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呪われた勇者が世界を救うまで  作者: 蓮水もあ
第一章
3/12

情報交換会

 ここはエストカイン王国という。別名水の国とも呼ばれ、自然豊かな国。


 位置的に他の種族からの侵略はあまりなく、また世界で一番大きな魔術学園があることから今回の勇者の召喚と育成の地に選ばれたそうだ。

 エストカイン王家はアーノルド国王とリリア王妃、それから現在はエドウィン第一王子、ルージュ第一王女、アンドリュー第二王子、レオナード第三王子、ベアトリス第二王女、アリスティア第三王女、デューイ第四王子と7人の子供がいるらしい。側室の子供も含めて7人である。


 俺たちと近しい歳の子供は他国にある魔術学園にいるので、城にはエドウィン第一王子、ルージュ第一王女、アンドリュー第二王子、デューイ第四王子の4人が住んでいるとのことだ。

 王族も普通に学校行くと聞いて正直驚いた。家庭教師じゃないのか。



 国王と王子にこの国のことを簡単に説明してもらい、夕食後は黒髪の男の提案で、勇者だけでの情報交換のために集まった。今回みたいに複数の勇者がいるパターンでは勇者同士の仲たがいなどが原因で起こる問題も多いので、お互いの情報共有は必須らしく、国王からの許可も得られている。

 召喚された勇者たちとは夕食の席で名前と年齢くらいは話していたけれど、改めて自己紹介をした。


 ずっと煩かった金髪の少年は坂下侑李(さかしたゆうり)という。俺より少し背が低めで16歳。まさかの同い年だ。高校生にしては外見も中身も幼い感じがする。とにかく煩い。

 転校したばかりで、放課後に学校内を案内してもらっている最中に意識がとんだらしい。


 黒い髪の男は鳳凰寺御門(ほうおうじみかど)、16歳。なんかめちゃくちゃ威圧感あるから年上かと思った。大物感がすごい。実際大物で鳳凰寺財閥の三男だとか。俺でも知ってる有名な家で、ホテル経営からはじまり、今はIT企業でも成功を収めている。飛ばされたときは生徒会室で一人、黙々と仕事をしていたそうだ。ぼっち乙。


 茶髪さらさらヘアーの優しそうなイケメンは柚木慧(ゆのきけい)、18歳。超有名進学校に通っていて、委員会の仕事として校内の見回りをしている最中にここへ飛ばされたようだ。鳳凰寺と同じくらい背が高い。身長も180近いんじゃなかろうか。剣道を嗜んでいたらしい。唯一の高校3年生、年長さんである。


 アッシュ系の色に染めたふんわりヘアーのチャラい男は篠原明人(しのはらあきと)だ。17歳。身につけたアクセサリーや髪色のせいで第一印象は軽そうな感じだが、なんかゆるいしゃべり方で和む。彼は教室で居眠りしてたらここへ飛んでいたらしい。周りを見渡した時に彼だけ尻餅をついていたのはそのせいだったようだ。


 そして唯一の女性、一宮萌花(いちみやほのか)、17歳。女性としては高めの身長でスタイル抜群の美少女である。綺麗に巻いた黒髪がばっちり似合っている。気が強いお嬢様系だ。彼女はモデルもしており、仕事へ向かう最中で飛ばされたそうだ。


 最期に俺、倉本智広(くらもとちひろ)、16歳。170cmという普通の身長、普通の学力、普通の運動能力を持つ一般家庭で育ったただの高校生だ。ついでに言うなら容姿も普通。どこにでもいるような黒髪の平凡顔である。他の勇者が美形なため、浮いている気がしないでもない。俺はなんでここにいるんだろうね。


「皆バラバラで共通点がないねぇ」


 チャラ男篠原が溜息交じりに漏らした。

 知り合いだとかそういったものは何一つなかった。しいて言うならみんな関東の高校生だという位か。といっても、着ている制服も違うし学校も違うだろう。

 俺以外みんな有名な金持ち学校だけどね!


「倉本くんは召喚されたとき何をしていたんですか?」


 それを聞いてしまうのか、柚木くんや。年上だし先輩の方がいいかな?


「階段から落ちそうになってました」

「「えっ!」」


 みんな目を丸くしている。うん、気持ちはわかるよ。

 俺もなんでそうなったのかよく分かってないままこっちに飛ばされたのですよ。


「落ちかけた瞬間に光に包まれたんですけど」


 これ、帰れた場合はどうなるんですかね?こっちにとんだ瞬間から再スタート!とか言われたら、帰った直後に転げ落ちて死ぬかもしれない。自慢じゃないが運動神経も普通なので上手に着地するとか、うまく転がるとかそんな芸当はできない。

 それに、階段から落ちたのって単に踏み外したんじゃないのだ。誰かがどんっとぶつかってきたのははっきりしている。


「階段から落ちるなんて智広はどんくさいんだな!」

「まぁ、怪我がなくて何よりだ」


 失礼な坂下の言葉に鳳凰寺が何とも言えない顔でフォローした。勝手に名前で呼ばれているのが気になるところだがスルー。

 帰ったら怪我する可能性大なのが怖い。


「なぁなぁそれよりさ!オレ、この城知ってるぞ!」


 坂下の言葉を皮切りに皆が口々に自分も…と申告を始める。

 俺も知ってるのでそれに倣った。


「ゲームの中に来たんだ俺たち!!」


 相変わらず坂下がうるさいが、他のみんなは慣れたのか聞き流している。適応早すぎる。

 しかし、どうやら一応共通点はあったらしい。


「MyStoryOnlineで間違いないわよね?」

「ああ、冒険者の刻印もあるし、メニューを開いたが同じだな」

「どうやって開きました?」

「念じれば出てきたぞ」


 MyStoryOnline、俺たちの元の世界で流行っているオンラインゲームである。

 マイスト、MSOと略されるこのゲームは、俺たちの年代であれば3人に1人はプレイしているんじゃなかろうか。

 冒険者の刻印とは他の世界から来たものに浮き上がる、異世界の住民の証。刻印を持つ者だけがメニュー画面を開ける。そして外から来た冒険者たちの初期スタート位置の一つがエストカイン王国である。

 といっても、城に召喚されるなんてことはなく、城下町の門の入口に突っ立っていたはず。城へはチュートリアルや騎士団からの依頼を受けると中に入れるから、見覚えがあるということは…口にするまでもないな。それを知っている俺たちは全員プレイヤーだったということだ。


 今回は冒険者としてではなく勇者として召喚されたのだから城でもおかしくはない。

 冒険者の刻印が使えると聞いて俺も早速試してみる。

 刻印は必ず利き腕の手の甲に浮かび上がる。刻印は統一で、課金すると自由にクリエイトできるようになっていた。あとは特殊イベントなどをクリアすると進化することもある。

 しかし俺たちの手の甲に刻まれているのは統一されたものではない。勇者の役職が関係しているのかもしれないが、現段階では分からないな。


3話目にしてようやく名前が明らかになりました。

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