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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
29/70

俺は近いうち死ぬんじゃないかとつくづく思う

モブかと思ってた二人もちょっとだけ、参戦します。まあ重要ポジではないので適当に可愛がってあげて下さい。

昼休み、俺は健と平沢(ひらさわ)相坂(あいさか)と三人で、昼食をとっていた。健曰く、リレーで一致団結するのだから、普段から仲良くしようということで、最近はこの四人で食べている。

「しかっし、白峰があんな事するとはな」

「そうだな、一事はどうなるかと思ったが。あれも全部計算か?」

平沢と相坂が聞いてくる。

「まさか。とりま空気を変えなきゃなと思って、声を掛けただけだ。その後は成り行きでどうにかなるだろと思ってな」

「でもよ。あれだけの不穏な空気を一瞬で変えちまうなんて、お前、只者じゃないな?」

「買いかぶりすぎだ。実際、俺一人じゃどうしようもなかったしな」

成瀬と健がいたから出来たのであって、俺一人では何も出来なかっただろう。

「まあ、お前がそうやって謙遜するならそれでもいいが、少なくとも俺たちは、お前を評価する」

「最初は暗くて怖え奴だと思ってたが、話して見ると意外といい奴なんだな」

「…入学当初の事は忘れてくれ…」

黒歴史、とまではいかないが、あまりいい思い出ではないからなぁ。

「違うぞお前ら。あれは晃のツンデレで、あの時はツン期、今はデレ期なんだ」

「どこに俺のツンデレの需要があるんだって…」

「俺には需要あるぜ!」

「気持ち悪!近寄るな!俺はノンケだ!」

お前、俺の事好き過ぎでしょ。

「いや、需要なら他にもあるぞ」

平沢が不吉な事を言う。

「どこにあるんだよ…」

「ここだよここ。な?拓海(たくみ)?」

「俺は一度も要求した覚えは無いぞ…」

「相坂…まさかお前…晃に気が…?」

(みのる)、灰田、表に出ろ。お前らに礼儀というものを叩き込んでやる」

「やっべ、拓海がキレた。逃げるぞ、灰田!」

「おう、こんなところで死にたく無いからな!」

そう言って、二人は教室を出て行った。なんだこれ…

「…ったく。面倒なのが増えてより面倒になりやがって」

「全くだ。馬鹿が揃うとろくな事がないな」

「お互い、苦労してるな」

「ところで相坂、二人きりだからって襲わないでくれよ」

「お前まで言うか…」

「冗談だ」

今では、二人とも仲良く話せるようになった。一学期と比べると、驚くべき進歩だなぁ…

「そういや相坂、桐島ってどんな奴か知ってるか?」

桐島 美沙、今朝リレーのメンバーに選ばれた女子の名前だ。

「桐島か…。同じテニス部だが、男子と女子が合同で練習する事なんてないからな。済まないが話した事は無い」

「そうか。悪いな、余計な事聞いて」

「此方こそ役に立てなくてすまん」

同じ部活でも交流は無いか…

「まあ、お前が気に病む事じゃない。バトンを受け取るのは俺だからな」

「そうだったな。まあ俺も、桐島が上手く馴染めるようにフォローしたかったからさ」

「ふっ…お人好しだな」

相坂はそう言って笑うが、嫌な感じはしなかった。なにこれ!友達っぽい!

それから俺と相坂は、昼休み中他愛の無い話をして過ごした。

健と平沢が帰ってきたのは、昼休みの終わり頃だったが、相坂は逃す事は無く、二人を授業開始ギリギリまで締めていた。怖えな…あいつ…



六時限目の体育、今週末に控えた体育祭の練習の時間。

「じゃあ俺たち三人はリレーの練習してるから、お前らは別の練習しといてくれるか?」

「そうね、他の競技もある事だし、リレーばかりやってる訳にはいかないものね」

二人の意見はもっともだ。問題は何を練習するかだが…

「じゃあ灰田くん、二人三脚の練習しない?」

「お、いいぜ。やるか!」

そう言って、二人は紐を取りに行った。この流れはまずいやつだ…

「じゃ、じゃあ俺は借り物競争の練習でもしようかな」

「運任せの競技に練習なんて必要ないでしょう。物事の優先順位も考えられないの?」

「じゃ、じゃあ、桐島のバトンタッチにアドバイスを…」

「安心しろ。俺達がちゃんと説明する」

「う、うん。さ、流石に三人は多いかな…」

桐島にも断られた…。これもう絶望しか無いよな…

「お、多くたっていいじゃないか!損する事なんてな」

「あなたの優先事項は二人三脚に決まっているでしょう?早く準備しなさい」

「ま、待ってくれ!俺には他にやりたい事が…」

「それとも、そんなに私との二人三脚が嫌なのかしら?」

「そ、そんな事ないです…」

「そう。ならいいわよね」

なんでもすると言ってしまった手前、拒否する事は許されていない。なんであんな事言ったかな俺…

別に鈴井との二人三脚が嫌な訳ではない。ただ、さっきから仁美と成瀬からの視線が怖い。そう、さっきから殺気が凄いのだ!(激ウマギャグ)…現実逃避しても仕方無いよな…

とにかく、俺はこの先生き延びるために、この二人三脚の練習をつつがなく終わらせなければならない。最近命の危機が多い気がする。

二人三脚用の紐を貰い、準備が整う。

「ちなみに、変な事をしたらどうなるか、分かってるわよね?」

「ど、どうなるんだ?」

一応、命の危険がありそうかどうかを確認する。

「切断するわ」

何を?とは聞けなかった。手だよな?悪くても足だろう。俺が最初に想像した場所だけは無いと信じてる。

お互いの足に紐を結び、鈴井と肩を組む。やべぇ!美女の肩を抱いちゃってるよ!嬉しい事のはずなのに恐怖でいっぱいなのは何故だろう!

