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呪われた勇者が世界を救うまで  作者: 蓮水もあ
第一章
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はじまり




―――異世界に召喚されてしまった―――




それは小説ではよくある設定だった。



唐突に日常が終わり、異世界へと召喚される。


気づけば見知らぬ場所で見知らぬ同年代の男女、そしておそらく少年達がここにいる原因を知っているであろう、煌びやかな服を着た偉そうな人たち。


一人の少年が説明をせがむと、中でも一番偉い国王様が教えてくれました。



なんと少年達は国の危機に呼び出された勇者だったのです!

 






 というあらすじは現在進行形で現実に起こっていることである。

 怪しい儀式の間と思われる場所。床に赤く描かれている魔方陣の上に俺は立っていた。正確には俺を含めて6人で、内1人はなぜか尻餅をついていたが。


「俺たち勇者なのか!?」


 真っ先に食いついたのは金髪の美少年、いや美少女にも見えなくもない。どっちでもいいが、やたら小綺麗な顔の奴だった。瞳はきらきらと輝き、喜んでいるのがよくわかる。

 まさか他の奴らも喜んでるんじゃないよね?さりげなく全員の表情を探る。

 うん、喜んでるのは金髪1人のようだ。


 最初は壮大なドッキリなのではと考えたけれど、城の外の景色はとてもセットとは思えないし、何より今も空飛ぶ巨大な鷲のような鳥が飛んでいる。

 魔法も見せてもらったし、信じざるを得ない状況な訳だ。でも現状を理解したからといって、俺が勇者?わーい!とはならないだろう。普通なら。


「急にそんなことを言われても困ります」


 茶髪の優しげな男の声が続き、他の3人も声を上げる。


「戦ったこともないしねぇ」

「…そうだな。経験のない俺たちが戦争の役に立つとは思えない」

「そんなことをしている時間はないので、返してください」


 チャラそうな男、黒髪のやけに威圧感のある男、唯一の紅一点である巻髪の女。俺以外やけに美形なんですが、勇者はイケメンであれ!みたいな条件でもあるのかな。

 俺?モブAってところですかね。


「そこをなんとか…我々に力を貸していただけないだろうか?」


 立派な髭を蓄えたおじさん基、国王様は苦悩に満ちた声で問いかけてくる。

 話を聞いたところ、人間とそれ以外の種族の国との小競り合いが続き、国力が削られているらしい。加えて人間の国同士での水面下の争いも活発化してきて、このままの状態が続くと大規模な戦争が起こると予想されている。

 さらにさらに、悪魔や魔人の手引きで魔物が活発化し、辺境の方ではすでに被害が出ているとか。そして近年魔王復活の神託が降りたらしい。

 戦争や災害が予見されている場合、人族は速やかに勇者を召喚し、時に備えて育成するのが習わしらしい。

 地道に自国の兵士育てろと言いたい。


「おことわr」

「わかった!」


 お断りします。という言葉は最後まで言わせてもらえなかった。金髪の少年によって。


「「は?」」


 勝手に快諾したことに他の少年たちが眉を上げた。

 なんでこの世界の都合に合わせないといけないの?強制的に召喚しといて命懸けろって何なの?馬鹿にしてんの?喧嘩売ってんの?

 勇者とか言われて1人浮足立ってるお前は脳みそどこへ置いてきちゃったの?

 誰も口にしないだけで、気持ちは同じだろう。勇者一同の視線が鋭い。


「悪い奴らを倒して平和を取り戻せばいいんだろ?それぐらい簡単だ!」


 軽口にもほどがある。まさか見た目に似合わずとんでもなく強いとか?いやいや、ないよ。半袖から見える腕なんか、めっちゃ細いから。


「君はなんて無責任なことを言ってるんですか!」

「おい、やりたいならお前だけでやれ」

「うーん、俺は遠慮したいな~」

「私も嫌よ!早く帰らないといけないんだから!」


 集中砲火である。


「何言ってるんだよ!こいつら困ってるんだから助けてやらないと!俺たちは勇者なんだからな!」


 しかし、当の本人はまった気にしていないらしい。

 それどころか勇者という言葉に舞い上がって楽しそうだ。ゲームのつもりかもしれないが、ここの人たちは真面目に困ってるんだぞ。不謹慎だろうが。と思いつつも口は挟まない。

 すでに他の皆が口々に文句を言っているのだから俺が口を挟むまでもない。というかマジで口を挟む隙がない。


「できることとできないことがあるでしょう!」

「知らない国のために命を懸けるつもりは毛頭ない」


 ほんとそれ。


「お前ら勇者のくせに見捨てるなんてサイテーだな!!」

「なんだと!」


 口論が激化していくのをぼんやりと眺める。なんとなくこの世界の住民を見れば、どう収拾をつければいいのかとおろおろしていた。

 うん、陰謀説はなさそう。

 国王様、もしくは取り巻く人たちが勇者たちを利用して云々、なんてのも正直ちょっと可能性あるなと考えていた。でもよからぬ計画を立てるような頭があればこのような事態は想定済みだろうし。

 じっと観察していると、国王様と目が合った。うわ、嫌な予感する!


「もう1人の勇者殿はどう考えておるのだ?」


 この空気を何とかしてくれって期待がひしひし伝わってくるが、そんなもの自分たちでどうにかしてほしい。困ったら異世界人に手伝ってもらおうという時点で他力本願なのだから期待はできないけども。


「えっと、速やかに元の世界に返していただきたいです」


 俺は精一杯申し訳なさそうに見えるように呟いた。


よろしくお願いします!

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