俺の周りは、多分いい方に変わっている
今回で、第一章は終わりとなります。
鈴井ファン、天使ファンの皆様、お待たせいたしました。久しぶりの登場です。
あと、10万PV達成いたしました。本当にありがとうございます!
「…はぁー、あんまり景色楽しめなかった」
背伸びをしながら成瀬が言う。
「どっかの誰かさんが愚痴り始めたからな」
「別に無視してくれても良かったんだけど?」
いや無視出来るわけねーだろ…
『あれ?成瀬さんと…白峰さん…?』
どこからか声が聞こえる。辺りを見回すと、昼間見かけた男女の二人が此方を見ていた。
「ふ、二人って、そういう関係…だったの…?」
あ、これ、相当まずいやつだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。別に俺達はそんなんじゃ」
「う、ううん!分かってるから!私達も応援するから!何かと大変だと思うけど、頑張ってね!」
女子の方はとんでもない方向へ勘違いをしている。
彼女はスマホを取り出し、此方の方へ向け…(カシャッ)そしてスマホに目を落とし素早く操作を…。ってあああああああ!ヤバイ!このままじゃ拡散される!つーか男の方何とか言えや!何ぼーっとしてんだ!
さっきから成瀬に反応がないな。
ふと成瀬の方を見やると、口に手を当て、肩を震わせていた。
って笑ってんじゃねーよ!この状況でよく笑っていられんな!
と、とりあえず、彼女の行動を阻止しなければ。ってもうスマホ鞄にしまってるー!終わった…俺…死んだわ…
「そ、それじゃあ二人とも、末長くお幸せに!い、行こ。さとしくん」
「あ、ああ」
そう言って、彼女は足早に去って行った。男はまだ残っている。
「白峰…お前…意外とやり手…なんだな…」
そう言葉を残し、彼は去って行った。
俺はその背中を、眺めるしか出来なかった。
「あんたもう…ほんとに…くくっ…最高…」
いや成瀬さん?あなたも巻き込まれてますけど、そこんとこ分かってます?
――――――――――――――――――
翌日朝、俺はいつも通りの早い時間に学校に着く。この時間にも慣れてしまった。
教室の扉を開けると、そこにはいつも通り鈴井がいた。
「おはよう、鈴井」
「おはよう、女たらしでスケコマシの最低最悪なドM変態野郎の白峰くん」
なんか物凄い罵倒を受けた。
「えっと…その挨拶は…?」
「あらごめんなさい。屑を入れ忘れていたわ」
どうやらあれでもまだ足りなかったらしい。
「いや、そういう事じゃなくてだな」
「だって事実でしょう?」
相変わらず此方を見ずに平然と言う。
「そんな事実はないんだが」
「あら、屑峰くんはまだとぼけるのかしら?」
なんか名前が変えられていた。
とぼけるも何も、昨日の事は鈴井には回って来てないだろうし、他に理由は…
「全く、こんな事をやっといて、平然としていられるなんて…。あなたの前世はどうやら性犯罪者だったようね」
そう言って、スマホの画面を此方に向けてる。ん?これは…昨日あの女子に撮られた写真じゃないか!鈴井のところには回ってないと思っていたが…
というか良く見ると、鈴井から黒いオーラ的な何かが見える気がする。相当ご立腹のご様子だ…とりあえず、謝っとこう…
「えっと…この度は鈴井様に大変不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
「土下座」
「…はい?」
「土下座しなさい。その程度の謝罪で、私が満足すると思っているのかしら?」
マジかよ…というか土下座の強要は犯罪だぞ。
「えっと、土下座を強要するというのはだな…」
「別に強要なんてしてないわ。あなたが謝りたいのなら、誠意を持って土下座をした方がいいと言ってるだけよ」
すげぇ上手く逃げやがった。クソ…土下座するしかないのか。
幸い、俺は以前成瀬に土下座をした経験があるからな。これくらい朝飯前だ。言ってて虚しくなってきた…
俺は膝を折り、頭と両手を床に着く。
「この度は鈴井様に大変不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。私に出来る事があれば何でもしますので、どうかお許し下さい」
「ふふっ、今何でもって言ったわよね?」
あ、やべ、失言した。
「い、いえ、言葉の綾と言うものでして…」
俺が顔を上げようとすると、背中に重みが掛かる。
「誰が顔を上げていいと言ったのかしら」
あ、これ、踏まれてるやつだ。すげぇ屈辱的なやつだ。硬い感触はないので、上履きで踏んでは無いようだ。どちらにせよ屈辱だが…
