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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
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やっぱり目立つのは俺にとって損しかない

『大熱戦の末、優勝したのは、一年B組だぁぁぁーーーー!!!』


実況がマイクをぶん取り、興奮した様子で叫ぶ。


「白峰ーーー!!!!」

「晃ーーー!!!!」

「痛ぇ!!!!」


またかお前ら!どっから出てくるんだよその元気!


『すげーぞ白峰!!!』

『お前最高だ!!!』

『愛してるぜこの野郎!!!』


気がつけば、クラスの皆がこっちに来ていた。ホモが交じっているのが気になるな。

というかお前ら!これ以上乗るな!俺が死ぬ!!


「やったやった!やったよれいちゃん!!」

「ほ、ほのかさん。嬉しいのは分かるのだけれど…。苦しい…」


荒川が鈴井に抱きついているのが見えた。

いや一番頑張ったの俺だからね?そこは俺に抱きつくべきじゃないの?

なんで男同士、女同士なんだよ。そっち系の人しか得しねーじゃねーか。


つーか…

「お前らいい加減どけぇ!!」


そう叫ぶが、全然どく気配がない。ちょ…マジ死にそう…


『ほら!あんたのカレシ頑張ったよ!褒めてあげな!』

『だからあたしとあいつはそういう関係じゃないって!』

『照れ隠しはいいから!ちゃんと伝えてあげて!』

『ちょ、皆押さないで!』


成瀬は、他の女子に強引に連れられ、俺の前に担ぎ出される。その様子を見て、俺の上に乗ってた奴らは、蜘蛛の子を散らすように離れていった。お前ら…


俺は立ち上がり、成瀬と向かい合う。なんとなーく恥ずかしい。


「ま、まあ、あたしはあんたなら大丈夫だと思ってたけどね」

「そ、そうか。ありがとう」

「まあ、ちょっと見直した。あと…ちょっとカッコ良かった…」


そう言って俯いてしまった。そういう行動されると、こっちもどう反応していいか凄い困る。というか恥ずかしいです…


『そこは、惚れ直した、でしょ』

『優しくお疲れ様って抱きしめてあげないと』

『ほっぺにチューとかもいいんじゃない?』

「だからやらないって言ってるでしょ!!」


成瀬が顔を真っ赤にして言うと、女子の皆さんは逃げて行った。成瀬も結構苦労してんだなぁ…


「はぁ…。まあとにかく、本当にお疲れ様。これで、二人の相談も解決かな」

「あ、そういやそんな物もあったな。すっかり忘れてたわ」

「あんた…。一番大事な事でしょ…」

「いやリレー前まで覚えてたんだけどよ。走ってる時必死で飛んでたわ」

「はぁ…。まあ、ちゃんとやってくれてたならいいや。あたしは、あまり力になれなかったし」

「そんな事はないぞ。お前の応援、すげー力になったからな」


信頼され、託されるという事は、俺が思っていたよりずっと力になった。そして何より、嬉しかった。


「…そんな事…。やっぱり…あんたって卑怯…」

「何がだよ。正々堂々戦っただろうが」


俺の全力を卑怯とは。誠に遺憾である。


「はぁ…。あんたがそういう奴だって分かってるから、もう何も言わないけどね」

「何故俺が悪いみたいに…?」


いつも思ってるが、俺、悪くないよな?


「晃くん!!」


後ろから名前を呼ばれる。振り向くと荒川と鈴井がいた。


「本当にありがとう!やっぱり晃くんに相談して良かった!」

「まだ終わってねーよ。総合成績で一位取らなきゃ意味ないだろ?」

「ううん。もう十分だよ。晃くんのおかげで、すっごいいい思い出になった!」

「そうか。満足いただけた様で何よりだ」


完全遂行ではないが、相談者が満足してくれたのなら、俺としても十分だ。


「ねえ晃くん。リレー前に話した事、覚えてる?」

「ああ、覚えているぞ」


確か、お前に最高の思い出をプレゼントするってやつだったよな。


「それについての私の回答をさせてもらってもいいかしら?」

「ん?ああ、いいぞ」

「そう。それじゃあ…」


そう言って、鈴井は俺の方に近寄ってくる。何故?

俺の前まで来ると、俺の顔の方に手を伸ばす。アイアンクローかな?

彼女の手は、俺の顔ではなく、おれの襟首を掴む。背負い投げかしら。

彼女はそのまま、俺を引き寄せる。何がしたいのかわかんねぇ…

すると、彼女は俺の耳元に顔を近づけ…



「素敵な思い出をありがとう」

「ふえぇ!?」



予想外の言葉に、間抜けな声をあげてしまった。

え?マジ?満足してくれたの?


彼女は俺の手を離し、俺から離れる。


「ちょっとれい!あんた晃になんて言ったの!?」

「ふふっ。さて、何かしらね」

「れいちゃん!ちゃんと教えて!」


何を二人は熱くなってるのかしら。別に大した事は言われてないんだが。


「晃ーー!!胴上げすんぞ!!」

「皆ーー!白峰確保したぞ!準備しろ!!」

「ちょ、お前ら!やめろ!!」


ぼーっとしていると、健と平沢に腕をホールドされてしまった。ヤバい!逃げられない!


周りを見ると、女子と話している相坂を見つけた。


「相坂!助けてくれ!」


相坂に助けを求めた。

しかし、奴は胸の前で腕をクロスさせ、バツを作る。

おい助けろよ!何少し笑ってんだよ!


「離せ!離せってんだよ!」

「暴れんな、暴れんなよ。落としたら危ないだろ」

「やらなきゃ危なくねぇんだよ!!」

「おし、誰か足を抑えろ。さっさと上げるぞ!」

「やめろ!離せ!」



『おっしゃいくぞーー!!!』



あ、ダメだこれ…


そして俺は、抵抗するのを止めた。


明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

二章もあと二話となりました。見ていただけると嬉しいです。

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