写真は人の魂を抜くもの
プリクラなんて数年撮ってないんで、完全に想像です。小説書くために体験したかったけど、相手がいませんでした。泣きそう…
ブクマ1000突破しました!謝辞などは後書きで。
「プリクラエリアって男子禁制じゃないのかよ…。店員さんなんも言ってこなかったのが不思議でならないんだが…」
「男子のみの場合立ち入り禁止ってことじゃない?」
「女子のみ、またはカップル客専用と書いてあるのですが…」
俺が二股掛けてる最低野郎と思われたって事でおけ?
「ところでこれはどうやるの?」
「え?鈴井さん撮ったことないの?」
「え、ええ。このエリアは初めてだから…」
一人で入るのは辛いよね。分かるよ、その気持ち。
「じゃあ白峰くんは?」
「ある訳ないだろ。健と撮るのか?気持ち悪りぃ」
「だよね〜。っていうか選択肢が灰田くんとしかないんだ…」
俺と一緒にゲーセンに来る奴なんて健くらいしかいないだろ?仁美や勝樹?ボウリングとか体動かす系しかやらんなぁ…
「まあいいや。私出来るし」
「お、おう、すまねぇ…」
女の子にやらせるとか晃サイテー、って仁美に言われるだろうなぁ…
「よし!オッケー!じゃあ白峰くん、真ん中立って」
「………………は?」
「だって男子が端だとバランス悪いてしょ?」
「だからってな…」
いやね、可愛い女子二人に挟まれるとか夢のシチュですよ。でもね?こちらにも心の準備という物が必要な訳でありましてね?
「ほら!早く来て!」
「ちょっ…引っ張るなって」
荒川に袖を引っ張られて、強引に真ん中に立たせられる。はぁ…受け入れるしかないのか…。ただでさえ、美女との写真は緊張するのになぁ…
『それじゃあ撮るよ〜。ポーズをとってね!』
ポーズ?何じゃそりゃ?
荒川を見ると、右手でピースを作っている。
鈴井を見ると、どうしたらいいか分からないのか、直立不動だった。凄く分かるぞその気持ち。だって俺も直立不動だもん。
モニターを見ると、俺達三人が写っていた。微妙に横が見切れてるな。
「うーん、横切れちゃってるね。もうちょっと近づこうか」
「そ、そうみたいね。仕方ないわね」
!!!!!!!!!?
二人は俺との距離を詰める。すると、俺と二人の腕が密着する。
「よし!これならはいるね」
よし!じゃねーよ!俺の精神が良くねーよ!
二人に両側から挟まれる形でいるので、身動きが取れない。というより、動いたらより面倒なことになりそうなので、動けない。我慢するしかないか…。俺の心音響かないでくれよ…
『撮影まで、3、2、1、(カシャ)』
ようやく一枚目の写真が撮り終わる。これがあと二回続くのか…。死にそう…
『しゅ〜りょ〜。外のモニターでお絵描きしてね!』
ようやく撮影が終わる。写真を撮られると魂を抜かれるって本当なんじゃね?
