天使だ…天使がいるぞ…
先輩の名前、狙い過ぎてる気がする…
まあ小説の世界だしいいよね!
今回は紛らわしかったので、ルビを振りましたが、次回からは今回ほどは紛らわしくはならないと思うので、ルビは振らないと思います(振らないとは言っていない)
放課後、俺は図書室に向かっている。
今日は火曜なので、荒川を送って行かなければならない。そのため、荒川の部活が終わるまで、図書室で時間を潰そうというわけだ。
図書室を選んだのに、決して深い理由は無い。たまたま、偶然、本を読みたくなっただけだ。決してやましい思いがあるわけじゃないぞ。
図書室に着きドアを開ける。受付には、いつも通り本を読みながら座る彼女がいた。彼女は此方に気が付くと、やはり微笑みながら会釈をする。当然俺も会釈を返す。なにこれ、既に超幸せ。
俺は昨日と同じ場所に座る。すると、彼女は此方に向かって歩いて来た。え、ちょっと待って?何で?ちょ、何で!?
「最近良く来ますよね。本、好きなんですか?」
彼女は俺に向かって、笑顔で優しく話しかけて来る。
「は、はい、たまに良く読みます」
緊張し過ぎて変な日本語になってしまった。なんだよ、たまによくって。池沼じゃん。
しかし、彼女は笑顔で
「そうなんですか。本好きの仲間ができたみたいで嬉しいです」
と、言う。なにこれ超天使。
「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。私は二年C組の天使 桜です。よろしくお願いします」
笑顔で自己紹介をする天使。つーか名前も天使ってマジ天使(語彙力)
天使さんが自己紹介したのだから此方もしないわけにはいかない。
「俺は一年B組白峰 晃って言います。よろしくお願いします」
「白峰 晃くん。いいお名前ですね」
名前を褒められたのは初めてだ。というか天使に褒められた!昇天しそう…
まあこんなところで今生におさらばする訳にはいかないので、何とか正気を保つ。
「天使さんは、良くここに来るんですか?」
俺は会話のきっかけを作るために、質問する。
「はい。図書委員ですので、毎日来てます」
マジかよ、ここに来れば毎日会えるってことじゃん。
「最近図書室に来る方が少なくて…」
「そう、なんですか…」
確かに、図書室に天使さん以外いるところを見たことがない。
「それで、寂しくて…皆さん、本を読まなくなってしまったのでしょうか…」
確かに、最近はスマホ一つあれば何でも調べられる時代だ。それに、ゲームも音楽も動画もある。昔に比べて、本を読む機会がずっと少なくなったのは間違いないだろう。それに文字を読むことを嫌う若者たちも出て来ている。本離れが進むのは必然だろう。つーか俺どっから目線だよ。
「それで、白峰くんが来てくれて、とても嬉しかったんです」
「え?俺が?」
「はい。私と同じように、本が好きな方がいるかもって。それで、今日は来てくれるかなって、いつも気になってたんです」
そうやって変に期待されると、少し恥ずかしいな。
「たまたま、時間潰しで立ち寄ってるだけですよ」
「それでも、本に関心を持ってもらえるのはとても嬉しいです。それに、白峰くんはまた来ますと言ってくれました。それも、すっごく嬉しかったです」
そう真っ直ぐ言われると凄く恥ずかしい。
「これからも、時々、気が向いたらでいいので、図書室に来て下さいね」
天使さんは笑顔で言う。もちろん俺の回答は決まっている。
「はい!また、絶対来ます!」
「はい。待ってます」
その今までで一番の満面の笑みに、俺はやはり見惚れてしまった。
それからしばらく、天使さんと過ごし、下校時刻。俺は校門前にいる。荒川を待つためだ。
一年生は俺の姿を見るなり多くが、俺から距離を置く。嫌われてんなぁ…
