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ラーメン、それは日本のソウルフード

こんなに長くなるとは思ってなかった鈴井とのデート。長くなり過ぎてすまねぇ…

多くの人から写真を撮られる事数時間。時刻は五時を回った。


「はぁ…。流石に疲れたな…」


軽く百人には撮られたな。鈴井は多分その十倍以上は撮られていたが。


「そ、そうね…。ちょっと…休みたいわ…」


相当お疲れのご様子だ。ずっと立ちっぱなしだったもんな。女子には辛いだろう。


「夜の新情報発表会の前に着替えた方がいいよな。更衣室まで行けるか?」

「ちょっと辛いわね。おんぶしてもらえる?」

「悪いが俺も疲れてるんだ。きついな」

「疲れてなくても、やってくれないくせに…」


あ、バレた?ただでさえ女子に触れるのに躊躇いあるのに、鈴井という美少女となると、俺はきっと心臓発作で死ぬだろう。


「本当に辛いなら、肩くらいなら貸してやるぞ」

「大丈夫よ。然程距離ないし。自分で歩けるわ」


それは良かった。肩を貸すと簡単に言ったが、もし本当にそうなったら、心臓発作起こしてたかもしれん。危なかった〜。


――――――――――――――――――


着替えを終え、鈴井と合流する。発表会まではまだ一時間半もあるが…


「少し早いけど、夕飯にしましょうか」

「そうだな。何食べたい?」

「あなたの食べたい物でいいわ」


えぇ…(困惑)それ一番困るやつやん…。下手な物を言うと、空気読めとか、馬鹿なの?とか、とりあえずあそこにゴミ捨て場があるから飛び込んできてとか言われるんだろうな。結局、食べたい物が食べられないという。何それ誰も救われないじゃん…


一応、食べたい物は思いついたのだが、女子と食うもんじゃないしな…


「私の事なんて気にしなくていいわ。あなたの本当に食べたい物でいいから」


俺が悩んでいると、その様子を見兼ねたのか、声を掛けてくれた。え?マジで食べたい物でいいの?


「じゃあラーメン」

「…せめて相手の趣向に合いそうな物にしなさいよ…」


やっぱりダメなんじゃねぇか…好きな物でいいという言葉には、気を付けよう。


「まあいいわ。行きましょう」

「何処に行くんだ?」

「ラーメン食べたいんでしょう?早く行きましょう」

「いやお前、乗り気じゃないだろ。無理して合わせてくれなくてもいいんだぞ」

「私の事は気にしなくていいと言ったでしょう」

「いやでもな…食べたくないもんを食わせるのもな…」

「はぁ…。言い方を変えるわ。あなたが食べたい物が食べたいわ。連れてってもらえる?」

「ほ、ほんとにいいのか?」

「いいと言ってるでしょう。幼稚園生でも二回聞けば理解出来るわよ」


うーん…。気を使わせちゃって申し訳ないな…。まあ折角いいと言ってくれてるんだし、お言葉に甘えるとしよう。


――――――――――――――――――


イベントホールから然程歩かない距離に、俺が行きたいラーメン店はある。こっちの方に来たら是非とも行きたかった場所だ。


「ここが、そのラーメン屋?」

「ああ、美味いと評判なんだ」


店内を覗くと、まだ夕飯時にしては早い時間帯だというのに、店内には多くの人がいた。もしかしたら、俺達と同じ考えの人もいるのかもしれないな。


引き戸を引き、店内に入ると、店員さんの威勢のいい声が聞こえる。


『らっしゃいま…せ…?』


なんでどんどんしりすぼみに小さくなってくんだよ。最初の活気はどうした。


まあそれも無理もないだろう。男ばかりの店に場違いな美女が入ってきたんだ。驚くのも当然だ。食べてる人達も、一瞬だが鈴井に目を奪われてるしな。


「晃くん。オススメってあるかしら?」


そんな状況になってるとは露知らず、鈴井は食券販売機の前で俺に訪ねてくる。


「中華そばだな。ネットでも、オススメされてる」

「そう。じゃあそれにしようかしらね」


鈴井に続き、俺も中華そばの食券を買う。


ちょうど角の席が二つ空いていたので、そこに座る。すると、店員さんが一人、食券を回収しに来た。


「お好みはありますか〜」

「あ、じゃあ硬めで」

「私も同じで」

「あいよ。硬め二丁〜!」


ラーメン屋ってこの雰囲気がたまらないよな。ラーメンを食いに来たって感じがする。


しばらく無言で待っていると、中華そばが運ばれて来る。

醤油ベースのあっさりスープに、中縮れ麺、メンマ・葱・焼豚とかなりシンプルなトッピングだ。

だが、シンプル故に味を誤魔化せないのが中華そばだ。人気があるという事は、きっと相当美味しいのだろう。


まずはスープからだ。蓮華でスープをすくい、一口。美味い…。なんと言うか…凄い安心する味だ…


次は麺、縮れ麺が程よくスープと絡む。箸で麺を掴み、一気に啜る。美味い!スープのコクに、小麦の程よい主張。最高のバランスだ!