「今変な事考えてない?」

「か、考えてない考えてない!」

純粋に美女との密着を楽しんでいただけだ。変な事など考えてはいない。

「そ、それより、掛け声はどうしようか」

「そうね。無難に、一、二、一、二、でいいんじゃないかしら」

「幼稚園児の行進みたいだな」

「幼稚園児並の頭のあなたにはちょうどいいんじゃない?」

「自分も言うってことを忘れるなよ」

「あなただけ言えば事足りるでしょう?」

「お互い同じ事を考えてたら成立しないって分かってる?」

マジでこいつと上手くいく気がしない。

「冗談は置いといて、別に掛け声なんて無くても大丈夫よ。私があなたに合わせるから」

「そんな簡単に出来るのか?」

「単細胞のあなたの思考を読む事くらい容易いわ」

「余計な事言わなきゃ、カッコいいんだけどなぁ…」

俺の周りに残念美人多くない?まともなの成瀬くらいだよ?天使さん?あのお方は天使なので別枠ですよ。

「…切断する?」

「やめてください死んでしまいます」

怖!思考だけじゃなくて心読めるのかよ。だとしたら俺の命は風前の灯火だな。

「まあいいわ。とりあえず練習しましょう。切断はその後考えましょう」

「それは事実上の死刑宣告では?」

切断が決定事項だったら、俺は練習を終わらせる訳にはいかなくなる。

終わらせなければ、『いつまでくっついてんのこの変態!』とか言われて成瀬に殴られ、終わらせれば切断が待っている。あ、死ぬしかないやん。

大体なんでこんな状況になってるんだ。大元はどこだ?俺が鈴井と二人三脚をやる事になったのは俺の土下座のせいで、その土下座は成瀬とのあれが拡散されたからで、そもそも成瀬とのあれが拡散されたのは、仁美と勝樹の件を手伝っていたからであって、手伝う事になったのは勝樹があんな相談をしたからだ。うん。全部勝樹のせいだな。俺が死んだらあいつを末代まで呪ってや

(ふーーーー)

「ほわああぁ!!!?」

耳に風が!何事!?

「私を無視するなんて失礼ね。教育が必要かしら?」

どうやら鈴井が俺の耳に息を吹きかけたみたいだ。心臓に悪いからやめてくれよ…

「すまん。少し考え事してた」

「この状況で私以外の事を考えるなんて。私以外の事を考えられないように教育する必要がありそうね」

「それは恐怖で支配するってことですか…?」

「さあ、どうでしょうね?」

「勘弁してください…」

なんか俺の寿命がマッハで削られている気がする…。

「それじゃあ早く練習をしましょう」

「もう…なんでもいいです…」

ようやく、二人三脚の練習が始まる。

「本当に、大丈夫なんだろうな?」

「ええ。あなたが余程悪いフォームで走らない限りは、問題ないと思うわ」

鈴井がそう言うならお言葉に甘えさせてもらおう。

俺は軽く走り始める。すると鈴井は、俺と寸分の狂いの無いタイミングで同じように走る。え?ちょっと異常なほど上手くない?

「お前…すげぇな…」

「単細胞の思考を読む事くらい容易いと言ったでしょう?あなたの事なんて何でもお見通しよ」

ん?今何でもって言ったな?

「じゃあ今俺が考えてる事分かるか?」

「『流石鈴井様!俺達に出来ない事を平然とやってのける!そこに痺れる!!憧れるぅ!!!一生奴隷としてこき使ってください!どこまでもついて行きます!』と、思っているわね」

「前半は大体合ってるが、後半は絶対ありえないな。俺に奴隷願望は無い」

「そうなの?一部の男はそう言ってきたのだけど」

「言われたことあるのかよ!」

「もちろん、丁重にお断りしたわ」

「そりゃそうだろな!俺だってそんな変態嫌だわ!」

というか、俺はその変態達と同レベルと思われていたのか…。めっちゃショックだわ…

それからしばらく、お互いのペースを確認するために練習する。

練習をしているとあっという間に授業終了時刻になってしまった。やべぇ…。殺られる…

「えっと…鈴井さん…」

「?なにかしら」

「あの…どうか寛大な処置を…」

「ああ、そのこと。そうね。今回だけは大目に見てあげようかしらね」

良かった…。死なずに済んだ…

「でも、今度は無いと思いなさい?」

「き、肝に銘じておきます」

死期が少し延びただけのような気がする…

まあ今考えても仕方ないな!今生きてるだけでも良しとしよう!

結んである紐を外し、二人三脚状態から解放される。自由って素敵!

俺が教室へ向かおうと歩き出すと、

「ねぇ晃。あたしさ、すっごい機嫌悪いんだけどさ。理由、分かるよね?」

後ろから凄く冷たい声をかけられた。どうやら俺に生き延びる道は残されていなかったようだ。

執筆してて一番楽しいのは、晃と鈴井との会話です。ついつい長くなり過ぎて短くする事もしばしば。いつか番外編で思いっきり書いてみようかしら。

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