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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第二章 俺はどうあがいても目立ってしまうらしい
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ギャップ萌えって…いいよね…

あの方の正体が、ついに明かされます。

誰かって?本編をどうぞm(_ _)m

レストランを出て、俺達はあてもなく歩いていた。

「ねぇ、次はどこ行く?」

「別に俺はどこでも構わないぞ」

「えー、それじゃつまんな〜い」

と言われても、俺には何も思いつかんぞ。

「じゃさ、ゲーセン行こゲーセン!なんかオススメのゲームとか教えて!」

「ゲーセンねぇ…」

「あれ?あまり乗り気じゃない?」

「ここあまり機種ありそうにないからなぁ…」

俺がいつも行くゲーセンはゲーマー向けで、ここにあるゲーセンはファミリー向けだと思われる。俺がやりたい機種は無い可能性がある。

「私クレーンゲームとかUFOキャッチャーとかやってみたい」

「ここのやつ設定辛いと思うぞ。あとそれどっちも同じやつな」

なんで呼び名が二つあるんだろうな。ちなみに俺はクレーンゲーム派。

「とりあえず行ってみよ!」

「まあそうだな。やる事も無いし」

反対する理由も無い。他にやる事も無いし、行ってみてもいいだろう。


「おお…いっぱいあるね…」

ゲーセンには大量のクレーンゲームがあった。ショッピングモールのゲーセンってクレーンゲーム多いんだな。覚えとこう。

「ねえ!あれ可愛い!」

そう言って、荒川が指差す先には、とあるゲームのマスコットキャラクターのぬいぐるみがあった。

「あれ欲しいなぁ…。とれるかなぁ…」

「三本アーム…。なるほど…。割と簡単に取れそうだな」

「え?そうなの?クレーンゲームって難しいイメージあるけど」

「二本アームのやつは難しいな。アームの力が弱くて持ち上げにくい。まあバランスを完璧に読み切れば持ち上げられない事も無いが。だから多くの人は回数をかけて、少しずつバランスを崩したり、獲得口まで引き寄せたりするんだ。その点三本アームは、アームが弱くても、重心さえしっかり掴めば簡単に持ち上がる。というか持ち上がる様になってる。だから運が良ければ一発で取れるし、初心者でも取りやすいんだ」

「へ、へー。そうなんだ」

しまった。ついヲタク特有の早口が出てしまった。これをやられた方はどう反応していいか分からず、苦笑いするしかなくなってしまうという、恐ろしい行為だ。何やってんだ俺…

「ようするに、これなら私でも取れるかもって事だよね!」

「ま、まあ、そういう事だ」

ドン引きされたと思ったが、案外普通に返してくれた。荒川が優しい奴で良かった。

「よーし、一発でとっちゃうよー!」

そう言って、荒川は筐体に百円を入れる。

アームを操作し、ぬいぐるみの上まで持っていく。ちょっと左にずれてるか?

アームはぬいぐるみを掴み、上まで持ち上げる。が、アームが上で停止した衝撃で、ポロリとアームから落ちてしまった。

「あーもう!なんで!持ち上がったじゃん!」

「ちょっと左に逸れてたな。あれじゃあバランスが悪くて落ちちまう」

「んー!もう一回!」

そう言って、再び百円を入れる。

今度はちょうど真上に来るようにアームを操作した。上達早いな。

アームはぬいぐるみを持ち上げるが、やはり停止した衝撃で落ちてしまった。

「なんで!今の完璧だったじゃん!」

「なるほど、重心が少し偏ってるな」

「ん?どうゆうこと?」

「中に入ってるビーズが少し偏ってるんだと思う。それで重心が少しずれてんだろうな」

「へー、そんなところまでよく分かるね」

荒川は、再び百円を入れる。

「少し、左よりにしてみてくれ」

「え?なんで?さっきそれで落ちたじゃん」

「さっきとはぬいぐるみの向きが違うからな。多分今はそっちが重心だ」

「うん、わかった!」

荒川は今度はぬいぐるみの少し左側を掴む。操作うまいなぁ…

アームはぬいぐるみを持ち上げ、今度は停止の衝撃でも、動き出した衝撃でも落ちずに、獲得口まで運んでいった。

「やった!取れた!」

ぬいぐるみを抱え、喜ぶ荒川。うん、女の子の笑顔はいい物だ。

「ありがとー!白峰くんのアドバイスのおかげだよ!」

「どういたしまして。喜んでくれてなにより」

「じゃあ次はなにしよっ…あれ?」

「ん?どうした?」

荒川が何か見つけたようだ。

「あそこにいるの、鈴井さんじゃないかなって」

「どこだ?」

「ほら。あそこでクレーンゲームやってる」

荒川が指差した先には、何やらとても真剣な顔でクレーンゲームをやってる美少女がいた。…マジで鈴井やんけ…

「ちょっと声掛けてみる」

「おい!ちょっ!」

俺が止める間もなく、荒川は鈴井の方へ向かう。

荒川が鈴井の所に着いたのは、ちょうどぬいぐるみがアームから落ちた時だった。タイミングいいな。

「くっ…また…」

「こんにちわ。鈴井さん」

「!!!!!!!!!?」

鈴井の奴、尋常じゃないくらい驚いてるな。まあいきなり声を掛けられたんだから無理も無いか。

「何取ろうとしてるの?」

「こ、これは…その…」

そう言って、鈴井は筐体を隠そうとする。あなたの細身じゃ無理だと思いますよ?太くても無理だろうけど。

俺は横から覗き込む。

「へー、猫か」

「!!…………」

真っ赤になって俯いてしまった。口に出す必要はなかったな。

しかし、猫が好きなのか、かなり意外だ。

「鈴井さん猫が好きなの?可愛い〜!」

「い、いえ、そういう訳じゃ…」

「もう、恥ずかしがらなくていいのに」

「…………」

そう荒川が言うと、また俯いてしまった。うん、いつもと違う鈴井、いいね。

「ところで、もうそれやらないのか?」

「えっと…それは…」

あ、これはあれだ。俺達がいるから恥ずかしくて出来ないやつだ。俺達がこの場から離れればいいんだろうけど、荒川が離れないだろうなぁ。ならこいつの性格を考えると、俺に取れる最良の行動は…

