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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
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写真は人の魂を抜くもの

プリクラなんて数年撮ってないんで、完全に想像です。小説書くために体験したかったけど、相手がいませんでした。泣きそう…

ブクマ1000突破しました!謝辞などは後書きで。

「プリクラエリアって男子禁制じゃないのかよ…。店員さんなんも言ってこなかったのが不思議でならないんだが…」

「男子のみの場合立ち入り禁止ってことじゃない?」

「女子のみ、またはカップル客専用と書いてあるのですが…」

俺が二股掛けてる最低野郎と思われたって事でおけ?

「ところでこれはどうやるの?」

「え?鈴井さん撮ったことないの?」

「え、ええ。このエリアは初めてだから…」

一人で入るのは辛いよね。分かるよ、その気持ち。

「じゃあ白峰くんは?」

「ある訳ないだろ。健と撮るのか?気持ち悪りぃ」

「だよね〜。っていうか選択肢が灰田くんとしかないんだ…」

俺と一緒にゲーセンに来る奴なんて健くらいしかいないだろ?仁美や勝樹?ボウリングとか体動かす系しかやらんなぁ…

「まあいいや。私出来るし」

「お、おう、すまねぇ…」

女の子にやらせるとか晃サイテー、って仁美に言われるだろうなぁ…

「よし!オッケー!じゃあ白峰くん、真ん中立って」


「………………は?」


「だって男子が端だとバランス悪いてしょ?」

「だからってな…」

いやね、可愛い女子二人に挟まれるとか夢のシチュですよ。でもね?こちらにも心の準備という物が必要な訳でありましてね?

「ほら!早く来て!」

「ちょっ…引っ張るなって」

荒川に袖を引っ張られて、強引に真ん中に立たせられる。はぁ…受け入れるしかないのか…。ただでさえ、美女との写真は緊張するのになぁ…

『それじゃあ撮るよ〜。ポーズをとってね!』

ポーズ?何じゃそりゃ?

荒川を見ると、右手でピースを作っている。

鈴井を見ると、どうしたらいいか分からないのか、直立不動だった。凄く分かるぞその気持ち。だって俺も直立不動だもん。

モニターを見ると、俺達三人が写っていた。微妙に横が見切れてるな。

「うーん、横切れちゃってるね。もうちょっと近づこうか」

「そ、そうみたいね。仕方ないわね」

!!!!!!!!!?

二人は俺との距離を詰める。すると、俺と二人の腕が密着する。

「よし!これならはいるね」

よし!じゃねーよ!俺の精神が良くねーよ!

二人に両側から挟まれる形でいるので、身動きが取れない。というより、動いたらより面倒なことになりそうなので、動けない。我慢するしかないか…。俺の心音響かないでくれよ…

『撮影まで、3、2、1、(カシャ)』

ようやく一枚目の写真が撮り終わる。これがあと二回続くのか…。死にそう…



『しゅ〜りょ〜。外のモニターでお絵描きしてね!』

ようやく撮影が終わる。写真を撮られると魂を抜かれるって本当なんじゃね?

