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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第一章 どうやら俺は、トラブルには好かれるらしい
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成瀬は、俺が思っているより、ずっと可愛いやつかもしれない

ずっと成瀬のターン

鈴井ファンの皆様。本当に申し訳ありません。もうしばらく、成瀬を書かせてください…

「成瀬、あの二人、もう入口に着いたみたいだぞ」


茶店で待つこと数十分、仁美から到着の連絡が来た。二人のツーショットの写真と一緒に…まあいいんだけどね…


「そ。じゃああたしたちも向かった方がいい?」

「そうだな、早めにあいつらを発見しておきたいしな。」


俺は伝票をとり、二人分の代金を支払う。


「あ…」


店を出て、早速向かおうとすると、成瀬に呼び止められる。


「ねぇ、さっきのお金、忘れないうちに返しておきたいんだけど」


俺が勝手に払ったんだから、大人しく奢られとけばいいのに。


「いいよ別に。健なんて普通に俺に奢らせてくるし」


あいつに奢ってばっかであいつから奢られた記憶がないな。まあ俺も福引のおこぼれとか貰ってるし人のこと言えないか。


「あんたに奢られるいわれないし。なんか後味悪いし」


律儀な奴だ。成瀬って絶対いいお嫁さんになるな。家事ができれば。決めつけは良くないな。もしかしたら家庭的かもしれんし。


「じゃあ今度何か奢ってくれ。それで、手打ちってことで」


一度奢ると決めたのに、金もらうのはカッコ悪いからな。

すると成瀬は顔を背けて俺の前に出る。


「そ。あんたがそう言うならそれでいい」


成瀬は顔を背けながら言う。もしかして照れてんのか?可愛いところもあるじゃん。


成瀬は、オーシャンパークに着くまで俺の一歩前を歩いていた。




数分後、俺達も入口に着く。平日だったにも関わらず多くの人が来ていた。これなら二人を尾行していても、人ごみで隠れられそうだ。


さてと、二人はどこかな〜。いたわ。勝樹デカイからすぐ分かったわ。マジで何を食ったら俺より二十センチ近くも高くなるんだろう。ほんと羨ましいわ。


成瀬はまだ見つかっていないようで、辺りを見回している。


「あそこだ、あそこの一際デカイ奴」

「あれね、ありがと」


俺たちは、入場待ちの行列の最後尾に並ぶ。

数分後、開園時間となり入園が始まる。人が多いので、見失うかもと思ったが。あのデカブツのおかげで大丈夫だった。なんかムカつく。


二人が最初に行くのは水族館だ。成瀬曰く、魚という共通の話題を作ることで、昼食の時の会話も盛り上がるだろうとのことだ。


二人は仲良く園内マップを見ていた。恐らく水族館の場所を確認しているのだろう。…ここから水族館まで複雑な道はないはずだが…遊びに行った時、やたら俺のちょい後ろ歩いてたが、あいつら方向音痴だったのか…


このままマップとにらめっこしてるだけじゃ、埒が明かないな。道を教えてやるか。ついでにアドバイスも言ってやろう。


「成瀬、道教えるついでに、アドバイス送ろうと思うんだが、いいアイディアあるか?」


成瀬は少し考えた後、あっ!と、短く言った。何か思いついたみたいだ。


「手を引いて行くのがいいんじゃない?あんたにやってたみたいなやつ」

「お、それいいアイディアだな。良くそんな急に思いつくな」

「別に、たまたまだし…」


成瀬は、そう言って照れ臭そうに顔を背ける。褒められ慣れていないんだろうか。


俺は仁美に、


『そこを真っ直ぐ行って突き当たり左、また真っ直ぐ行って突き当たり右、後は真っ直ぐ行けば水族館。勝樹の手を引いて連れて行け』


と送る。

数秒後、おっさんが親指を立ててるスタンプが送られて来る。可愛くねぇ…というかいつの間に見たんだ?全くわからんかったぞ…マジでスパイとしてJKを雇うことを推進したい。


