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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
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彼女達の願い、そして俺の決意

それからというもの、驚くほど何もなく、体育祭前日になってしまった。今は放課後、図書室でだべっている。

「遂に明日…だね…」

「ああ…そうだな…」

水無月さんは、恐らく相当な自信があって勝負をふっかけてきたのだろう。話し合いの最中も、なにやら自分が勝つのは当たり前みたいな雰囲気を出していた。

だから俺達は、あの人に、あの人のクラスに勝つ為に、やれる事は全てやってきた。あとは明日、全てを出し切るだけだ。

「今更だけどさ、勝算はあるの?」

「そうだな…。相手の戦力が分からない以上適当な事は言えないが、うちのクラスが一位になれる可能性は十分あると思う」

うちのクラスは、男子は健を筆頭とした体育会系が多く、女子も、荒川や鈴井といった優秀な生徒が多い。この辺りは上級生と当たっても、十分張り合えるだろう。

「でもさ、香織さんがあんな勝負仕掛けてくるって事はさ、相当自信があるんじゃないの?」

「そうなんだよな…。あそこまで強気だと、余程いい戦力が集まってるって考えられる」

それこそ、可能性は薄いが、学年のスポーツ自慢が全員集まってるなんて事もあるかもしれない。だとしたら100%無理ですねはい。やっぱり是が非でも勝負を避けるべきだったかなぁ…

ん?待てよ?今この場に二年について知ってそうな人がいるじゃないか。

「天使さん、二年E組ってどんなクラスか分かります?」

「二年E組ですか?そうですね…」

俺が聞くと、天使さんは顎に手を当て考え始める。いちいちそういう仕草が反則だと思いますはい。

「香織ちゃんを筆頭に、運動が得意な女の子が多いイメージですね。男の子も柳澤くんがいるので、全体的に隙がない、という感じでしょうか」

「え?あの柳澤 亮平?」

「知ってるのか?」

「知ってるも何も、サッカー部の新キャプテン。イケメンで優しくて、名前を聞かない日は基本無いね。学校で一番の人気者じゃない?」

へー、そんな人がいるのか。全く知らんかった。

「まあ有名っていう点では、あんたも負けてないけどね」

「あんまり嬉しくないなぁ…」

俺普通に生活してただけだよな?なんでこうなるの?あ、勝樹のせいか。殺す…

俺らが話していると、ドアが開く音がした。また来客か。面倒事じゃないといいが。

本棚の影から姿を現したのは、

「ほら、れいちゃん!早く!」

「ほのかさん、あんまり押さないで…」

荒川と鈴井だった。意外な面子だな。

「ほのと、れいじゃん。どうしたの?」

「実はね〜、めぐ。れいちゃんがどうしてもっていう相談があってね」

「あなたも同じ事を相談しに来たのでしょう?私だけのように言わないで」

どうやら二人はちゃんと相談があって来たようだ。しかし、内容が皆目見当もつかない。

「とりあえず、お話をお伺い致しますので、どうぞ座りください」

天使さんが促すと、二人は椅子に座る。

「それで、相談ってのはなんだ?」

「えっとね、明日の体育祭についてなんだけど…」

やはり体育祭か。まあここまでは予想の範囲内だ。


「私達、絶対勝ちたいの!」


「「…………え?」」

成瀬とまたハモってしまった。よく合いますよね、私達。

「理由を詳しく教えてもらえる?」

俺より一瞬早く我に帰った成瀬が、荒川に尋ねる。

「私ね、このクラスが大好きでね。めぐや仁美ちゃんやりんちゃんやさつきちゃん。それに、最近仲良くなった晃くんや灰田くん、そしてれいちゃん」

まさか俺の名前が出てくるとは。嬉しいもんだな…

「今までこんなにクラスが好きになった事なくて、それで、何か思い出に残る事をやりたいなって」

「それで、勝ちたいのか」

俺の問いに対し、荒川は無言で頷く。

「鈴井も、同じでいいのか?」

「ええ、理由は少し違うけど、相談内容は同じよ」

二人とも、相談内容は同じか…

しかし、俺には一つだけ、気になる事があった。

「でもなんで俺達だけに話すんだ?クラス全体に呼びかければいいじゃないか」

別に秘密裏に話す内容ではないはずだ。何故わざわざここで話す。

「私達ね、晃くんに期待してるの」

「俺に期待?」

「うん。晃くんならきっと、凄い事やってくれるんじゃないかなって」

「えらく抽象的だな」

「だから、あなたに相談しに来たのよ、晃くん」

えらく期待されてるな、俺。そこまで期待されるような事なんてないのに。

「なんでそんな俺に期待を?」

俺は二人に、そう問いかけた。

「私は…ほら、前に助けてもらったでしょ?その時みたいにさ、何とかしてくれるんじゃないかって…」

「私は、周りからマークされていないあなたがキーマンになると思っているわ。だから、あなたの力が必要なの」

根拠の薄い理由だ。それに俺には、一度逃げた過去がある。二人が思っているほどの奴じゃない。

だがこうやって、面と向かって、期待していると言われるのは初めてだ。だから俺は…

「お前ら、俺の事を買いかぶり過ぎだ」

「…そう…ごめんなさい。変に押し付けてしまって」

「だが、お前らの期待に添えるよう、全力でやらせてもらう」

「じゃ、じゃあ!」

「ああ、その相談引き受けた。絶対にお前らを、いや、俺達のクラスを勝たせてやる!」

俺が出せる全てをもって、一年B組を優勝に導いてやる!

「ふふっ。あんたらしくはないけどさ、カッコいいじゃん」

「何言ってんだ?俺はいつだってカッコいいんだぜ」

「何を言っているの?あなたの普段の魅力はその辺に生えている雑草以下でしょう?」

「気にも留められない存在以下とは…」

「まだ過大過ぎない?」

「これ以下だと俺の存在そのものが消えるぞ…」

というか、あなた達はそんな存在に頼ろうとしているのですが、そこん所はおけ?

「ふふっ。冗談よ」

「そんなに真に受けなくても大丈夫だから」

あなた達が言うと本当っぽいんだよなぁ…

「それじゃ、明日は頑張ろ!晃くん!」

「明日が楽しみね。頑張りましょう」

「ああ、そうだな。頑張ろうな」

「れい、ほの、応援してるから、頑張ってね」

そして、二人は図書室を後にした。

「大見得切ってたみたいだけど、大丈夫なの?」

成瀬が心配そうに尋ねてくる。

「大丈夫、とは言い切れないが、安心してくれ。だから、お前もお前の種目頑張れよ」

「…うん」

胸を張って大丈夫だとは言えない。だが、期待されている以上は本気でやるだけだ。

大丈夫、俺なら出来る。いや、やるんだ…。彼女達、皆の想いに応える為に…





今度は、皆の笑顔を奪わないように。

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