「さあて、何して貰おうかしらね」
「お、お手柔らかにお願いします」
俺は、健が来るまで、踏まれた体制のままだった。
健は入ってくるなり、「なんだなんだ?SMプレイか?」と、興奮気味に言ってきた。俺はMではないから全く喜べないのだがな…
――――――――――――――――――
「ねぇ晃、これちょっとどういうこと?」
俺が机に突っ伏して寝てると、上から凄く冷たい声が聞こえてきた。
声の主は仁美だった。お前、そんな声も出せるんだな。
仁美は俺にスマホの画面を見せてくる。案の定、昨日の写真だった。
「これには深い訳があってだな…」
「ふーん、それは私より大事な事なの?」
怖っ!なんでさっきからそんな冷たい声なんだよ。というか仁美の瞳(激ウマギャグ)に光が灯って無い気がする。笑顔なのに怖過ぎる。
「お前の手伝いの方が大事だったって。ずっとアドバイスしてやったろ?」
「水族館で仲良さそうに手を繋いでたよね?」
あ、すっかり忘れてた。完全に地雷踏んだわ。
「まあそうだよね、恵ちゃん、私より全然可愛いからね。私なんかいらないよね」
「い、いやそんな事ないってお前も大切な友達として…」
「もういい!晃なんて知らない!」
そう言って立ち去ってしまった。…弁明する余地なかったな…。今度なんか奢って機嫌とろう…
――――――――――――――――――
今日という日を境に、俺の学校生活は劇的に変わるだろう。何故かって?俺への陰口が殆どなくなったからだ。その代わり、
『おい、あいつだ。白峰だ。あの男嫌いの成瀬 恵を落としたっていう』
『一体どんな手を使ったんだ?魔法か?催眠術か?』
『どんな女でも確実に落とせる技があるなら、是非、ご教授願いたいものだ』
とか、
「ねえねえ白峰くん!成瀬さんの好きなものとかってわかる!?」
「白峰くんは成瀬さんのどんなところが好きになったの!?」
「成瀬さんってどんな感じの人なの?友達になれるかな?」
とか、とにかく色々言われたり聞かれたりした。最近の政治家でもそこまでの手のひらクルー見ないぞ…。というか前より状況酷くなってね?
俺は何か言われる度、懇切丁寧に、事情を説明した。半分くらいの人が信じてくれた。マジかよ半分だけかよ…
俺のせいで、仁美と勝樹が付き合い始めた事も広まったが、俺と成瀬の事が広まり過ぎていて、大した話題にはならなかった。なんでやねん…
肝心の成瀬はというと、やはりいつもの調子に戻っていた。少しだけ、俺との会話が増えた気がする。気がするだけかもしれん。
ただこれからは、陰口が無くなった分少しだけ、居心地がよくなるかもな。そう考えると、悪い変化じゃなかったのだろう。
――――――――――――――――――
放課後、俺は図書室に向かっている。今日は金曜日、荒川と帰る日だ。荒川にも何かと聞かれるんだろうな…
せめて、図書室では安寧に過ごそう。俺は図書室のドアを開ける。
「あ、白峰くん。こんにちは」
「こんにちは、天使さん」
挨拶を交わし、俺はいつもの席に向かう。椅子に座ったところで、天使さんも此方に向かってくる。そして、俺の正面に座る。なにこれすき(語彙消滅)
「白峰くん、すっかり人気者ですね」
「え?まさか天使さんもそれを…」
「はい。お話を伺った程度ですけどね」
マジかよ…他学年まで話が広がってんのかよ…これもう俺の安息地ないんじゃね?
「でも納得しちゃいました」
「え?納得?」
何を納得されたのだろう。なんも分からん。
「白峰くん、優しいですから」
「優しい?」
天使さんに何かした覚えがない。
「はい。お話していて、とても、暖かく感じます」
それはあなたと話してる俺の方がずっと感じてますよ。
「それに、こうやって図書室に来てくれています」
それはあなたを見に来てるからですよ。
「だから、白峰くんの事が…好きな人がいるって事に、納得しちゃったんですよね」
好きという単語が恥ずかしいのか、俯いて言う。写真に収めて額に飾りたいほど可愛い。
しかし、心苦しいが、間違いは訂正しておかなければならない。
「天使さん、すいませんがその話は間違っていまして」
「…………え?」
「実はですね…」
俺は事情を説明する。話を終えると、天使さんは真っ赤になっていた。
「す、すいません!間違いだって知らず変な事を言ってしまって!迷惑でしたよね…」
慌てて謝りだしたと思えば、急に落ち込んでしまった。何この可愛い生き物。
「そんな事ありませんよ。天使さんにそう思っていただけてたなんて嬉しいです」
そう言うと、天使さんは真っ赤になったまま俯いてしまった。今がシャッターチャンスなのでは!?
