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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
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期待、そして信頼


「勝つのは俺たちだ!!!」



俺は柳澤先輩にそう言い放った。


「凄い自信だな」

「あなたが自分のチームに自信を持っているように、俺も自分のチームに自信を持っているだけですよ」

「へー、なるほどね…」


『おーっと!一年B組速い!他を寄せ付けない圧倒的な速さです!』


流石健だ。俺達の思惑通り、リードしてくれている。


「君達の作戦は分かっている。先行逃げ切りだろう?」

「まあ、そうですね」

「だが、それが上手くいくとは思わない方がいい」


『二年E組速い!先行する一年B組を猛追しています!』


「水無月先輩か…」

「香織がいる限り、先行逃げ切りはあり得ない」

「そっちこそ、うちの二人目のエースを侮り過ぎじゃないですか?」


『しかし追いつけない!一年B組!リードを保ったまま、第三走者にバトンが渡る!!』


「なに!?」

「先行逃げ切りはあり得ないんですよね?」

「…そうだな。さっきの言葉は訂正しよう」


よしよし、この調子なら優勝もいけるはずだ。


『あーー!!一年B組、第四走者が止まっているぞ!どうした!』


実況を聞き目をやると、桐島が平沢から上手くバトンをもらえず、もたついてしまっていた。緊張に呑まれたか…


『おっとぉ!?ここで二年E組、そして一年D組が前に出たぁ!!』


やはり抜かれてしまったか。まずいな。


「本番は一発勝負。想定外の事だって起こり得るさ。君達の作戦は間違っていない。運が悪かっただけさ」


柳澤先輩の言っている事は正しい。だが…


「まだ、勝負は終わっていませんよ」

「そうだな。確かにまだ終わってはいないな」


二位の一年D組との差は二秒もない。まだまだいけるはずだ。


しかし、現実は非情だ。相坂が必死で前に追いつこうとするが、差は一向に縮まらない。


『ここでバトンパスを利用して、一年D組が一位に躍り出たぁ!!』


バトンが第六走者に渡り、次はいよいよアンカー、俺達の番だ。


「悪いな晃。この勝負、俺の勝ちみたいだ」


レーンに出て来て、隣に並んだ勝樹が言う。


「いや、まだだ。まだ終わってねぇ!」


荒川が前二人を追い上げていた。きっと、俺ならやってくれると信じて。


『さぁて!まもなくアンカーにバトンが渡ります!勝つのはサッカー部のキャプテンか!それともバスケ部のエースか!』


実況は、俺が勝つとは思っていないようだ。

いや、実況だけじゃない。おそらく、この学校の殆どの生徒がそう思っているだろう。

当たり前だ。二人は校内でも屈指の有名人。対して俺は、悪目立ちしたただの一般生徒。期待に差が出るのなんて当然だ。


だが、そんな俺に期待してくれた奴らもいた。


とある女の子は、俺なら何とかしてくれると信じてくれた。


とある女の子は、俺なら勝てると信じて疑わなかった。


とある女の子は、俺と一緒に勝ちたいと言ってくれた。


それだけじゃない。

とある馬鹿は、俺の言葉を鵜呑みにし、とある冷徹な男は、俺の言葉を信じてくれた。


そして、とある男は、俺という人間の全てを信頼してくれた。


他の誰もが期待してくれなくてもいい。だが、俺には俺に期待してくれる確かな仲間がいる。


だから俺は、そいつらの期待に応える為に、全力でやるだけだ。


俺は荒川に背を向ける。荒川は俺を信じてくれた。だから俺も彼女を信じる。だから俺は彼女を見ない。彼女なら必ず、俺の手にバトンを渡してくれると信じて。


荒川の頑張りのおかげで、一位までは一秒もない。十分だ。俺なら抜ける。


彼女の位置を一瞬だけ確認し、俺は走り出す。もう振り返らない。

トップスピードに乗る前に、彼女からのバトンが俺の手に収まる。彼女は俺の無茶振りに、信頼に応えてくれた。

ならば、今度は俺の番だ。俺が、お前らの期待に、信頼に応える番だ。


「頑張って!!!」


後ろから声が聞こえる。さっきまで全力だったのに、無理して声を上げて。馬鹿な奴だ。


悪いが、俺はその言葉の返答を、お前に伝える事は出来ない。だが、お前の想いは確かに受け取った。だから、心の中でだが、その言葉の返答をするとしよう。




任せろ。絶対勝つ。

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