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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第一章 どうやら俺は、トラブルには好かれるらしい
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最近の子はあまり気にしないんですかね…

成瀬ばっかで申し訳ないです…他キャラ登場はまだ先です…もう少しだけお待ちください。

「あんたってさ、仁美の事、実際どう思ってんの?」



成瀬は、そう俺に聞いてきた。俺も成瀬に勝樹の事を聞いたし、当然といえば当然の質問か。


仁美の事を何とも思ってない、という事は簡単だ。しかし、成瀬は俺の質問に対し、正直に答えてくれた。ならば嘘をつくのはご法度だ。


俺は返答に迷っていた。答えは出ているのに、何故か言葉が出なかった。

その様子を見兼ねた成瀬が俺に声を掛ける。


「別に、答えたくなかったら答えなくていい。ちょっと気になっていただけだし」


その言葉は、俺の心を随分楽にしてくれた。ここで彼女の優しさに甘え、逃げてしまうのもいいとすら思わせてくれる、そういった言葉だ。


だが、彼女の優しさに甘えることが、本当に正しい選択なのだろうか。今俺が出来る最良の行動は何だろうか。いや、答えは出ているか…


「好きだった、かな…」


その言葉は、思っていたよりずっと自然に出ていた。

俺は以前、仁美の事が好きだった。それは疑い様のない事実だろう。だが、俺はその事を、当時の事を、今まで考えた事が無かった。いや、考えようとしなかったのだろう。あの時の自分と向き合いたく無かったのかもしれない。


「そ…」


成瀬はそれ以上は聞いてこなかった。

成瀬は俺の質問にとても丁寧に答えてくれた。なのに俺は、この様な陳腐な回答しか出来ず、とても申し訳ない気持ちになる。


「この話はおしまい。これからご飯食べるんだから、こんな空気じゃ美味しくなくなるでしょ。ただでさえあんたと食べなきゃいけないのに」

「健は俺と食うと飯が美味いって言ってくれるぞ。あいつが変人だってのか?」

実際変人だが。


「ふふっ、冗談」


そう言って、成瀬は楽しそうに笑う。俺の事を気遣って、冗談を言ってくれたのだろう。やはり成瀬は優しい。


数分後、料理が運ばれて来る。

俺はスプーン、成瀬はフォークを取り、お互い食べ始める。

うん、美味しい!やっぱりここの料理は最高やな!

成瀬も笑みを浮かべて美味しそうに食べている。満足いただけてなによりだ。


半分くらい食べたところで、成瀬の食が止まる。もう食べないのか?と思って、成瀬の方を見ると、俺のドリアを覗き込んでいた。


「それ美味しそう…ねぇ、少しくれない?」


なるほど、これを食べたいのか。幸い、スプーンはもう一セットあるし、逆から食べれば問題無いだろう。


「まあ、いいけど」

「あ、あと、私だけ貰うのもあれだし、私のもあげる」



「………………え?」



「何その顔、すっごい変」

そう言って成瀬は笑う。


いやまてまて!ドリアば逆から食べればいい!でもスパゲティはそういう処置出来ないんだぞ!少なくとも俺はお前と…その…間接なんたらを…しなきゃいけないんだぞ!


「あんたさ、あたしと間接キスとか考えてる?」


俺が戸惑ってるのが伝わったのか、成瀬が俺に向かってそう言ってくる。


「いやだってよ…そういう事になっちまうだろ…」


俺がそう言うと、これだから童貞は…と言わんばかりのため息をつく。なんかムカつくな。


「別にお互いのの口に入った物を直接口に入れるわけじゃないんだしさ。いちいちそんな事気にしてたらきりないでしょ」


そんな物なのだろうか…俺はそんなに割り切れんぞ…というか、表現が生々し過ぎる…

向こうが気にしていないという態度なら、男の俺がうじうじ言うのも情けないので、仕方なく交換に応じる。


成瀬は新しいスプーンを取り、食べ始める。…なぜお前は俺が手を付けた方から食べ始める…。まあ成瀬なりの気にしてないというアピールなのしれないな。俺は変わらず気にするんだが。


俺も、新しいフォークにパスタを巻きつけて食べる。うん。緊張しすぎて味わからん。

成瀬は笑みを浮かべ、二口、三口とどんどん食べる。…ちょっと食べすぎじゃない?

ここで俺も食べないと、成瀬に気を遣わせてしまうかもしれない。ああもう!どうにでもなれ!

