見慣れた人と見慣れない人
別に毎日投稿を目指している訳ではないのですが、毎日投稿してますねw
最近は東方永夜抄を作業用BGMにしてます。
ピンポーン
翌朝、俺が着替えをしていると、なぜかチャイムが鳴った。
まだ六時過ぎだぞ、誰だよ…
急いで着替えを終わらせ、玄関に向かう。ドアを開けるとそこには
「おっはよっ!晃!」
ポニーテールが特徴の活発そうな美女がいた。…といっても仁美だが。
「なんだよ朝っぱらから。お前もっと行くの遅いだろ」
仁美は朝練がある日でも、最近の俺よりは遅い時間に行くはずだ。
「えへへー、たまには晃と一緒に学校に行こうと思ってね!」
別に俺に気は使わなくてもいいんだが…まあ厚意はありがたく受け取っておこう。
「まあ、たまにはいいか」
「うん!そうだよ!早く学校行こ!」
そう言って、俺の服の袖を引っ張る仁美。いくらも時間が経っていないはずなのに、それがひどく懐かしい気がした。
「じゃあ私、朝練行ってくるから!じゃね!」
「ああ、じゃあな」
そう言って、仁美は体育館に向かって行った。健とは違って、鞄は持って行くのか。
仁美を見送ったあと、俺は教室へ向かう。教室の扉を開けると、そこには見慣れた女子と、あまり見慣れない女子がいた。
「おはよう、鈴井」
俺は見慣れた女子に挨拶する。
「おはよう、白峰くん。昨日あれだけ恥ずかしい思いをしたのに来るなんて、あなたドMなの?」
「俺はどっちかって言ったらサディストだ。それに昨日色々あったんで、お前との事なんて忘れちまったんだよ」
「サイコパスの間違いでしょう。それと色々という言葉に焼き土下座しなさい」
「なぜ俺に色々あってはいけないんだ…しかも謝罪のレベル上がってるし…」
焼き土下座とか事実上の死刑である。
「しかしマズイわね。私との事を忘れるなんて…あの程度では足りないと言うの?」
「十分すぎるくらい痛めつけられたんだが…」
「次はあなたの心の奥底に、一生消えない様に刻みつけるしかないのかしら」
「勘弁して下さい…」
あれ以上のダメージを受けたら、もう死ぬしかないと思う。
でも今日は比較的当たりが優しかったな。存在すら否定されることもざらにあるのに。
俺は席に座りラノベを鞄から取り出す。今日は集中して読めそ
「ねぇ、なんであたしには一言もないわけ」
見慣れない人が話しかけてきた。流石にいないものには出来なかったか…
「だから俺はお前の姉ちゃんじゃねーって。…昨日の件、まだ怒ってんじゃねーかと思ってな…」
「別に、特にそこまで気にしてないし。それに、あんたごときがあたしを無視する事の方がムカつく」
意外だ。末代まで恨まれると思ってた。
「おはよう、成瀬。この時間にいるなんて珍しいな」
「おはよう。別に、ただの気まぐれだし」
気まぐれでこの時間に来るやつは相当な変人だと思う。
「ねぇ、あんたに話があるんだけど」
「話?お前が俺に?」
「何?なんか文句ある?」
「ないです…」
めちゃくちゃ睨まれた。超怖い…
「まあいいや、ちょっと来て」
成瀬はそう言って立ち上がり、教室の外へ行こうとする。他人にはあまり聞かれたくない話なのか?
成瀬は誰もいない空き教室に入った。俺もそれに続く。
俺に話ってなんだ?ま、まさか!誰にも見られないところで完全犯罪を犯すため!?こ、殺される…
成瀬は開けっ放しのドアを閉める。くそっ…退路は絶たれた…
そして成瀬は俺の正面に来る。ならば俺が取る方法は一つしかない。
俺は素早く膝を折り、手と頭を床に擦り付ける。
「申し訳ありませんでした!何でもしますから、どうか命だけは!」
そう、土下座である。プライドは捨て、相手に媚びるように懇願する。成瀬も鬼じゃないはずだ。命くらいは許してくれると信じてる。
「ねぇ、何勘違いしてんの?」
「へ?勘違い?」
俺は上半身を上げ、正座状態になる。
「さっきも言ったけど、あたしは別に怒ってる訳じゃないの。普通に話があるってだけ」
「なんだ、てっきり完全犯罪を犯すために人気のないとこに連れて来られたかと思った」
「あんたの中であたしはどうなってるの…」
めっちゃ怖い人かなぁ。
「まあいいや。今日あんたを呼んだのは、ほのの事とあんたの事について聞きたかったから」
「ん?何だそりゃ」
俺は立ち上がり応える。
なんかこいつにしたっけ?
「あんた達のおかげでほのが無事で済んだ。ほのの友達としてお礼を言わせて。ほんとにありがとう」
ああ、昨日のあれね。その礼を言うためにわざわざ早く来たのか。律儀な奴だ。
「友達のために嫌いな奴に礼を言うなんて、やっぱりお前優しいな」
「…別……いじゃ…い……」
全然聞こえん。もっとはっきりいわんかい!
「で、俺の事ってのは?」
「…あんたって、何で他人のためにそこまで出来るの?」
「どういうことだ?」
「黒井くんと仁美の事、そして今回のほのの事、普通なら見て見ぬ振りするんじゃないの?」
ああ、そういう事か。なら簡単な問いだ。
「逆に、助けないって選択肢はあるのか?」
「…え?」
「俺だって極力面倒な事には首を突っ込みたくない。でも、本人にはどうしようもなくても、俺なら何とか解決出来るかもしれない。なら、助けるのが普通だろ。俺にとっちゃ今回の事も、当たり前の事なんだよ」
すると、成瀬はとても驚いたような顔をした。
「…馬鹿みたい。そんな理由で…」
「馬鹿で結構」
俺が言うと、成瀬は笑った。
「あっはっはっはっ!なに悩んでたんだろあたし。そうだよね、誰かを助けるなんて当たり前だよね。」
吹っ切れたように笑う成瀬。
「あたし、あんたについて、分からなかった。見返りが無いのに助けるなんて。でも納得したよ。あんたは馬鹿なだけなんだって」
なんかめっちゃ失礼な事を言われてる気がする。
「あーあ、すっきりした。それと、ありがと。あんたのおかげで二つの事に気付けたから」
「二つの事?なんだそれ」
「内緒」
そう言って笑う成瀬の顔は、今までで一番魅力的だった。
ブクマ数200ありがとうございます。
初投稿の小説が、まさかここまで色々な人に読んでいただけるなんて、感激で興奮が収まりません。最近は夜興奮し過ぎて寝付けず、寝不足ですw
また、感想をくださった方々、本当にありがとうございます。これを糧に、これからも面白い物が書けるよう精進して参ります。