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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
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本当の相談

『まもなく、クラス対抗リレー 決勝を行います。選手の皆さんはグラウンドにお集まり下さい』


様々な事があった体育祭もいよいよ大詰め、最終競技である。


「体調は大丈夫かしら?」

「ああ、あれからたっぷり休んだからな。大分回復したよ」


あれから俺は、ビニールシートを敷きその上でずっと寝ていた。雑草の上だったため柔らかく、さほど寝心地は良くなかったが、体が痛くなるといった症状は出なかった。ただ、成瀬に膝枕を申請したが、全力で拒否られてしまった。今日一番の功労者なんだから、少しくらい労わってくれてもいいじゃないかよぅ…


「それなら良かったわ。あなたが勝負の鍵を握っていると言っても過言ではないのだから。万全でなければ困るわ」

「えらくプレッシャー掛けるな。ぺしゃんこになりそうだ」

「いっそ潰れてしまったら?」

「ひでぇな。潰れたらリレー出れないぞ」

「それは困るわね…。なら終わってから私が潰してあげるってのはどう?」

「なんで俺が潰される前提になってるんだよ…」

「冗談よ。少しは緊張解れた?」

「もともと、俺はそんなに緊張してないんだがな」

「そこは素直に『鈴井様!あなたのおかげで私は全力を出せそうです!このご恩は一生掛けてお返しいたします!』と言ってくれてもいいのだけど」

「だからいつからか俺はお前の崇拝者になったんだよ…」


ただまあ、鈴井なりの気遣いとならば感謝しよう。何やら別の目的が見え隠れしているような気もするが、気のせいだ。気のせいだろう。気のせいに違いない。


「二人とも、早くしなよ。もう皆行っちゃったし」


成瀬が俺達に教えてくれる。


「そうか、直ぐ行く」


準備を終え、グラウンドに向かおうとする。

「あ、ちょっと待って」

その途中で、成瀬に呼び止められる。


「最後に、二人に言いたい事があるの」

「最後って。俺ら別に戦争に行くわけじゃないんだから」

「黙って聞いて。れい、あんたは誰よりも速い。だから、自信持って」

「ええ、もちろん。絶対勝つわ」

「晃…には別に言う事はないかな」

「何だよそれ。一言くらいくれたっていいだろ」

「あんたなら、何も言わなくてもやってくれるでしょ」

「…よく分かってんじゃねーか。何?俺の事好きなの?」

「は、はぁ!?そ、そんな訳ないでしょ!変な事言わないでよ!」


顔を真っ赤にして怒っている。いつもの冗談なのに、そんなに怒る事ないじゃないかよぅ…


「冗談だ。まあ、期待して待ってんだな」

「うん。期待、してるから」

「それじゃあ行きましょうか。晃くん」

「ああ、そうだな」


鈴井と共にグラウンドに向かう。


「ねえ晃くん。相談、覚えてる?」


相談?勝ちたいっていうあれか。


「もちろんだ。勝とうな」

「ええ、本当に、あなたには期待しているから」


相変わらず、真っ直ぐな言葉だ。だが一つだけ、引っかかる事がある。


「なあ、一つ聞いていいか」

「何かしら?」

「お前は何で俺に過度な期待を寄せるんだ?」

「前にも言ったでしょう。あなたはキーマンになると、そう」

「そんなでっち上げの理由じゃなくて、本当の理由を教えてくれ」


鈴井の言葉を遮り、俺は言った。


「でっち上げ?そんな事はないわ。理にかなっているでしょう?」

「根拠が薄いんだよ、その理論には。それが成立するのは、俺に実力があってこそだろ。俺が聞きたいのは、何故俺に実力があると思っているか。そこだよ」


俺がそう言うと、鈴井は目を逸らした。


「……はぁ…。鈍いと思っていたのだけれど、変な所で鋭いわね」

「しゃあないだろ。気になっちまったんだから」


聞かなくても良かった事なのだが、はっきりさせときたかったんだ。


「あなたが望むような回答ではないと思うわ。それでもいいかしら」

「ああ、構わねぇ」


鈴井は少し考えた後、話し始めた。


「私がこの体育祭で勝ちたい理由、まだ話してなかったわよね」

「ああ、聞いてないな」

「私が勝ちたい理由、それは、あなたにあるの」

「俺に?何でだ?」

「端的に言えば、あなたと一緒に、思い出を作りたかったから、かしらね」

「…意味がわからん。なんでそうなった」

「それは…高校で…最初に出来た…友達…だから…」

「友達ってのは、容赦のない暴言とかを浴びせるものとは違うぞ」

「五月蝿いわね。私が友達として認めてあげてるのよ。普通なら土下座して有り難がるものでしょう」

「友達ってそういうものじゃないだろ!」


酷い開き直りを見た。

相手に土下座させるような友達がいてたまるか。


「実は勝ちたいってのも建前。本当は、あなたと一緒にこの体育祭を楽しみたかった」

「そのために、俺を焚きつけたのか」

「嘘をついた事は謝るわ。でも、ああでもしないと、あなたは動かないと思ったから」

「なるほど…な…」


水無月先輩との勝負があるから、やる気はあったが、鈴井はそれを知らない。何も柵がなければ、皆と一丸となって体育祭をやるなんてなかっただろう。それこそ、適当に調子を合わせる事はあるかもしれなかったが、そこまで本気になる事はなかったはずだ。


「この体育祭、本当に楽しかったわ。それこそ練習の時から。リレーも、二人三脚も。昔に戻ったみたいで…」

「昔?何の事だ?」

「何でもないわ。こっちの話」


昔?俺には関係ないと思うが、妙に引っかかるな。


「だから、勝って、一緒に最高の思い出を作りたいの。これが、私の本当の相談」


何故そのような相談を持ちかけてきたのか、俺には分からない。だが、俺の回答は決まっている。


「悪いが、それは引き受けられないな」

「そんな…。嘘をついた事は悪かったと思ってる。だから…」

「お前の友達は俺だけじゃないだろ?」

「…………え?」

「一緒にじゃなくて、皆で、だ。荒川も成瀬も、お前の友達だろ」


いい思いでは皆で作る物だ。俺ができるのは、それの手助けだけだが。


「…ほんと、あなたのそういう所が大嫌い…」

「…悪いな。俺は自分のこういう所が大好きだ」


お前の相談は受けられない。だが、その代わりといってはなんだが、もっといい物をプレゼントしよう。


「いいわ。それで妥協してあげる。その代わり、私の相談を受けなかった以上、生半可な物じゃ許さないわ」

「はっ!言ってろ。今に俺に感謝する事になるからな」


俺達は、いつもの調子に戻り、グラウンドへ向かう。


「でも、あ………そう……所を…き………た……けど」


「なんか言ったか?」


聞こえないっつってんだろ!最近の日本人は言葉だけじゃなくて、声までぼかすのかよ。


「何でもないわ。早く行きましょう。女たらしでスケコマシの最低最悪なドM変態野郎の晃くん」

「相変わらず、酷い言われようだな…」

「だって事実でしょう?」


そう言って、振り返った彼女のいたずらな笑みは、今までで一番魅力的で、今までで一番可愛らしかった。

仁美への賛否(主に否)が凄い気がします。なんと言うか…ごめん…仁美…

あと、実はまだ、半分も終わってないです。終わる頃には、50万字とかいってそうで怖ひ…

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