俺も二口、三口と食べる。…これ美味しいな。


調子に乗って結構食べてしまった。初めの四分の一くらいしか残ってない。ドリアの方も見ると、同じくらいしか残ってなかった。


「ん、ありがと。これ、美味しかった」

「お、おう。こっちも美味かった」


そう言って、お互いの物をまた交換する。

はぁ…こんな疲れる食事は初めてだ…



俺達は食事を終え、店を出る。


「次ってなんだっけ?」

「次はイルカショーだな。一時半のやつだ」


時刻は一時十分。今から行ってちょうどいいくらいだろう。


「二人は大丈夫なの?方向音痴なんでしょ」

「ん?ああ、もう着いたって連絡来た」


迷った時のために早めに移動したのだろう。

俺達もイルカショーの会場に向かう。

会場に着き、俺達は後ろの方の席に座る。二人は左から二列目、前から三列目のベンチに座っていた。


「何であの二人はあそこに?仁美ならもっと真ん中の方に行きたがるはずだけど…」

その疑問は最もだろう。


「多分勝樹があそこにしようって言ったんじゃないか?」

「何でわかんの?」

「俺昨日、勝樹に電話で話したんだけど、イルカショー見るならあそこがオススメって言っといた」

「ふーん、でも何で?」

「あそこが見やすいからな」

「嘘。あんたがそんな理由でオススメするわけない。それにあそこ絶対見辛いし」


成瀬の奴、以外と鋭いな。


「バレたか。確かにその通りだ」

「で、あそこがオススメな理由は?」

「あそこが一番水がかかる場所だからな」


俺の度重なる研究の末、あそこに一番水がかかるという事を発見した。九月だからまだ暑いし、すぐに乾くだろう。


「あんた…ほんと…ふふっ…最っ…底…」


成瀬は肩を震わせながらそう言う。笑ってるお前も同類だと思うぞ。


「…っふう。ところでさ、あんた、なんでそんなに詳しいの?昨日もなんかやたらパーク内について色々知ってたし、今日だって朝、茶店の場所知ってたし」


ああ…やっぱり気付かれたか…しょうがない、正直に話すか。


「…夏休み中、健が福引でここのペアチケット当てたんだよ…しかも三回も…」

あいつ、無駄にクジ運良過ぎだろ…


「え?まさか、男二人で三回もここに来たの?」


笑いそうになりながら成瀬が言う。


「言っとくがすげー楽しかったからな!それにパーク内の配置全部覚えたから道聞かれても速攻で対応出来るからな!」


ほんと、めちゃくちゃどうでもいい知識と共に、俺に虚しさを与えてくれたよ、健は。


「あはははは!ほんと!あんたって最高!あはははははは!」


声を上げて笑う成瀬。前の二人に気付かれないかしらと、視線をやるが、お喋りに夢中で聞こえてない様だ。

ところで成瀬さん?少し笑すぎじゃないですかね。まあいいけどね…


成瀬はイルカショーが始まるまでずっと笑っていた。始まってからは落ち着いていたが、二人がずぶ濡れになったのを見て、また笑い出していた。忙しい奴だ。



イルカショーが終わり、二人に見つからない様に早めに会場を出る。


「あー面白かった、お腹痛い」

「笑い過ぎだ。周りから白い目で見られてたぞ」

「あんた達が笑わせるのが悪いんでしょ」

「俺は別に笑わせるつもりは無かったんだがな…」


最近、笑われるのが多い気がする。嬉しいやら悲しいやら。…嬉しくはないな。


さて、そろそろ俺達の仕事も仕上げだ。

俺は仁美に、

『お化け屋敷では、怖かって思いっきり抱きつくのがいいんじゃないか?あとジェットコースターはほどほどに。二人乗りのアトラクションとかもオススメだ。あとは頑張れ』

と送る。

するとすぐに、

『うん!ありがとー!すっごい助かったよ!』

という文と共に、おっさんが頭を下げてるスタンプが送られてきた。うん、もう何も言わない。


それを見て、俺は成瀬に声を掛ける。


「お疲れさん。今日の手伝いはこれで終わりだ」

「え?まだアトラクションとか残ってるでしょ」

「確かに残っちゃいるが、並んでる時近くにいるとバレるかもしれんし、はぐれる可能性も高いだろ。手伝うのは難しいってことだ」


無理にやってバレたら面倒だしな。ここらが引き際だろう。


「ふーん、じゃあここからはあたし達は自由って訳?」

「ん、まあ、そういうことだな」


成瀬が意味深に訪ねてくる。一体何を企んでいる。


「じゃあさ、少し私と、遊ばない?」



「………………え?」

一応念の為言っておきますが、晃と成瀬は付き合っている訳ではありません。なので、今後、普通に他ヒロインの逆転の可能性も十分あります。ご安心ください。

感想をくださった方々、本当にありがとうございます。大変励みになります。また誤字報告ありがとうございます。これからも、誤字や間違った文法などあるかもですが、なるべく減らしていこうと思います。

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