隣りを見ると、鈴井も夢中で麺を啜っていた。なかなかの食べっぷり。見ていて清々しい。


俺もすぐに食事に戻る。家系主義だったけど、考えを改めなくてはいけないな。それほど美味い。


気がつくと、麺と具をあっという間に平らげてしまった。いやー美味かった。


「ふぅ…。とても美味しかったわ」


スープを飲んでいると、鈴井が呟きが耳に入る。


「たまにはラーメンもいいだろ」

「別に私はラーメンが嫌いと言うわけではないのよ。むしろ好きね」

「じゃあなんでちょっと渋ったんだよ」

「それは…ムードという物が…」

「ヲタクのイベントに来てる時点でムードもへったくれもねーよ」

「はぁ…。あなたに言っても通じないわよね。分かってたわ…」


いやなんの話だよ。ヲタクのイベントといえばラーメンだろ。むしろムードとか雰囲気とかに合ってると思うんだけどなぁ…


――――――――――――――――――


イベントがすべて終了し、今は帰りの電車の中。時刻は既に十一時を回った。


実はイベント終了後、ゲーセンに行き、二次会的な物をやった。音ゲー、楽しかったな〜。


「良かったわね。空いていて」

「そうだな。ここから四十分立ちっぱなしは辛いしな」


遅い時間帯という事もあって、他に乗客はまばらにしかいない。


座席は空いているので、一つ開けて座ろうとしたが、話しにくいと言われ隣りに座らされた。緊張するなぁ…


「今日は来てくれてありがとう。楽しかったわ」

「礼を言うのはこっちの方だ。ありがとな、誘ってくれて。おかげで楽しかった」

「そう。それは良かったわ」


鈴井も楽しんでくれたみたいだし、俺も楽しめたし。今日はいい日だったな。


「またいつか、一緒に来ましょうね」

「ああ、また、いつかな」


その時は来るかは分からない。だが、機会があればまた、一緒に遊びたいな。



しばらく話す事はなく、沈黙が流れる。

ふと肩と腕に重みが掛かった。


見ると、鈴井が俺に寄りかかるように眠っていた。無理もないか。朝早くから弁当の用意をして、それでなくても、日中は走ったりずっと立ってたりしたもんな。


しかし、いささか無防備過ぎやしないか?俺じゃなかったら襲われてんぜ。


…いや、きっと俺を信用してくれているのだろう。安心して、体を預けてくれているのだろう。


それは、もしかしたら男として見られていないのかもしれない。でも、今の俺にはそれでも嬉しかった。


なあ鈴井。俺はお前を、安心させられるような男になれてるか?信用できる男に、なれてるか?


きっとお前は、軽口を叩いて、あり得ないと罵るだろう。


だが、俺はそれでも構わない。


俺はお前を、皆を、少しでも安心させられたらそれでいい。少しでも、信用してもらえたら、それでいい。


俺は皆のために生きる。あの時から、そう決めたから。


だから今は、皆にこう伝えたい。



俺を、信じてくれ。



――――――――――――――――――


寝たふりをした。あなたに触れるために。我ながらずるい女だと思う。


あなたの事だから、きっと見当違いな事を考えてるに違いない。男として見られてないからこんな事をしてるのだろう、とか。


やってる私も、実は凄く緊張している。大分鼓動が速い。あなたにこの事が伝わってないかしら。そう考えるとより鼓動が速くなる。


それでも私は、寄りかかるのを止めたくなかった。あなたの温もりを、感じていたかったから。


あなたといると、少し昔の事を思い出す。私の初恋の時の事。


私の初恋は小学校六年生の時、いえ、初めて彼と出会った小学校四年生の時。


初めて彼と出会った時、私は少し苦手な子だと思った。


あまり人と話すのが得意ではない私に、グイグイと話しかけてきて、とても戸惑ったのを覚えてる。


初めは私も、あまり好意的に接する事が出来なかった。でも、話していくうちに、だんだんと打ち解けて、最後にはとても仲良くなれたと思う。


たった一ヶ月だけしか一緒にいられなかったけど、今でも鮮明に覚えている。


彼と別れた後も、私はずっと彼の事を忘れららずにいた。当時はそれが恋だとかは分からなかった。


それが恋だと確信したのは、小学校六年生の時。彼と再び出会った時だ。会ったと言っても、私が一方的に見つけただけだけど。


その時の彼の笑顔を見て、私は彼に恋をしたと確信した。彼の事が好きだと、そう思った。


その時の彼は、誰よりも輝いて見えた。私は彼を見て、胸の鼓動を抑えられなかった。


それが私の、今でも続いている初恋。


中学では、彼の名前はよく聞いていた。他校にも、彼の噂が流れてくるほど、彼は注目されていた。私はそれが、嬉しくもあり、少し嫉妬もした。私の方がと、何度も思った。

しかし、結局会う事は出来なかった。


悔しかった。辛かった。こんなにも好きなのに、その気持ちを伝えられないという事が。


未だに私の彼への気持ちは、伝えられないでいる。もちろん、彼への気持ちは微塵も衰えていない。


でも、悔しいという気持ちも、辛いという気持ちもない。


だって今は、彼が側にいてくれてるから。


私は彼、いえ、白峰 晃くん、あなたの事が好きです。あなたと、恋人になりたいと、思っています。


でも今は、もう少しだけ、この関係を続けたい。我儘なのは分かってる。


昔みたいに、あなたと楽しくお話がしたい。友人として、あなたの側にいたい。だからもう少しだけ、待っててほしい。




いつか必ず、あなたにこの気持ちを伝えます。だから、その時まで、待っててください。



美少女に寄りかかられたい人生だった。とりまラーメン食べたい。

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