意外にも優しかったあの子
短めです。
話の展開的にもここで切るのが最善でした。
「晃!飯食おうぜ!」
昼休み、後ろから健が話しかけてくる。
「すまん。昼は別のやつと食う約束してる。」
「なんだなんだ?新しい友達でも出来たんか?」
「んなもんできるわけないだろ。普通に仁美とだ」
「お?これは二人の関係に進展あり的なパターンか?」
「ねーよ。まあそういうわけだ。すまん。」
「いいって。お前が幸せならそれでいい!」
やだなにこのイケメン。俺が女だったら惚れてるね。というかすでに目覚めそうまである。
健は恐らく部活仲間のとこへ行ったのだろう、足早に教室を出て行った。
『うわっ。ゴミの分際で灰田くんを追い出してる。サイテー』
『ゴミなんだからゴミらしくゴミ箱で食べればいいのに』
『ゴミなのになんで息してるの』
もはや俺は呼吸すら許されていないらしい。
俺も一応「ねぇ」有機生命体なんだ「ねぇ」から、呼吸くらいさせ「聞いてんの?」うっせーな、さっきから誰だよ。
声の方へ視線を向けると、隣の席の成瀬がこちらを見ていた。
「何でさっきから無視すんのよ」
「俺はお前の姉ちゃんじゃねぇぞ」
「は?つまんな。それ面白いと思ってる?」
ちょっとしたジョークのつもりだったが、あからさまにつまらなそうな顔されると凹むな…
「で、俺に何の用だ」
「あんたさ、少しくらいは言い返したらどうなの?」
「なんだ?俺に意気地なしって言いたいのか?」
「別に、あんたが意気地なしなんて思ってないし。ただ、周りからあんな風に言われてるのに我慢してる理由が分からないってだけ」
なるほどな。別に我慢している訳ではないのだが。というか、こいつの中で俺の評価高くないか?
「別に深い意味はねーよ。反撃したらその分、めんどくさくなりそうだからだ」
「ふーん、そうなんだ」
心底興味なさそうな反応だ。お前が聞いたんだろ。
だが、話は終わってないらしく、成瀬は言葉を続ける。
「あんたがそう言うならそれでいいんじゃない?でもさ、あんたが言われているのを見て、不快に思ったり、悲しく思ったりする人もいるってことは覚えときなさいよ?」
なんだ?こいつはなぜこんなことを…
「え?まさか、俺のこと心配してくれてんの?俺のこと好きなの?」
「は?なに言ってんの?キモ」
全く間を開けずに返答された。さすがにふざけ過ぎたか。
でもこいつなりに心配してくれてたのかもしれないな。
「ありがとな、心配してくれて。優しいんだな」
「…なに言ってんの。キモ…」
そう言って、照れ臭そうに顔を背けたのを見て、俺は不覚にも可愛いと思ってしまった。
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