すると早速、仁美がアクションを起こす。勝樹と少し話した後、手を掴んで引っ張って行った。行動力と実行力が高すぎるんだが…


おっと、冷静に解説してる場合じゃないな。あの二人を追いかけなくては。


「成瀬、走れるか?」


成瀬に尋ねると、成瀬は俺の方を見た後、ため息をついた後、小さく頷く。そんなに走るのが嫌なのか…


二人は無事水族館に着くことができた。これ、俺が居なかったらずっとあそこなんて説もあったかもな。いや流石にないか。

二人は意気揚々と入って行く。俺達もそれに続き入る。


中は完全別世界だった。多種多様な生き物が、それぞれの水槽を泳ぎ回り、それが幻想的な雰囲気を醸し出していた。相変わらず凄いな…


二人の様子を見ると、色々な水槽を見ては、仲良く話している。心なしかさっきよりも二人の距離が近い気がする。


ちなみに成瀬はというと、


「あ、コブダイだ、ふふっ、ほんとブサイク。あ、このカワハギ、少しあんたに似てんじゃない?」


かなり楽しんでいた。いやまあ、目的忘れてなきゃいいんだけどね…


「猿は言われたことあるが魚類は初めてだ」


俺はそこまで目が離れてもおちょぼ口でもない。


「ふふっ、冗談」


そう言って無邪気な笑みを浮かべる。超可愛い。

というか成瀬の奴、かなり上機嫌だな。あまり動物とか好きそうな感じではないんだが、意外だ。


「ほら、何ぼーっとしてんの、二人とも行っちゃうよ」


成瀬に言われて俺は、はっとする。いかんいかん、成瀬に見惚れてる場合じゃないな。俺が目的を見失ってどうする。


「悪い悪い、ちょっとあそこのヒラメになりきってた」

「何それ、変なの。ていうかあれカレイだし」


詳し過ぎんだろ。魚ガチ勢か?


辺りを見回すと、二人は大分遠くの方まで行ってしまっていた。危うく見失うところだった。


俺は慌てて二人を追いかける。すると、左手に少し引っ張られるような感覚を覚える。見ると成瀬が手を掴んでいた。


「はぐれるとめんどくさいし、作戦どころじゃなくなるでしょ」

「あ、ああ、そうだな」


平然と言う成瀬に対し、俺はかなり緊張していた。女子と手を繋ぐ機会なんて滅多にあるもんじゃないし、しょうがないよね!手汗とかかいてないかしら…


成瀬の手を引き、改めて二人を追いかける。

ん?まてよ?つかえるなこれ。


俺はスマホを取り出し仁美に、


『はぐれちゃいけないからとか言って、手を繋げ』


と送る。

直ぐに、おっさんが両手で丸を作ってるスタンプが送られて来た。だから可愛くねぇっての。


成瀬この事を伝えるために、俺の手を掴んだのだろう。ほんと、成瀬のおかげで大助かりだ。


「ありがとな」


俺は成瀬にお礼をいう。その言葉の意味が伝わったのだろうか、成瀬ははずかしそうに顔を逸らす。


「別に…そんなんじゃないし…」


成瀬らしい照れ隠しだ。今日はほんと可愛いなこいつ。いつもこんな感じならいいのに。


二人を見ると、いつの間にか手を繋いでいた。相変わらず行動が早い…


突然、左手が引かれる。


「ちょっとこっち来て」

成瀬はそう言い、俺を引っ張る。そして、そばにあった水槽の影に隠れる。


「どうしたんだ、突然」


俺は状況が全く理解出来なかった。


「あそこ見える?」


成瀬はとある場所を指差す。そこには男女のカップルらしき二人がいた。とりま爆発しろ。


「あれが、どうしたんだ?」

「多分同じ学年の人。見られたら説明面倒でしょ」

「なるほど、そういう事か」


最悪バレても説明は出来るが、見られなければ妙な確執を残さずに済むしな。


というか、さっきから顔が近い。それに肩が密着してるから色々とヤバイ。心音聞こえてないよね?


