やはり先輩は残念だと思う
あの方が本格参入です。とにかく荒らします。
あの後、何とか成瀬をなだめ怒りを沈めて貰い、今は放課後、図書室で部活中なのだが…
「………」
「…つまんない…」
如何せんやることが無い。成瀬なんてさっきから、つまんないしか言わない機械みたいな感じになってるし。
「なんか面白い話してよ」
「えげつねぇ振りだな。俺は芸人じゃねぇし、スベらない話なんてそんなないぞ」
「なんかあるでしょ。ちょっとした笑い話とか」
「じゃあ俺の知り合いのお兄さんが、大学受験をした話をしようか」
「あ、オチ見えたからいいや」
「えぇ…」
まだ話の主題を言っただけだぞ…
ちなみにこの話のオチは、お兄さんが受験に失敗して、スベらない話なのに滑ってるやないか〜い!ってのだ。うん、そりゃオチ見えるわ。
「そういう成瀬はなんか無いのか?」
人を否定するならまずは自分からだ。
「じゃあ、恋バナでもする?」
「やめてくれ。血反吐を吐きそうだ」
「だと思った」
なんで女子は恋バナしたがるん?他人のノロケとか割とガチでキツくない?
「つーかなんでよりによって恋バナなんだよ。他にも話題あるだろ」
「女子の間で話すことって言ったら、恋バナと他の子の悪口くらいしかないし」
「何それ怖ぁ…」
普通に陰口叩きまくってるとか、恐怖でしかない。俺もよく言われてたんだろうなぁ。
「あ、あたしは基本的には恋バナしか参加しないから。陰口とかは言ってないから安心して」
「何を安心すればいいんですか…」
どの辺に安心出来る要素があるんですかねぇ…
「あの…恋バナってなんですか?」
いつの間にか天使さんが此方に来ていた。どうやら天使さんは恋バナをした事が無いようだ。
「え、えっと…とりあえず座ってください」
成瀬が自分の隣の椅子を引き、天使さんに座るよう促す。天使さんは「ありがとうございます」と笑顔で言って座る。うん、尊い。
「それで、恋バナとは、どういったものなのでしょうか?」
「えーっと、好きな人や付き合ってる人の話ですね」
「どういった事を話されるんですか?」
「例えば、『告白したいんだけどアドバイス頂戴!』とか、『最近彼氏と上手く言ってないんだよね』とか、そういう話ですね」
「へー、なんか素敵ですね」
一番素敵なのはあなたですよ。
まあ実際、俺も恋バナなるものはした事なかったので、多少なりとも参考にはなったかな。多分する機会ないと思うが…
「ん?でもお前、男苦手だったよな。楽しいのか?」
「話をするだけなら割と楽しいし、どういう男がいるかってのも聞けるからリハビリにもなるの。実際黒井くんの事もそれで聞いたしね」
なるほどね。成瀬なりの努力の一環でもあったのか。
「成瀬さんからはお話はしないのですか?」
「あたしから?うーん、最近はたまにするかなぁ…」
「え?お前から話す事あるの?」
「ちょ、ひどくない?あたしから話す事だってあるし」
「だってお前、男苦手じゃん。話題あるのか?」
「ま、まあ、そうだけど…」
そう言って、成瀬は黙ってしまった。余計な事言ったかなぁ…
すると、天使さんが「あっ!」と何かに気付いた様に言った。ちょっと天使〜(ちょっと男子〜風)、一つ一つの行動が可愛過ぎんよ〜。
「白峰くんの事ですか?」
「な!なんでそこでこいつの話が出てくるんですか!」
「成瀬さんと仲のいい男の子っていうと、やっぱり白峰くんかなって思いまして」
「な、なな!無いです無いです!こんなヘラヘラしてて、地味で暗くて、それで変態な奴!絶対ありえないです!」
そこまで否定する必要ないじゃないかよぅ…。あと俺はノーマルだ。変態じゃない。
「そうでしょうか。白峰くんは、優しくて頼り甲斐があって、凄くカッコいい男の子だと思いますよ?」
「だとしても!こいつだけは絶対ないですから!」
それは俺そのものの存在を否定しているという事かしら。もうね…泣いていいかな…?
