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呪われた勇者が世界を救うまで  作者: 蓮水もあ
第一章
5/12

闇落ち

一晩開けて、皆で遅めの朝食を取ると、城の一室に案内された。

ステータスカードを作り、適性を見るためである。

一度カード化するとそれは自動的に更新される仕組みで重宝されているが、俺達にとっては自分のメニューからステータスの数値が見れるようになるので、今後カードを使う機会はほとんどない。

ただ、現実らしいこの世界では俺達にも一応カードが配られるようだ。パーティーを組むときなどに提示するためには確かに必要だよね。


ここの住人は俺たちと違ってメニュー画面が見れない。成長の確認はステータスカードになる。どうやって数値化しているのかは分からないが便利なものだ。

専用の水晶盤に手を翳すと僅かに魔力を吸い取られ、カードに文字が刻まれる。

水晶盤はギルドや教会などに置いてあり、誰でも利用可能である。


ここにはアーノルド王、エドウィン王子、魔術師長代理、王の側近、大臣、それから王と王子付きの護衛騎士に加え、俺たち勇者個々に指導役として遣わされる予定の近衛騎士が6名いた。

勇者召喚については各国ともに上部の者しか知らされていないのだから当然か。


「では、勇者様方、順番にこちらへお願いいたします。まずはユーリ様」

「おう!」


魔術師長代理の言葉に大喜びで水晶盤に近づく。

そんなに急がなくても水晶盤は逃げないよ。

坂下が水晶盤に触れると光があふれだす。赤、そして、黄色。2色を示して消えた。同時に水晶盤からカードが浮かび上がる。どうやら火属性と雷属性に適性があるらしいとゲームの知識から判断してみる。

最近始めたばかりならこのシーンも珍しいものでもないはずなのだが、坂下ははしゃいでいた。画面の前で見てるのと体験するのは違うのでわからなくもないが。


「では見せていただけますか?」


魔術師長代理に上機嫌でカードを差し出している。


「おお、これは!魔力が高いですね。魔術師タイプですよ。火属性と雷属性と相性がよく、攻撃魔法を鍛えるといいですね。腕力もありますので武器は杖よりメイスがいいでしょう」

「魔法使いもかっこいいからいいよな!」


かっこよさ重視なのね。

火力がありそうな反面、紙装甲くさい。調子に乗って死ななければいいが。


「それではホノカ様」


一宮は頷くと水晶盤に手を乗せた。

青、緑と輝いた後に光は収束した。萌花はちらりとカードを見ると、言われる前に差し出した。


「ホノカ様も魔術師タイプですね。水と風との相性が抜群です。回復魔法の適性があり、おそらく将来は高度な回復魔法に光属性の浄化魔法も使えるようになるかと。武器は魔力を高める杖をお勧めいたします」


その後も鳳凰寺、柚木、篠原と続いた。

鳳凰寺は剣士タイプで、武器は剣。属性は火と水らしい。火と水って相性悪そうだけど、どうなんだろうか。

柚木は戦士タイプで、槍がメイン。盾も相性がいいらしい。雷・土との相性がいいので、攻守どちらも向いている。これはゲーム通り騎士の道まっしぐらじゃないの?

篠原は後衛の補助タイプ。武器は弓などの長距離のもの、属性は風・土。補助魔法に適性がありそう。ここまで前衛2、後衛3と来ている。


俺は近距離から遠距離まで対応できそうなタイプがいいな。なんて考えながら水晶盤に手を翳して衝撃を受けた。水晶盤が光り始めたかと思ったら禍々しい黒に染まったからだ。

嫌な予感しかしない。

手元に現れたカードを見て、これはまずい、と頭のどこかで警鐘が鳴り響く。


「黒、とは…」


ぽつりと呟いた王の声が響いた。

俺はβ時代からやり込んでいるプレイヤーだ。だからこそ今いる勇者の中で俺だけが知っている情報もそれなりにある。


一般の冒険者ならともかく、「勇者」で「黒」は、まずい。それはβ版で得た情報からよく理解している。しかし出てしまった以上、逃げる選択肢はない。この後の発言と行動次第では、さっそく死ぬ羽目になるのだから。

一度目を閉じて深呼吸すると、魔術師長代理にカードを差し出した。


「……闇落ち…」


魔術師長代理がぽつりと呟いた。

深刻な響きを持ったそれを拾い、それまで沈黙を保っていた騎士たちが騒ぎ出す。


「闇落ちだと?」

「災いが…」

「勇者が闇落ちとは不吉な!」

「処刑した方がいいのでは…」


中には青ざめている者までいるのだから、俺はますます嫌な予感に確信を得た。勇者がどうの以前に、生存できるかすら怪しい。冗談ではなく。

やっぱり俺、異分子だったんじゃないのかな。


「お、おい、どうしたんだよ!?災いってなんだ?」


不穏な空気を感じて坂下が我慢できずに問いかける。

そうだろう、勇者として華々しくスタートを切ろうとした矢先、災いだの処刑だの不穏な単語が聞こえてくれば尋ねたくもなる。


「皆の者、静かに!魔術師長代理、説明を」


国王が騒ぐ者たちを沈めた。


「勇者様方、これを見てください」


差し出された俺のステータスカードに他の勇者の視線が集まる。

カードの一番上にはフルネーム。適性属性がその横にマークされる。

それから年齢、血液型、能力値など見慣れたステータスが並ぶ。


「ステータスカードを見る限り特別変わったことはないと思いますが?」


代表して柚木が尋ねると、魔術師長代理は首をそっと横に振った。


「問題はステータスではありません。適性属性です。名前の横をご覧ください」

「6つとも黒ですね」

「こちらは本来、適性属性の部分だけ適応した色が付きます。基本属性の4つと光と闇で合わせて6つの欄があり、無属性は魔力があれば誰でも使えるのでカードには表記されません。相性が良くなればよくなるほど色も濃くなり、はじめは色がない属性も、鍛錬し適性が認められれば色がつくようになっています」


4属性に光と闇を加えた6色の欄がある。4属性はそれに対応した色。光はゴールド、闇は黒ではなくシルバーになる。と説明が続く。


「この現象はごくごく稀に起こるのですが“闇落ち”と呼ばれております」

「呪いみたいなものでしょうか?」

「なんとも言えません。ただ闇落ちは災いをもたらすという伝承があるのです。それ故この国…いえ、どの国でも迫害されております」

「……」


柚木が難しい顔をして黙った。自分の知っていると思っていた世界で知らない情報があること、そして勇者なのに1人だけ迫害される立場にあるという事実が、様々な推測を浮かび上がらせたことだろう。


現実でもステータスカードがあったらなぁ…


まだ投稿を始めたばかりにも関わらず、

読んでくださった方、評価くださった方、ありがとうございます!

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