている事には間違いないだろう。


「無い理由はわかったよ」


 そう言った結月は優しく微笑んでいた。

 僕としては無い理由が思いつかない。

 少なくとも、僕の中で結月が卑猥なことを考えていることが事実であることは容易に想像できることができた。

読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 結月は何を想像したんだろう
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