俺は美的センスはからっきしなので、お絵描きは二人に任せる。顔にイタズラ描きとかはしないでくれよ…
荒川の方を覗くと、一枚目の写真に大量の星と共に『な か よ し』とキラキラ文字で書かれていた。流石JK、センスがキラキラしている。
鈴井の方を覗くと、三枚目の俺がヤケクソで顔に手を当て厨二ポーズをとっている写真に『我こそが混沌の王なり』と、カッコいい感じで書かれていた。
「何やってんだよお前…」
「似合っているでしょう?いい具合に痛々しくて」
「それは俗に言うイジメというやつでは?」
「失礼ね。愛のあるいじりと言って欲しいわ」
「愛なんてねーだろ…」
馬鹿にされてる気しかしない。頼むから拡散はしないでくれよ…
気がつけば、時間切れ間近となっていた。二枚目はどうなったのだろう。
『お絵描きタイムしゅ〜りょ〜。横から写真が出るから、忘れずに受け取ってね!』
二枚目を確認する前に終わってしまった。まあプリントされたのを見ればいいか。
暫く待っていると、写真が出てくる。荒川はそれを取り、何故か持っていたハサミで切り分ける。
「はい。これが白峰くんの分。で、こっちが鈴井さんの」
渡された写真は、何故か一枚目と三枚目だけだった。
「なあ、二枚目は?」
「あはは!何これ。白峰くんカッコイー」
「白峰くんがあまりにもカッコよかったからついやってしまったわ。反省も後悔もしてないけど」
二人は会話に花を咲かせていて、俺の声など届いていない様だ。あの…二枚目…
「はぁ〜。楽しかった〜」
「俺は凄く疲れたな」
「でも楽しかったでしょ?」
「ま、まあ、そうだな」
楽しかったのは事実なので、俺は頷く。
「鈴井さんも今日はありがと。すっごく楽しかったよ」
「私も楽しかったわ。誘ってくれてありがとう」
「うん!それなら良かった!」
荒川は満面の笑みで言う。
「それじゃ、私の家こっちだから」
「送って行かなくて大丈夫か?」
「もうすぐそこだし大丈夫だよ。じゃあまた明日学校で。またね!晃くん!れいちゃん!」
そう言って、荒川は走って行った。呼び方変わってるし…
鈴井の方を見ると、荒川が走って行った方を眺めてぼーっとしていた。
「鈴井?どうした、大丈夫か?」
俺が声を掛けると、はっとして、直ぐにいつもの調子に戻った。
「なんでもないわ。行きましょうか」
そう言って、鈴井は歩き出し、俺もそれに続く。
「今日は済まなかったな。色々と振り回しちまって」
「いえ、大丈夫よ。さっきも言ったけど、本当に楽しかったから」
「そうか。それなら良かった」
「…優しいのね」
「俺がか?」
「ええ。大抵の男なんて普通、私の気を引くために、くだらないことをしてくるわ。私の事なんて考えずに」
「それは俺にモテる自慢をしてると捉えていいか?」
「いちいち茶々を入れないとまともに話も聞けないの?小学生の方がまだ静かに聞いているわよ」
「すまねぇ。続けてくれ」
「…でも貴方は違う。常に他人を気遣って、それでいて優しくて」
「それが普通だろ」
「普通じゃないわ。少なくとも、私は出会ったことがなかったもの」
「でもよ、それなら健とか勝樹とかも、そうじゃないのか?」
「そうかもしれないわね。それでも三人、多数派とは言えないでしょう?」
確かにな。こいつがどれだけの男に言い寄られたかは知らないが、少なくとも俺よりは多くの男を知っているだろう。
「でもあなたにはそれを帳消しにするくらいには、欠点があるのだけど。本当、残念な人」
「うるせー。欠点っていうんじゃねぇ。チャームポイントと言え」
「流石にその開き直りには、呆れを通り越して吐き気を催すわ」
「普通そこは尊敬しない?」
「あなたに尊敬する要素がどこにあると言うの?」
「正論過ぎて何も言えね…」
でもさ…。俺にもどこかしらには尊敬出来るところくらいあるだろ。あるよな?あると信じたい。
気がつくと、駅の近くまで来ていた。
「ねぇ…あなたは…」
「ん?なんだ?」
「…いえ、なんでもないわ」
鈴井は何かを言おうとして、やめる。何を言おうとしたのだろう。
そこからは無言で歩き、駅に着く。
「それじゃあ、私はこっちだから」
鈴井はどうやら俺とは反対方向の電車に乗るようだ。
「ああ、じゃあまた明日学校でな」
「ええ。また明日、晃くん」
そう言って、鈴井はホームに向かった。また呼び方変わってるし…
でもまあ、今回は前回と違って、最後の最後でトラブル発生とかにはならなかったな。ほんと良かった。
俺はなんとなくポケットからスマホを取り出し、開く。
ん?成瀬からチャットが来てるな。珍しい事もあるものだ。
『明日、覚えときなさいよ』
何も装飾されていない文字列は、俺に恐怖を植え付けるには十分だった。
ブクマ1000、本当にありがとうございます。四桁ですよ四桁!ブクマ2の時じゃ考えられません!初期の方からご覧になってくださっている方々、また最近お知りになってくださった方々、全ての読者様に感謝を込めて、お礼とさせていただきます。重ね重ね、本当にありがとうございます!




