どうやら、三つ巴の戦いになりそうだ
開祭式が終わり、多くの生徒が各クラスのテントに向かう中、リレーの出場選手は運営テントに集まっている。リレーの予選の抽選のためだ。
予選は、一レース六組で三レース行われ、その組み合わせは抽選である。その中から、上位二チームが決勝進出となる。
また、リレーの予選は第一種目、決勝は最終種目である。その為、朝一で抽選が行われる。
「じゃあ抽選行ってくるわ」
「変な組み合わせのとこ引いたら焼き土下座な」
「いや、爪に血のマニキュアだろ」
「指ギロチンも捨てがたい」
「お前ら俺を殺す気か?」
抽選に向かうのは、当然健だ。あいつのクジ運の良さは皆知っているからだ。
健が抽選に向かってから数刻後、ボードに予選の組み合わせが張り出される。
クラス対抗リレー 予選 組み合わせ表
予選一組目
一年C組
一年D組
一年E組
二年A組
三年B組
三年D組
予選二組目
一年B組
一年F組
二年C組
二年F組
三年A組
三年C組
予選三組目
一年A組
二年B組
二年D組
二年E組
三年E組
三年F組
なるほど。俺達は二組目か。
水無月先輩のクラスはE組だから、三組目だな。当たるとしたら決勝か。勝樹は確かD組だったよな。どうやら上手くばらけたみたいだ。
「よお晃、どうやら俺達が当たるのは決勝みたいだな」
俺が考え事をしていると、後ろから声を掛けられた。声の主は勝樹だ。
「何言ってんだ?お前がこけたら当たらないぞ?」
「そっちこそ、予選敗退なんてカッコ悪い事すんじゃねーぞ」
お互い、軽口を叩き合い牽制する。
「まあ、俺は先に決勝進出決めてくるからよ、お前も決勝来いよな」
「当たり前だ。決勝でお前を潰す為にもな」
「……。言うね〜。いいぜ、受けて立つ!」
そう言って勝樹は、グラウンドの方へ向かって行った。
『まもなく、クラス対抗リレー予選、一組目の競技を開始します。出場選手は、グラウンドにお集まり下さい』
アナウンスが響く。勝樹達はもう準備を終えているだろう。
「おーい、白峰〜、こっち来て一緒に見ようぜ〜」
「ああ、直ぐ行く」
平沢に呼ばれ、俺は直ぐにそっちへ向かう。さて、勝樹達はどんな走りをするのか、視察といきますか。
『ただいまの競技の結果をお知らせします。第一位、一年D組、第二位、二年A組、第三位…』
圧倒的だった。二位以下に十秒近く差をつけての大勝だった。
「やべぇな、強すぎる」
「ここまでとは…。流石に予想外だった」
一人一人の実力もあったが、何より、バトンパスがノールックで、ロスがとても少なかった。恐らく、相当練習したのだろう。
「それに、黒井の奴、最後少し流してたよな」
「ああ、それ位大差だったからな。奴の底がまだ分からないとなると恐ろしい」
全くマークしてなかったが、これは注意が必要だろう。決勝前に知れて良かった。
「何しょげた顔してんだ?俺達が負けると思ってんのか?」
いつの間にか来ていた健が、平沢と相坂の間に入り、肩を組む形でのしかかる。
「いやでもよ、あそこまでの力を見せつけられると…」
「俺らだって同じ事をやればいい。見せてやろうぜ!俺達の力を!」
「だがな…。本当に勝てると思うか?」
健とは違い、二人は弱気のようだ。だが、俺は自信を持って言える事がある。
「勝てるさ。俺達は強いからな。正直、負ける要素が見当たらない」
俺達は強い。それは、俺が神に誓って保証する。
「…そこまで自信満々に言われると、なんかそう思えてくるな」
「ふっ…。お前に言われると、底知れぬ説得力があるな」
「おいおい、俺には説得力が無いってか?」
健の言葉で俺達は笑う。
『まもなく、クラス対抗リレー予選、二組目の競技を開始します。出場選手は、グラウンドにお集まり下さい』
「よし、じゃあ行くか!」
「「「おお!!」」」
健の呼びかけで、俺達はグラウンドに向かう。俺達の実力を見せてやろうじゃないか!
