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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
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いつか、成瀬には話す時がくるのだろう

俺がひとしきり泣いた後、俺達は横に並んで座った。


「落ち着いた?」

「ああ、何とかな」


落ち着いたのはいいが、めちゃくちゃ恥かしい。女子の前で泣くって何だよ。ああ、もう、死にたい。


「まさか晃があんな風に泣くなんてね。初めて見たな〜、晃が泣いてるとこ」

「やめてくれ。死にたくなる」


この子割と死体蹴りしますね。恐ろしい子…


「そういやさ、お前、なんで勝樹のこと好きになったんだ?」


これ以上死体蹴りされる前に話をそらす。前々から気になってたことを聞いた。


「うーんとね、確か、泣いてた時に優しくしてもらったからかな」

「えらくちょろいな。俺数えきれないほどやったぞそれ」

「時期が違うの!あの時は…ほんとに辛くて…どうしたらいいか分からなかった時だったから…」

「ああ…そうか…」


俺は全てを理解した。やっぱり、全部俺が原因なんだな。


「そうだ。、最後のリレーだけどよ。終わったら、勝樹の所に行ってやってくれ」

「え?なんで?」

「あいつ、多分相当悔しがるだろうからな。慰めてやれよ」

「え?それって…」


仁美を本当に必要としているのは、俺ではなく勝樹だ。それに、多分俺は負けても何も思わない。だが、あいつは…


「あ、そういや勝樹の奴、今も探してるんじゃね?」

「え?連絡してないの?」

「いやだって、する暇なかったし」

「え?じゃあ早く連絡しないと」

「そ、そうだな。早く行こうぜ」

「見つけた!こんな所にいたのか!心配したぞ!」


あ、遅かったか…。ここに来るって事は校内中探したんだろうな。お疲れ様です。


「あ?なんで晃がいるんだ?」

「い、いや、これには深い訳があってだな」

「なるほどな、俺には校内中探させといて、自分は悠々と仁美と談笑って訳か」

「い、いや、見つけた時知らせようと思ったんだよ。ただ、タイミングが見つからなくてだな」

「うるせぇ黙れ!てめぇを殺す!!」

「やっべ、逃げろ!」

「待てコラガキ!!!」


鬼の形相で勝樹が追いかけてくる。捕まったら殺されそうだ。


「楽しそうで、良かった」


その様子を見て、仁美は楽しそうに笑っていた。


助けてくれよ…


――――――――――――――――――――


勝樹からなんとか逃げ切り、仁美を連れてクラスのテントに戻ってきた。


「皆!心配かけてごめんなさい!」


仁美が深々と頭を下げて謝る。


「ううん。全然!仁美ちゃんが無事で良かった!」

「大丈夫?仁美さん。そこの男に不埒な事されていない?」

「俺が犯罪犯した前提で話すのやめてくれません?」

「あなたはそれが目的で自分から申し出たのではないの?」

「やったら一発でバレるのにやらねーよ」

「バレなければやるのね」

「否定出来ん…」

「警察に突き出した方がいいのではないかしら」

「あ、なにこれデジャヴ」


俺は仁美から少し離れ、適当な場所に座る。仁美は皆に囲まれ、何があったかを聞かれていた。大変そうだなぁ…


「お疲れ様。よく見つけたわね」


成瀬が俺の隣に座り、話しかけてくる。


「大変だったけどな。まだリレーが残ってるってのに、大分疲れたわ」

「まああんたなら何とか出来るでしょ。頑張りなさいよ」

「ああ、頑張るさ」


「それで、仁美と何を話したの?」

「特に何も。ずっと探してたからな、話す時間なんてなかったぞ」

「嘘。あんた嘘つく時癖があるの。ちゃんと本当の事を教えて」


マジかよ。多分それ仁美ですら見抜けてないぞ。

どうやら、俺は成瀬には隠し事は出来ないみたいだ。正直に話すしかないか。


「少し、昔話をな」

「昔話…ね…」


成瀬は他所を向き、考え始めた。


「あんたさ、中学時代、何があったの?」


しばらく考えた後、成瀬は尋ねてきた。


「…悪いが、あまり言いたくないんだ。すまん」

「ふーん、そ…」


成瀬は納得してくれたようだ。


「あたしさ、もっとあんたの事を知りたいって思ってる。だからさ、いつか、あんたが話してもいいって思う時がきたら、その時の事、話してくれない?」


俺の事を知りたい、ねぇ…


「そうだな。その時がきたら、話すかもな…」

「そ…。ありがと…」


成瀬は、それ以上は何も言ってこなかった。

話してもいいって思う時…か…。はたして、その時がくる事はあるのだろうか…。



『ただ、いつまでも隠し通せるのもではないという事は、憶えておいてくれ』



何故か今、柳澤先輩の声が反芻する。いや、理由は分かっている。

いつか、話さなきゃいけない時が来るだろう。その時までに、あの時の俺に向き合う必要があるのだろうな。

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