「…ご、ごめんなさい!」
そう言って、受付の方に戻ってしまった。シャッターチャンス逃した…
帰り際、天使さんの様子を伺ってみたが、いつもの調子に戻っていた。写真…撮っとけば良かった…
――――――――――――――――――
図書室を出た後、俺は校門で荒川を待っていた。
待ってる間、女子には
『成瀬さん待ち?ヒュー!熱いね〜』
とか言われ、男子には
『俺には好きな奴がいるんだ。だから頼む!お前が成瀬に使った技を教えてくれ!』
とか言われた。成瀬はもう帰ったし、技とかあるわけねーだろ…
そして今、俺のところに近づく二つの不吉な影が…
「あきらーー!お前、なんて事してんだクォラーー!」
やって来たのは勝樹と仁美のだった。相変わらず仁美はそっぽを向いている。やっぱり怒ってんな〜。
「俺が仁美に頑張ってアピってる間、お前はさらっと成瀬を攻略か!?憎たらしい奴め!」
「いやだから違うっての」
なんでこう、皆人の話を聞かないんですかね。
「まあ晃達の邪魔しちゃ悪いし、俺達は帰りますかね」
そう言って勝樹は帰って行った。
「……ふんっ!」
仁美はあからさまに顔を逸らし俺の横を通り過ぎる。奢るだけじゃ済まないかもな…
数分後、ようやく荒川がきた。
「お待たせ。それじゃあ行こっか」
「ああ、そうだな。こんなところ、さっさとおさらばしたい」
俺達は並んで帰り道を歩く。
「こんなとこ見られたら、二股とか言われちゃうね」
「股に掛けるどころか、彼女出来た事すら無いんだがな」
名誉毀損どころの話じゃない。俺に名誉があるかは置いといて。
「じゃあ私が彼女になってあげようか?」
荒川は冗談っぽく言う。
「やめてくれ、そう言った発言がどれだけの男を死地に追いやったと思っている」
意味深な発言は男子にはNG。
俺ら非リアには、パーソナルスペースと言うものがあってだな。それに踏み入ると言う事は、それはつまり相手に余計な感(ry
「…別…ほ……にな………いいけ…ね」
俺が頭の中で猛抗議していると、荒川が何やらボソボソ言っていた。お前そのしゃべり方好きだな。
「ところでさ、めぐと一日一緒にいて、どうだった?」
どうやら昨日の事について、聞いてきているようだ。
「別に、特に何もなかったとしか…」
間接なんたらとかは知らん。もう忘れた。
「え〜、それだけじゃないでしょ〜?もっとこう、めぐの様子とか、こう、あるでしょ?」
成瀬の様子か…どうだったかな…
「まあ…可愛かったな…あとめっちゃ笑ってた」
ほんと、今までの成瀬の印象と全然違くて、別人説を提唱したまである。
「ふふっ、白峰くんもめぐの可愛さ、分かってきたみたいだね!」
荒川がこうやって言うって事は、別人ではないのか。…それはそれでがっかりだ…
「…私も…負けてらんないな」
荒川がふと零した呟きの意味を、俺は理解出来なかった。
第一章、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
第一章は、晃を中心とした周りの環境の変化を中心に書いていました。途中から、成瀬ばかりになってしまったのは、お察し下さい。
第一章が終わり、キリがいいので、ここで一つ思い出話を。少々長くなりますので、興味の無い方は、読み飛ばしていただいても大丈夫です。
私自身、なろうへの投稿自体は本当に初めてで、まさか初投稿がここまで多くの方々に見てもらえるとは思っておらず、今でも、嬉しさ半分、驚き半分といったところです。
投稿初日から一週間、ブクマ数が2と、まあ初投稿にしては上出来かなと、こんな小説でも見てくださる方がいるんだ、思っていたのですが、翌週、毎日投稿を始めてから、物凄い勢いで数字が伸び始めて、うえぇ!?となったのは、いい思い出です。
ここまでこれたのも、読んでくださる皆様がいたからこそです。本当にありがとうございす。
思いつきで書いているので、少々支離滅裂な文になってしまい、申し訳ありません。
第二章では、投稿頻度が少々落ちるかもですが、皆様がよりお楽しみいただけるような作品を書いていきたいと思っておりますので、引き続きお付き合いよろしくお願い致します。