というか天使さんが俺の事カッコいいって!カッコいいって!!もうね…泣いていいかな…?
すると突然、ドアが開く音がした。図書室に来客とか珍しいな。
足音は此方に近づいてくる。そして、本棚の影から姿を表す。
「あ!晃くん!」
「あ、ども」
来客者は水無月先輩だった。この人にはあまり会いたくないんだよなぁ…
水無月先輩は成瀬の方を見ると、
「あっ!!!」
「げっ!」
さっきの五割増しの明るい声で反応した。というか成瀬、女の子が『げっ!』とか言っちゃ駄目だろ。
「愛しのマイハニー恵ちゃーーーん!!」
「キャッ!!!」
そう言って、水無月先輩は成瀬に抱きつく。羨まけしからん!
「うーん!お肌スベスベ、柔らかくていい匂いするし、いつ抱いても最高!」
「ちょ、ちょっと離れてくださいよ、香織さん」
あのー、女子の皆さん?そういう事は男子のいないところでやって下さらない?私、どう反応したら分からないのよ。眼福だけどね。
しかし、水無月先輩は夢見がちな乙女成分だけでなく、百合成分もあったのか。つくづく残念な人だ。
「ん?今晃くん、今羨ましいとか思ったでしょ」
「お、思ってないですよ」
「またまた〜、強がっちゃって」
はい!本当は思ってます!強がってます!いやね、成瀬に抱きついている水無月先輩も、水無月先輩に抱きつかれてる成瀬も両方羨ましい。男子ならそう思うでしょ!?
「晃くんにもしてあげよっか?」
「!!!!?」(ガタッ!)
しまった!驚きすぎて机蹴った!
「あっはは!晃くん分っかりやす〜!」
いや男なら誰でもこんな反応するでしょ。するよね?
「ねぇ晃。あたしさ、今すっごいイラってきてるんだけど」
成瀬が機嫌悪いのは、水無月先輩のせいだと信じたい。
「か、香織ちゃん。きょ、今日はなんの用があって来たんですか?」
「その声は桜ちゃん!?私好みの美女が二人も!ここは楽園か!!」
「あ、あはは〜」
水無月先輩の暴走には、天使さんも苦笑いしかないようだ。この人すげぇな。
「水無月先輩、座ってください。そろそろ本題に入りたいんで」
「はーい、続きは話が終わってからね。恵ちゃん」
「いや続きとかないんで」
そうして、水無月先輩は俺の隣の席に座る。何故?
「今日はね、晃くんにお願いがあって来たんだよね」
「その前に聞きたい事があるんですが」
成瀬が口を挟む。やっぱり気付いちゃったか〜。
「ん?なにかな?」
「晃とはどういった関係で?」
うん、やっぱり聞くよね。だって俺と先輩じゃ接点見当たらないし。
「ふふふ〜、人には言えない関係かな〜」
「普通にあなたのバイト先でたまたま会っただけでしょうが…」
ただの知り合い以外の何物でもない。
「連れないな〜晃くんは」
「いや事実なんで」
「そんなんじゃ女の子にモテないゾ☆」
「普通の女の子は男を誑かす発言はしないと思いますよ」
「それはどうかな〜?女の子は意外とやり手だよ」
怖いな〜。最近女子の黒いとこばかり聞いてる気がする。女性不信になりそう。
「大体二人の関係は分かりました。晃への尋問は後でするとします」
あなたの場合、尋問で終わりそうにないんですが…
「じゃあ本題に入っていいかな?」
「あ、どうぞ」
成瀬の許可も降りたことで、ようやく本題に入る。
「それじゃあ晃くん」
水無月先輩は、俺の方を向き真剣な顔で話す。嫌な予感。
「私とデートしてくれない?」
天使さんの人気が凄い気がします。
いつか、天使さんの、天使さんによる、天使さんの為の番外編を書こうと思っているので、天使さん推しの方。お楽しみに。




