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呪われた勇者が世界を救うまで  作者: 蓮水もあ
第一章
9/12

冒険者登録と姉を探す少年

 ギルドへと舞い戻ると、早速受付へと並んだ。

 順番はすぐにやってきて、引換券の代わりに真新しいギルドカードが手渡された。


「ギルドカードはランクによって色分けされています。下から黄、緑、青、赤、紫、銅、銀、金、黒でF~A、S、S2、S3ランクにそれぞれ対応しております」


 俺はFランクからのスタートなので、黄色いカードだ。


「次のランクへの昇格は依頼達成時に与えられるポイントが必要数たまれば可能です。左の欄がたまった数値、右の数値は必要なポイントになります」


 カードには【GP  0/300】と書かれている。つまり300ポイントで次のランクに上がれるらしい。


「ポイントがたまりましたらこちらでカードを更新いたします。Dランクから上のランクはポイントに加えて昇格試験として実技があります。Bランク昇格試験からはさらに筆記が追加されます。一般的にFランクは初心者、Eランクは見習い、Dランクは駆け出し、Cランクは一人前と言われています。Bランクになれれば一流です」


 ゲームでは依頼達成のポイントと、昇格試験と称した魔物討伐しかなかった。

 筆記もなかったし、カードがランクごとに色分けがあるのもびっくりした。


 ちなみに、パーティーランクというものもある。

 こっちはソロのランクとは別物で、固定のパーティーを組み依頼を達成することによりパーティーポイント、PPをためてランクを上げていく。

 場合によってはパーティーのみでしか受けられない依頼もあるから、ソロプレイヤーにはあまり優しくなかったけど。


「ここまでで質問はありますか?」

「パーティー登録って、リーダーにする人のカードを一番上にして重ねてお互いの魔力を流せばいいんですよね」

「はい。解除したいときも同じ手順です。抜けたい人のカードにリーダーのカードを載せて抜ける方が魔力を流してください。1人抜けるなら抜ける人とリーダーのカードの2枚、解散なら全員分重ねて魔力を流します。あとはリーダーが死亡した時に自動的にパーティーが解除されます。あとはギルドでの登録解除も可能です」


 いちいちカード重ねないといけない、めんどくさい仕組みらしい。

 しかしメニュー画面にはパーティーの項目があるのだが、これはもしかするとパーティーメンバーも育てられるかもしれない。組んでから検証の必要がありそうだ。


「依頼は自分のランク以下の者しか選べませんが、ランク上の冒険者が同行する場合は1ランク上の依頼まで受けることができますよ」


 この辺もゲームとは違うところだ。


「依頼の受付や報告は奥のカウンターが担当です。依頼達成後は買い取りカウンターで確認した後達成の手続きを取ります。同時に素材、武器、アイテムの鑑定や買い取りもいたします。また相談担当のギルド員が個室で相談を受けていますので、困ったら頼ってくださいね」

「相談担当ですか?」


 これまた初めて聞いたので、思わず聞き返す。


「はい。依頼書と内容が違う、報酬が違う、依頼主との間での揉め事が合った場合や、近隣で凶悪な魔物を発見した場合の報告はそちらでお願いします。自分のレベルに合った依頼を選んでもらうこともできますよ。ご利用の際は受付カウンターで番号札をもらってください。階段脇の個室での相談になります」


 言われるまで気づかなかったが、確かに階段脇に入口があった。知っていることと、現実が違う場合もあるから、はじめてのことはちゃんと話を聞いておかないとだな。


「ギルド会員の特典で、ギルドカードを提示されると2階の食堂での料金が3割引きになります。また冒険者ギルドとの提携宿、提携店で提示しますと割引やサービスが受けられます」

「わかりました」

「それから、ギルド会員は1年以上依頼を受けないと資格失効になるのでご注意ください。そのほかの規約はこちらでご確認をお願いします」


 1枚の紙をもらった。あとでしっかり読み込んでおこう。


「最後にギルドカードの識別登録をしましたら、手続きは完了です。お手元のカードの魔力を流し込んでください」


 魔力を流し込むと言われても異世界人の俺ができるわけもない。というのは杞憂で、自分から流れ出ているらしい魔力で登録できるらしい。つまりカードを触れば勝手に魔力が吸収されるのだ。


「次に、こちらの水晶盤にカードを置いてください」


 指示通りにカードを設置すると、一度だけ淡く光った。


「これで完了になります。最後に、ギルドカードは1人1枚しか作ることができず、紛失すると再発行にはお金と時間が10日かかりますのでご注意ください」

「ありがとうございました」

「はい、頑張ってくださいね!」


 メイアがかわいらしい笑顔で応援する。カードも手に入ったし、依頼でも見るかなとフェルを後ろに連れて掲示板へ向かおうとすると、喚きたてる子供の声が聞こえた。

 声のもとは案外近かった。依頼受付カウンターには10歳にも満たない男の子が1人いた。対する向かいの受付嬢は困った顔をしていた。


「ですから、その依頼はすでに終わっておりまして、その後のことについては私共ギルドの方では関知していないのです」

「本当に本人だったの!?」

「毎日こちらにはたくさんの方が訪れておりますので…しかし達成完了の手続きは依頼を受けた方とそのパーティの方しかできません。記録によりますと、アネット様は1人で依頼を受注し、その日の夕方には完了の手続きをされています」


 漏れ聞こえてきた少年と受付嬢の会話を聞いて、ゲームの中で似たようなクエストがあったのを思い出した俺は、掲示板に向かう足をカウンターへと向けた。


「チヒロ?」


 フェルの問いかけをスルーして、受付へと進むと、受付嬢がこちらに気づく。


「申し訳ございません、少しお待ちいただけますか?」

「いや、用はないんだけど、何かあったのかな?」

「ええと、」


 俺の質問にさらに困った顔をすると少年を見た。

 少年は何を思ったか、見ず知らずの俺に事情を話すことにしたようだ。


「ねーちゃんが帰ってこないんだよ!」

「君のお姉さんがいなくなったのはいつかな?」

「昨日の朝ギルドに依頼を受けに行くって言ってそのまま帰ってこないんだ」

「その依頼の内容は?」


 受付嬢に尋ねると手元の水晶盤を見ながら詳細を教えてくれた。

 少年のお姉さんの名前はアネット。11歳になったばかりだそうだ。

 彼女の受けた依頼は受付前に貼ってある繰り返し募集されている中の3つ。薬草・毒消し草・忘却茸の採取で、夕方には完了の手続きが完了していると記録にはあるらしい。

 受付嬢は昨日も出勤しており、おそらくそうであろう赤毛の少女が手続きしたのも覚えているそうだ。


「それなら、お姉さんがいなくなったのは夕方以降だろうね」


 受付嬢はほっとした様子で頷いた。

 反対に少年の表情は暗く沈んだままだったが。


「君、名前は?」

「アドニス…」

「アドニス、お姉さんを探すのためにいくつか質問があるんだけど、ここにいると他の冒険者の邪魔になるから移動するよ」


 そう声を掛けると少年はバッとこちらを向き、信じられないという顔をした。

 そして震える声で尋ねる。


「探してくれるのか…?」


 俺は安心させるように、笑顔で返した。


「もちろん」


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