やっぱり目立つのは俺にとって損しかない
『大熱戦の末、優勝したのは、一年B組だぁぁぁーーーー!!!』
実況がマイクをぶん取り、興奮した様子で叫ぶ。
「白峰ーーー!!!!」
「晃ーーー!!!!」
「痛ぇ!!!!」
またかお前ら!どっから出てくるんだよその元気!
『すげーぞ白峰!!!』
『お前最高だ!!!』
『愛してるぜこの野郎!!!』
気がつけば、クラスの皆がこっちに来ていた。ホモが交じっているのが気になるな。
というかお前ら!これ以上乗るな!俺が死ぬ!!
「やったやった!やったよれいちゃん!!」
「ほ、ほのかさん。嬉しいのは分かるのだけれど…。苦しい…」
荒川が鈴井に抱きついているのが見えた。
いや一番頑張ったの俺だからね?そこは俺に抱きつくべきじゃないの?
なんで男同士、女同士なんだよ。そっち系の人しか得しねーじゃねーか。
つーか…
「お前らいい加減どけぇ!!」
そう叫ぶが、全然どく気配がない。ちょ…マジ死にそう…
『ほら!あんたのカレシ頑張ったよ!褒めてあげな!』
『だからあたしとあいつはそういう関係じゃないって!』
『照れ隠しはいいから!ちゃんと伝えてあげて!』
『ちょ、皆押さないで!』
成瀬は、他の女子に強引に連れられ、俺の前に担ぎ出される。その様子を見て、俺の上に乗ってた奴らは、蜘蛛の子を散らすように離れていった。お前ら…
俺は立ち上がり、成瀬と向かい合う。なんとなーく恥ずかしい。
「ま、まあ、あたしはあんたなら大丈夫だと思ってたけどね」
「そ、そうか。ありがとう」
「まあ、ちょっと見直した。あと…ちょっとカッコ良かった…」
そう言って俯いてしまった。そういう行動されると、こっちもどう反応していいか凄い困る。というか恥ずかしいです…
『そこは、惚れ直した、でしょ』
『優しくお疲れ様って抱きしめてあげないと』
『ほっぺにチューとかもいいんじゃない?』
「だからやらないって言ってるでしょ!!」
成瀬が顔を真っ赤にして言うと、女子の皆さんは逃げて行った。成瀬も結構苦労してんだなぁ…
「はぁ…。まあとにかく、本当にお疲れ様。これで、二人の相談も解決かな」
「あ、そういやそんな物もあったな。すっかり忘れてたわ」
「あんた…。一番大事な事でしょ…」
「いやリレー前まで覚えてたんだけどよ。走ってる時必死で飛んでたわ」
「はぁ…。まあ、ちゃんとやってくれてたならいいや。あたしは、あまり力になれなかったし」
「そんな事はないぞ。お前の応援、すげー力になったからな」
信頼され、託されるという事は、俺が思っていたよりずっと力になった。そして何より、嬉しかった。
「…そんな事…。やっぱり…あんたって卑怯…」
「何がだよ。正々堂々戦っただろうが」
俺の全力を卑怯とは。誠に遺憾である。
「はぁ…。あんたがそういう奴だって分かってるから、もう何も言わないけどね」
「何故俺が悪いみたいに…?」
いつも思ってるが、俺、悪くないよな?
「晃くん!!」
後ろから名前を呼ばれる。振り向くと荒川と鈴井がいた。
「本当にありがとう!やっぱり晃くんに相談して良かった!」
「まだ終わってねーよ。総合成績で一位取らなきゃ意味ないだろ?」
「ううん。もう十分だよ。晃くんのおかげで、すっごいいい思い出になった!」
「そうか。満足いただけた様で何よりだ」
完全遂行ではないが、相談者が満足してくれたのなら、俺としても十分だ。
「ねえ晃くん。リレー前に話した事、覚えてる?」
「ああ、覚えているぞ」
確か、お前に最高の思い出をプレゼントするってやつだったよな。
「それについての私の回答をさせてもらってもいいかしら?」
「ん?ああ、いいぞ」
「そう。それじゃあ…」
そう言って、鈴井は俺の方に近寄ってくる。何故?
俺の前まで来ると、俺の顔の方に手を伸ばす。アイアンクローかな?
彼女の手は、俺の顔ではなく、おれの襟首を掴む。背負い投げかしら。
彼女はそのまま、俺を引き寄せる。何がしたいのかわかんねぇ…
すると、彼女は俺の耳元に顔を近づけ…
「素敵な思い出をありがとう」
「ふえぇ!?」
予想外の言葉に、間抜けな声をあげてしまった。
え?マジ?満足してくれたの?
彼女は俺の手を離し、俺から離れる。
「ちょっとれい!あんた晃になんて言ったの!?」
「ふふっ。さて、何かしらね」
「れいちゃん!ちゃんと教えて!」
何を二人は熱くなってるのかしら。別に大した事は言われてないんだが。
「晃ーー!!胴上げすんぞ!!」
「皆ーー!白峰確保したぞ!準備しろ!!」
「ちょ、お前ら!やめろ!!」
ぼーっとしていると、健と平沢に腕をホールドされてしまった。ヤバい!逃げられない!
周りを見ると、女子と話している相坂を見つけた。
「相坂!助けてくれ!」
相坂に助けを求めた。
しかし、奴は胸の前で腕をクロスさせ、バツを作る。
おい助けろよ!何少し笑ってんだよ!
「離せ!離せってんだよ!」
「暴れんな、暴れんなよ。落としたら危ないだろ」
「やらなきゃ危なくねぇんだよ!!」
「おし、誰か足を抑えろ。さっさと上げるぞ!」
「やめろ!離せ!」
『おっしゃいくぞーー!!!』
あ、ダメだこれ…
そして俺は、抵抗するのを止めた。
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
二章もあと二話となりました。見ていただけると嬉しいです。