俺は美的センスはからっきしなので、お絵描きは二人に任せる。顔にイタズラ描きとかはしないでくれよ…

荒川の方を覗くと、一枚目の写真に大量の星と共に『な か よ し』とキラキラ文字で書かれていた。流石JK、センスがキラキラしている。

鈴井の方を覗くと、三枚目の俺がヤケクソで顔に手を当て厨二ポーズをとっている写真に『我こそが混沌の王なり』と、カッコいい感じで書かれていた。

「何やってんだよお前…」

「似合っているでしょう?いい具合に痛々しくて」

「それは俗に言うイジメというやつでは?」

「失礼ね。愛のあるいじりと言って欲しいわ」

「愛なんてねーだろ…」

馬鹿にされてる気しかしない。頼むから拡散はしないでくれよ…

気がつけば、時間切れ間近となっていた。二枚目はどうなったのだろう。

『お絵描きタイムしゅ〜りょ〜。横から写真が出るから、忘れずに受け取ってね!』

二枚目を確認する前に終わってしまった。まあプリントされたのを見ればいいか。

暫く待っていると、写真が出てくる。荒川はそれを取り、何故か持っていたハサミで切り分ける。

「はい。これが白峰くんの分。で、こっちが鈴井さんの」

渡された写真は、何故か一枚目と三枚目だけだった。

「なあ、二枚目は?」

「あはは!何これ。白峰くんカッコイー」

「白峰くんがあまりにもカッコよかったからついやってしまったわ。反省も後悔もしてないけど」

二人は会話に花を咲かせていて、俺の声など届いていない様だ。あの…二枚目…



「はぁ〜。楽しかった〜」

「俺は凄く疲れたな」

「でも楽しかったでしょ?」

「ま、まあ、そうだな」

楽しかったのは事実なので、俺は頷く。

「鈴井さんも今日はありがと。すっごく楽しかったよ」

「私も楽しかったわ。誘ってくれてありがとう」

「うん!それなら良かった!」

荒川は満面の笑みで言う。

「それじゃ、私の家こっちだから」

「送って行かなくて大丈夫か?」

「もうすぐそこだし大丈夫だよ。じゃあまた明日学校で。またね!晃くん!れいちゃん!」

そう言って、荒川は走って行った。呼び方変わってるし…

鈴井の方を見ると、荒川が走って行った方を眺めてぼーっとしていた。

「鈴井?どうした、大丈夫か?」

俺が声を掛けると、はっとして、直ぐにいつもの調子に戻った。

「なんでもないわ。行きましょうか」

そう言って、鈴井は歩き出し、俺もそれに続く。

「今日は済まなかったな。色々と振り回しちまって」

「いえ、大丈夫よ。さっきも言ったけど、本当に楽しかったから」

「そうか。それなら良かった」

「…優しいのね」

「俺がか?」

「ええ。大抵の男なんて普通、私の気を引くために、くだらないことをしてくるわ。私の事なんて考えずに」

「それは俺にモテる自慢をしてると捉えていいか?」

「いちいち茶々を入れないとまともに話も聞けないの?小学生の方がまだ静かに聞いているわよ」

「すまねぇ。続けてくれ」

「…でも貴方は違う。常に他人を気遣って、それでいて優しくて」

「それが普通だろ」

「普通じゃないわ。少なくとも、私は出会ったことがなかったもの」

「でもよ、それなら健とか勝樹とかも、そうじゃないのか?」

「そうかもしれないわね。それでも三人、多数派とは言えないでしょう?」

確かにな。こいつがどれだけの男に言い寄られたかは知らないが、少なくとも俺よりは多くの男を知っているだろう。

「でもあなたにはそれを帳消しにするくらいには、欠点があるのだけど。本当、残念な人」

「うるせー。欠点っていうんじゃねぇ。チャームポイントと言え」

「流石にその開き直りには、呆れを通り越して吐き気を催すわ」

「普通そこは尊敬しない?」

「あなたに尊敬する要素がどこにあると言うの?」

「正論過ぎて何も言えね…」

でもさ…。俺にもどこかしらには尊敬出来るところくらいあるだろ。あるよな?あると信じたい。

気がつくと、駅の近くまで来ていた。

「ねぇ…あなたは…」

「ん?なんだ?」

「…いえ、なんでもないわ」

鈴井は何かを言おうとして、やめる。何を言おうとしたのだろう。

そこからは無言で歩き、駅に着く。

「それじゃあ、私はこっちだから」

鈴井はどうやら俺とは反対方向の電車に乗るようだ。

「ああ、じゃあまた明日学校でな」

「ええ。また明日、晃くん」

そう言って、鈴井はホームに向かった。また呼び方変わってるし…

でもまあ、今回は前回と違って、最後の最後でトラブル発生とかにはならなかったな。ほんと良かった。

俺はなんとなくポケットからスマホを取り出し、開く。

ん?成瀬からチャットが来てるな。珍しい事もあるものだ。


『明日、覚えときなさいよ』


何も装飾されていない文字列は、俺に恐怖を植え付けるには十分だった。

ブクマ1000、本当にありがとうございます。四桁ですよ四桁!ブクマ2の時じゃ考えられません!初期の方からご覧になってくださっている方々、また最近お知りになってくださった方々、全ての読者様に感謝を込めて、お礼とさせていただきます。重ね重ね、本当にありがとうございます!

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