「あーなるほど、取れそうにないから諦めるのね」

「…言ってくれるじゃない。見てなさい、今すぐ取ってその発言をした事を謝らせてあげるわ」

やっぱり挑発に乗ってきた。意外と単純だな。

鈴井は百円を入れる。失敗。「あ…」また百円を入れる。失敗。「くっ…」また百円を入れる。失敗。「また…」こりゃ駄目そうだな。

「鈴井、取ってやろうか?」

「あなたに取ってもらうくらいなら破産してやるわ」

そこまでかよ…。負けず嫌いにも程があるだろ…

「じゃあ一旦俺に変わってくれ。順番待ちしてると日が暮れそうだ」

「そ、そう…。なら、仕方ないわね」

露骨に嫌そうな顔するなぁ。

俺は百円を入れ、アームを操作する。…うん、この辺だな。アームはぬいぐるみを持ち上げ、そのまま落ちずに獲得口まで運ぶ。無事ゲットだ。

「…嘘…でしょ…」

「へー、やっぱり上手いんだな〜」

俺はぬいぐるみを取り、鈴井に差し出す。

「ほれ、やるよ」

「…………え?」

「いや、別に俺似たようなの持ってるし、いらんから」

実際、家には以前取った似たようなぬいぐるみがある。二つもいらないからな。

「でもあなたが取ったものでしょう。ならばあなたが持つ責任があるわ」

「取った本人に権利があるんだからどう使おうが勝手だろ。だからお前に渡すのも問題ない」

「ただより高い物はない。無償で施しを受けるつもりはないわ」

ああ言えばこう言うなこいつ。屁理屈の度が過ぎるぞ…

「じゃあ百円でお前に売る」

「…………え?」

「そうすれば、俺は損しないし、お前は目当ての物を手に入れられる。それなら問題ないだろ?」

「そ、それはそうだけど…」

「じゃあ決まりだな」

俺は強引に鈴井にぬいぐるみを押し付ける。鈴井は渋々ながらも受け取り、俺に百円を渡す。取引成立だ。

「そういえば鈴井さん。今日はいつもと雰囲気ちがうね」

「そ、そうかしら…」

「なんかいつもより可愛い?」

荒川に言われて気付く。いつもの綺麗系とは違い、今日は少し柔らかい印象だ。

白地に英文字の入ったシャツに黒のカーディガン、膝より少し下くらいの長さの灰色に赤いチェックのスカート。ドイツの国旗の缶バッジに鈴のストラップの付いた肩掛けバック。そして薄茶のキャスケット。うん、なんというか…

「ヲタサーの姫、いや女神だな」

俺が言うと、鈴井は持っていたぬいぐるみに顔を埋めてしまった。

正直、こんな美少女がヲタサーにいたら、某世紀末伝説の様に血で血を洗う争いが勃発する事間違いないと思うが。

「え?おたさー?なにそれ?」

「知らなくていいと思うぞ」

荒川は頷きながらも、「おたさー?おたふくさーせん?」とか呟いていた。流石にそれの略語だったら笑うわ。

しかし、一つ気になるところがある。何故ドイツと鈴なんだろう。

ドイツ…鈴…ベル…ベルリン…!?

俺は一つの仮説に行き着く。

「鈴井、ベルリンってわかるよな?」

「!!!!!!!?」

物凄い勢いでぬいぐるみから顔を上げ、俺を見る鈴井。ビンゴだ…

「ん?ベルリンがどうしたの?」

「とあるゲームで『べるりん』って名前のプレイヤーがいてな」

それを聞き、鈴井の顔が青ざめていく。

「うん、それがどうしたの?」

「実はな、そのプレイヤーが鈴井なんじゃないかって思ってな」

鈴井の顔が絶望に満ちた顔になる。なんか面白いな。

「ふーん、でもなんで?」

「鈴ってさ、英語でべるぶっ!」

俺が根拠を言おうとした瞬間、鈴井にぬいぐるみで顔を殴られた。あなた、そんな事する方でしたっけ?

「ちょっ、大丈夫?」

「ん?ああ、ちょっと驚いただけだ。問題ない」

荒川に声を掛けられ、俺は心配無いとアピールする。

鈴井の方を見ると、顔を真っ赤にして、肩で息をしていた。

「も、もういいでしょう?お願いだから、許して…」

鈴井は少し涙目で言う。流石にこれ以上は可哀想か。

しかしまあ、美女の泣き顔と言うのもまたそそるなぁ…

「すまんすまん。もうやらんからそんな怒るなって」

「そ、そう。ならいいけど…」

そう言って、再びぬいぐるみに顔を埋める。

「え?何?白峰くん。教えて」

「鈴井に頼まれちゃったからな。これ以上は流石に教えられん」

「えー…つまんな〜い」

荒川には申し訳ないが、流石に教えられないな。だが、鈴井をいじるネタを手に入れられた事だけは、収穫としておこう。…俺こんなゲス野郎だっけ?

鈴井さんのゲーム名の由来はなんなのか。皆さんも推理してみてください。答えは次回の前書きで。

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