俺達は例の二人が見えなったところで、水槽の影から出る。見つからずに済んだみたいだ。


しかし、仁美たちからしばらく目を離していたので、案の定見失ってしまった。


「さて、これからどうするか」

「とりあえず、周りながら探すしかないんじゃない?」


魚見たいのね…まあ見失っちゃったしいいんだけどね…


「そうだな、どうせアドバイスとかも出来ないしな」


せっかくだし、少しくらいは俺も水族館を楽しもう。



「俺さ、タカアシガニ見てると、あの芸人を思い出すんだよね」

「やめて…ほんとに…ふふっ…そうとしか…見えなくなって来た…」



「ベルーガって頭のところ脂肪で凄く柔らかいんだけど、あんたの頭はどう?」

「柔らかかったらまずいだろ…」



「ネコザメってどこにネコ要素があるのかわからないのよね」

「手触りが猫の舌と似てるからじゃね?」

「それただの鮫肌だし」



「マンボウって水槽の壁にぶつかっただけで死ぬらしいぞ」

「それを聞いて女の子が喜ぶと思う?」

「女の子には言わないな」

「ほんと、あんたの中であたしはどうなってるの…」



「クラゲって幻想的で綺麗」

「それはクラゲを綺麗って言ってる私綺麗アピールか?」

「…なんかいった…?」

「く、クラゲって食えるらしいぜ」

「話変えるの下手過ぎ。とりあえず後で一発殴らせて」



「イワシの大群は可愛くないのか?」

「流石にちょっと気持ち悪い…」

「クラゲもたいして変わらんだろ…」



あれ?思ってたよりずっと楽しい。というか途中、完全に当初の目的忘れてたわ。

気がつくと二時間以上経っていた。俺らなんのためにいるんだっけ?


水族館も終盤に差し掛かってきたところで、ようやく二人を発見した。

すると、たまたま此方に視線を向けた仁美と目が合う。仁美は俺達を見るなり、とても驚いた顔をして、すぐに目を逸らす。


「仁美の奴、なんであんなに驚いてたんだ?」

「多分これでしょ」


成瀬はそう言うと、左手に振動が来る。そういや俺らずっと手を繋ぎっぱなしだったな。自然過ぎてすっかり忘れてたわ。

再び意識し始めると、また恥ずかしくなってきた。でも離すと不自然だし…手汗かかないことを祈ろう。


それからは、特に何も起こらなかった。二人は普通に水族館を楽しんでいたし、俺達も二人の様子を見つつ、楽しんだ。やっぱり俺達いらないよな…


水族館を一通り見終え、時刻は十一時四十分。少し早いが昼食にするのがいいだろう。

仁美に、


『昼食にしよう。レストランの場所はわかるよな?』

と送る。すぐにおっさんが親指を立ててるスタンプが送られて来る。好きだなそれ…


二人がレストランに入って行くのを見届けた後、俺達は別のレストランに向かう。同じ店だと見つかる可能性が高いからな。


移動しようとしたところで、俺は成瀬とまだ手を繋いだままだということを思い出す。なんで忘れてんだよ俺…


「えっと、成瀬、手…」

「あ…」


俺が言うと成瀬も気付き、お互いさっと手を離す。なんだこれ、超恥ずかしい。

俺達はレストランに着くまで言葉を交わすことはなかった。




レストランで二人用のテーブル席に向かい合って座る。

メニューを取り、お互いオーダーを決める。俺はシーフードドリア、成瀬はボンゴレパスタを注文した。今は料理が運ばれて来るのを待っている。


「はぁ…あたし達、何も役に立ってない気がする」


唐突に成瀬が言う。


「ま、まあ、本人達が楽しんでるしいいじゃないか」

「それは…そうだけど…」


俺達が必要かどうかは置いといて、二人のデートは順調だろう。


だが、俺はずっと、気がかりだった事があった。


「なあ成瀬、お前、本当になんで手伝ってくれてんだ?お前、勝樹の事、好きだっただろ?」


以前成瀬は、俺に余計な事はするなと言ってきた。にも関わらず、今はその時と逆の行動をしている。俺はそれがずっと気になっていた。


「まあ確かに少し前はそうだったかもね。でもさ。二人ってほんとお似合いじゃん?それに好き同士なんでしょ?そう考えると冷めちゃってさ…あ、あと、手伝おうと思ったのはほんとに気まぐれ。さっさとくっつけとか思ったのかもね」


なるほど。好きってのは理屈じゃ無いってのは聞いた事があるが、まさにその典型みたいなもんか。


「それとさ、私ももう一つ、聞きたい事があるんだけど」

「ん?何だ?」


今日はやけに成瀬から質問が多いな。ちょっと前までは、俺に一切興味ないって感じだったのに。

成瀬は少し溜めたあと、口を開く。


「あんたってさ、仁美の事、実際どう思ってんの?」

第一章も佳境に差し掛かってまいりました。成瀬を書いているうちに、だんだん好きになってきて、今では一番好きなキャラになりつつあります。一応、結末自体は大体決まっているので、私の気まぐれで物語が変わる事はありませんのでご安心下さい。

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