そんな中、俺に近づく影が二つ。
「あれ?晃?何でこんな遅くまでいるの?」
「誰か人を待ってるのか?」
「もう、晃ってば。一緒に帰りたいなら言ってくれればいいのに」
話しかけて来たのは仁美と勝樹だ。
「人は待ってはいるがお前らじゃねーよ。二人は部活帰りか?」
「うん、そだよ。最近は良く一緒に帰ってるんだよ」
「へー、そうなんか」
俺が見てない所でも意外と進展してんだなこの二人。
「で、お前は誰待ちなんだ?まさか女か?」
「ん、まあそうだな。荒川を待ってんだ」
「あら…かわ…」
「ん?誰だそれ」
勝樹はクラスが違うから分からないか。
「同じクラスの女子だ」
「マジかよお前が!?まさか付き合ってるとか!?」
なぜか仁美が付き合ってるというワードにビクッと反応する。
「ねーよ、ちょっと事情があって家まで送ることになっただけだ」
「そ、そうだよね!晃が誰かと付き合うなんてあり得ないよね!天地がひっくり返っても無いよね!」
「お前、相当失礼な事を言ってるって分かってるか?」
名誉毀損どころの話じゃない。つーか俺はそんな風に思われてるのか…泣きそう…
「まあ晃の邪魔しちゃいけないし、俺たちは立ち去るとしますかね。行こうぜ、仁美」
「う、うん!そうだね、勝樹!」
二人はいつの間にか名前で呼び合う仲になったみたいだ。二人の成長が見れて、お兄さん嬉しいよ…
「じゃあな晃!変なことして捕まるなよ!」
「じゃあね!くれぐれも、変なことしないでよ!」
「わーってるよ!じゃあな!」
俺はどれだけの性欲モンスターと思われているのだろうか。鈴井に言われたのも不思議じゃないかもしれん。
しばらくボーっと待っていると、一人の女子が俺に近づいて来た。
「ごめん、白峰くん!片付けに手間取っちゃって!」
「別にいいよ。人も大分少なくなってきたし、むしろ都合いいんじゃないか?」
「えー、せっかく私と白峰くんのラブラブっぷりを皆に見せたかったのに」
「それは俺じゃなくて、健に言った方が面白いと思うぞ」
「そうかな〜。ま、いいや!行こ!」
荒川が先導するように歩き出す。俺もそれについて行く。
ふと、荒川が口を開く。
「朝、めぐになんか言われた?」
「めぐ…成瀬のことか?」
「そうそう。昨日めぐだけには話してね。それで、今日なんか言われてないかな〜って」
「別に、ただお礼を言われただけだ」
成瀬に聞かれた事については言う必要は無いだろう。
「ほんとに〜?他にも何か聞かれたんじゃないの〜?」
女はたまに鋭い。
「いやなんも無いって。大体、成瀬は俺の事嫌ってるだろ」
すると荒川は一瞬呆けた顔をして、途端に笑い出した。
「あははは!白峰くんってほんと、女の子の事分かってないね〜!」
いや言動からして嫌われてるようにしか思えないのだが。
「まあいいや、そこも白峰くんの面白い所だし」
「別に俺は芸人目指してる訳じゃないんだがな」
俺が面白い人とは、誠に遺憾である。
「ほんと勿体無いよ。白峰くん面白いんだから、それが皆に伝われば人気者になれるよ」
「人気者になりたくはないんだよな…」
「それに白峰くんは時々凄くカッコいい。だからもし皆かそれに気づいたら、間違って好きになっちゃう子もいるかもね」
「間違わなきゃいないって言われてるみたいで、なんか腹立つな」
普通にいるだろ。いるよな?いると信じてる。
「も…私……違っ………どね…」
「ん?なんか言ったか?」
もっとはっきり喋らんかい!最近はその喋り方流行ってんのか?
「ううん!何でもない!早く行こ!」
そう言ってなぜか歩くペースを上げる荒川。
それから先、荒川はさっきの事には触れず、俺たちは当たり障りのない事を話した。
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