『ただいまの競技の結果をお知らせします。第一位、一年B組、第二位、三年C組、第三位…』
「しゃあ!予選突破だ!」
健が勝どきの声を挙げる。
俺達は、後続を十秒近く離して勝利した。
「まさか俺達、こんなに強かったなんてな!」
「だから言ったろ?俺達は強いって」
「何もしてないお前が言うか…」
相坂の言うとおり、俺は最後流したので、実質何もしてないようなものだ。だって全力疾走って疲れるじゃん。
「まあまあ、勝てたんだしさ。良かったじゃん」
「ほのかさん、まだ予選を通過しただけよ。決勝で勝てなければ意味はないわ」
「もう。硬い事言わない。れいちゃんもちょっとくらい喜ぼうよ」
「そんな余裕無いわ」
相変わらず冷たいなぁ。ゲームの事となると、かなり熱くなるが。
「ま、まあ、あまり張り詰めても良くないし、少しくらいは喜んでもいいんじゃない、かな?」
「そ、それは…そうかもしれないわね…」
桐島の言葉に鈴井がたじろぐ。こいつが言い負けたとこ初めて見た。
「お疲れ様、って言おうと思ったけど、別にあんたは疲れてなかったわね」
いつの間にか来ていた成瀬に声を掛けられた。
「試合前の重圧に疲れたんで癒して下さい」
「猫でも見てきたら?」
「成瀬が猫になってくれたら早いんだけどなぁ」
「流石にその発言には引く…」
美女の猫のコスプレとかいいと思うんだけどなぁ…
「晃!サボっちゃダメだよ!」
仁美も来ていたみたいだ。
「切り札は最後までとっとくもんだ。手の内を明かしたら意味ないだろ?」
「え?そんな事まで考えて走ってたの?」
「すまん。普通に手抜いてた」
「ダメじゃん!」
仁美の尊敬の眼差しを向けられて、流石に嘘はつけなかった。
『まもなく、クラス対抗リレー予選、三組目の競技を開始します。出場選手は、グラウンドにお集まり下さい』
「お、次のレース始まるみたいだな」
次は水無月先輩の番か。それに、柳澤って人の事も気になる。さて、どれほどの実力だろうか。
『ただいまの競技の結果をお知らせします。第一位、二年E組、第二位、三年E組、第三位…』
やはり先輩のクラスが十秒近く差をつけて圧勝した。流石といったところか。
そして何より、
「水無月先輩、異常なほど速かったな」
「あたしもあそこまでとは思ってなかった。勝負をしかけて来た理由がよく分かったわね」
先輩は、前にいた三人を一瞬でごぼう抜きにしていた。あの速さには驚かざるを得ない。
「香織先輩50mのタイム6.6っだってよ」
「マジかよ速え…」
荒川の報告により、俺は再び驚かされる。なんであの人陸上部辞めたん?馬鹿なの?
「それに、アンカーのサッカー部新キャプテン、だったかしら。彼の実力も分からなかったわね」
大差だった為、やはり最後は流していた。あれじゃあ実力は分からない。
「健、柳澤さんの50のタイム知ってるか?」
「キャプテンの?確か、6.2だったな」
「あなたと同じね」
「そうだな。それに、勝樹も6.2だったぞ」
奇しくも、アンカー三人のタイムは同じだった。
「私達があなたにリードを作って繋げば、あなたなら逃げ切れるという事かしら」
「任せろ。俺が負けるなんて事はないしな」
「凄い自信ね。へそで茶を沸かすわ」
「失礼だな。逆に自信なさそうな感じだったらいいのか?」
「その時は洗脳でもして自信を植え付けるわ」
「怖ぁ…」
鈴井さん割とサイコパスですよね…
「あんたさ、昨日からなんか若干キャラ違うよね?なんかあったの?」
「そうか?俺には分からん」
「なんとなくカッコいいというか…まあ、そんな感じ」
「お、何?俺に惚れちゃう?お前ならいつでもウェルカムだぜ」
「…やっぱり勘違いだったみたい…。あんたはあんたね…」
なんか諦めたように言われた。なんか腹立つな。
「まあ頑張りなよ。頑張ったら簡単なお願いくらいは聞いてあげるから」
「じゃあお疲れ様とか言って後ろから抱きしめてくれ」
「訂正、いつもよりひどいくらいね。とりあえず、一回死んでもらえる?」
ゴミを見るような目で見られた。まあそうだよな。
「…………」
「…………」
「…………」
何やら視線を感じると思ったら、鈴井と荒川と仁美が俺をジト目で見ていた。
「…なんだよ。ただの冗談だったんだが」
「べ、別に、なんでもないわ」
「ば、バカな事言ってるな〜って思って」
「…………」
何故か仁美からは何もなかった。というか怖いからその目止めてもらえませんかね…
魔剤効かん、マツキヨも効かん。というわけで、人生の先輩にどうしたらいいか質問した所、錠剤を勧められました。試してみようと思います。




